大ヒット作「サウンド・オブ・ミュージック」のジュリー・アンドリュース主演、ロバート・ワイズ監督のコンビを復活させての二匹目のドジョウを狙ったであろう映画なのだが、「サウンド…」が製作費800万ドルで初公開時の北米興収が7600万ドルなのに対して、これは製作費2000万ドルで興収400万ドルに満たないという大コケ。公開当時の評判もはなはだ芳しくないもので、期待しないで見たら、やはりあまり面白くなかった。
実在のミュージカル・スター、ガートルード・ローレンスの伝記映画なわけだが、当人を知っている世代の人には柳川の芸者みたいな粋な芸人のはすが「まあ、どうでしょう。女学校の先生みたいなガートルード・ローレンスですねえ」(淀川長治)ということになるし、知らない人間には中途半端にワガママな芸人出世物語にしか見えない。
出世する前のミュージックホールで客と喧嘩しながら歌い踊っているあたりは、家庭教師役に縛られていたジュリー・アンドリュースとしてはボーン・イン・トランク芸人の地を出せるところなのだが、ワイズという監督は音楽処理というか音楽編集処理はうまいけれど、根っからの映画育ちで舞台のテイストが出せないせいか、なんだかサマにならない。舞台だと一方方向からしか撮れないので、得意の映像分割の冴えが全然出せない。
後半、酒に溺れるのかとと思うとそれほどでもないあたりで切り上げてしまうし、さすがにショー場面に限らず豪勢なセットや衣装は見ものだけれど、脇の男優がみんな弱くて、ドラマらしいドラマにならない。
(☆☆☆)