prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ドリームガールズ」

2007年03月18日 | 映画
ショー・ビジネスの内幕もの、という興味でまず引き込んでいって、ルックスはいいが平凡な歌手(だからミキシングがその時々に受けるように仕立てられる)ビヨンセと、歌唱力があるがルックスに欠けるジェニファー・ハドソンとの葛藤に、「才能」と「その時のニーズ」とが一致する難しさという普遍的なテーマが現れてくるあたり、オリジナルの舞台の演出家マイケル・ベネットの「コーラスライン」とも共通しているみたい。
割りを食う役のジェニファー・ハドソンがアカデミー賞で「助演」女優賞というのも、皮肉な話。

タレントのパフォーマンスやそれをショー・アップする手際がいいのはアメリカ産ではむしろ当然で、それ以上に普通の人間社会でも通用するものを持ったドラマとしてしっかりできている。

リハーサルかと思わせてすっとワンカットで本番のステージにつながったりして、ステージの上と裏を往復する手際は編集・音楽処理ともどもお見事。エンド・タイトルで美術や衣装デザインなどの名前のバックに準備用のスケッチが使われているのも楽屋裏を見せる趣向のうち。
スタッフワークが素晴らしいので、内幕を見せる効果もあった。

ミュージカル、とはいっても歌手がステージ他で歌うわけだからリアリズムからあまり離れないが、中盤から普通のミュージカルと同じように普通の生活をしている人間がいきなり歌いだす、という不自然さ(と、いうか約束事)が入ってくるのにちょっと違和感。ジェニファーが普段の生活で歌いだすのは役柄からしてそれほど不自然ではないのだが、他の人物まで歌いだすのだから。

エディ・マーフィの役のモデルは誰だろうと考えるのもお楽しみだが、明らかにジャクソン・ファイブをモデルにした五人組が出てきて、一番年下の子供が歌っているのは今見ると異様。今では白くなったヒトですからね。
(☆☆☆★★★)