極彩色の画面作りが話題になっているが、意地の悪い見方をするとリアルな再現ができるだけの予算がないので美術上のアイデアでうまくカバーした、という感じもする。よく見ると壁や襖の質感が必ずしも十分ではない。日活時代の木村威夫×鈴木清順の仕事に近いか。
アイデア豊かではあるけれど、門の上の金魚鉢などもっと演出的に生かせなかったか。“鉢を出たら生きていけない金魚”=花魁が鉢を出て行くラストと門の上の金魚を結びつけないで、部屋の中の別の金魚で済ませてしまっている演出は水っぽい。
しばしば夜の月を見上げる構図が現れるが、たしか満月はなく新月に近い細い月だった気がする。月といえば女の象徴みたいなものだが、それがいつもかなりの程度欠けている、という表現だろう。
出てくる男たちが今風に淡白。
椎名林檎が音楽監督をつとめているが必ずしも新しがらないでタンゴほかモダニズム風。良くも悪くも画面と喧嘩はしていない。
色事の描写にえっちな感じがしない。裸を見せるのは風呂ばかりだし、セックスシーンのバックヌードだと、みんな身体が華奢な割に鬘や髪飾りがおそろしく大仰なのでお神輿をかぶってるみたい。
題名にもなっている桜の花の撮り方がちょっと物足りず。桜はえてして雲みたいに写ってしまいボリュームを出しにくいのはわかるが、作り物の方がそれらしかったりする。
コレ一年前に撮った桜かな、と思ったりした。CGとは思えず。
(☆☆☆)