prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ノロイ」

2010年04月19日 | 映画

フェイク・ドキュメンタリーなのだが、劇中ビデオの作り手以外の、つまりこの映画そのもののスタッフ・キャストの名前は一切出てこない。
全編を通じて、画面にはアンガールズや江口ともみやダンカンや荒俣宏といった人たちがテレビで見る姿そのまんまとして出てくる以外、まったく知らない人しか出てこない。今見ると、飯島愛が出ているのが怖い。ひどく不健康なやせ方をしているのがまた怖い。

実際はきちんと世界観を構築した上でストーリーテリングもがっちり計算された劇映画なのだが、ふつうの映画がとぼけている「カメラの介在」をはっきり打ち出すことで、写っていないものの存在をかえってありありと感じさせる。

「普通の」人の顔がそれぞれ一種異様な歪み方をしているのがすごい。そういう人を選びましたという感じではなく、テレビや映画に出てくるつるんとした美男美女ではない人間の顔というのは、こういうなまなましさや怖さをもともと持っているのではないかと気づかされる。

ホームビデオを撮っているうちに、それまでにこにこ料理を作って運んでいた女の子が一瞬ののちに異様に硬直し、窓の外に鳥がぶつかってくるのが無作為(のよう)に写ってしまうシーンは戦慄的。

クライマックスの「家」の中の造作など、実際はすごい手間と金をかけていると思わせる。
(☆☆☆★★★)