prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「空白」

2021年10月09日 | 映画
配役序列のトップが松坂桃李ではなく古田新太だったのはちょっと意外。
実際、場面は古田から始まって古田で終わるのであり、一番大きくキャラクターが動くのは古田の役ということになるのだろう。

予告編だと娘を交通事故で亡くした父親がモンスタークレーマー化するのかと思っていたら、初めからひどく周囲から持て余されていた人物なのが描かれる。
それがワイドショーのリポーターに興味本位で扱われ、匿名の悪意にさらされていくうちに、その点では実は同じ立場に立った加害者(とは言い切れないのだが)側の松坂桃李と通じ合うところが出てきて、亡くなった娘のことをどの程度知っていたのか、知らなかったことを知っていくのがドラマとしてのポイントになる。

テレビのワイドショーは実際にはまるで見ないのだが、まあ見ていてイライラする。リポーターが古田に振り払われて転ぶところが痛快に思えるくらい。ただしこの後掌を返して古田を悪役扱いにするのだから、また酷い。
松坂の取材映像を切り貼りして伝えようとしたこと(そして現場のリポーターはそう理解したと言明したこと)とはまるで逆の意味にされてしまうあたりも、ありそう。
ただこのネタはワイドショーが引っ張るには少し弱いのではないかとは思った。

交通事故でいったん乗用車に轢かれて倒れたところにトラックに巻き込まれて引きずられ血の跡が道路にずうっと残る描写が生々しい。
実際、交通事故の遺体の損傷というのは戦場カメラマンに言わせると戦場より酷いくらいらしいが、さすがにそれを直接見せはしないものの、古田のセリフでリアルに描写するのが生々しい。

寺島しのぶのスーパーの従業員ののおばさんの良かれと思って余計なことばかりする独特のうっとうしさの描出も印象的。

事故にあう娘が通う中学校の教師たちのことなかれ主義は想像の範囲内だが、校長の発言は責任転嫁を通り越してほとんど犯罪。そこまで普通やるかと思わせて、やや作り話っぽくなった。

舞台になるスーパーでやたらpaypayの表示が目立つ。バーコード決済では一番普及しているからには違いないが、実際ああなのか、タイアップなのか。