prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ノーカントリー」

2008年03月19日 | 映画
圧搾空気で牛の頭蓋骨にボルトを打ち込む道具を人間に使う、という発想は、「悪魔のいけにえ」のレザーフェイスが牛殺し用のハンマーで人をぶっ叩いて殺していたのが「進歩」したものみたい。
牛を殺す道具を人間に使う、という野蛮さと乾いたユーモア。

犬を撃つのをはっきり映像として描いているのは動物愛護全盛の今日び珍しい。川から上がって暴発しないよう拳銃をスライドさせて水をはじき出してから撃つ、という手順が細かい。
乾いた風景のロングショットのスタイリッシュな空間感覚、光の使い方、編集、音響の映画的な総合力が見もの。

ドアノブを圧搾空気で吹っ飛ばした後の丸くあいた穴から外の光が暗い室内にさしている映像は、コーエン兄弟のデビュー作「ブラッドシンプル」のクライマックスでも似たような映像が見られた。一種の原風景というか。

ハピエル・バルデムの殺し屋の、人に生きるか死ぬか決めさせているようで自分が決める、一種文学的なキャラクター造形。
(☆☆☆★★★)


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