prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「キャンディマン」

2021年10月29日 | 映画
冒頭の映画会社のロゴの出方が前代未聞で、文字がことごとく左右逆になっている。
さらにタイトルが出るとさすがに文字は正常になるが、バックの林立するニューヨークのビル群が見上げすぎてそっくり反ったそうにほとんど上下逆に見える。
あ、これは何らかの意味で逆転を含む内容になるなと思わせるし、実際それらしくなるが、一筋縄ではいかない。

主人公が売り出し中の現代美術家とそのマネージャーで、壁にかけられた絵や蔵書などから割と裕福なインテリなのが伺われる。
しかし彼が住んでいるのが元スラムから黒人を追い出して再開発して作った高級住宅街で、その彼が先祖帰りのように現在の黒人が住んでいる地域を訪れるという逆行が平行して描かれる。
このあたりの捻り方は「ゲットアウト」のジョーダン・ピールが製作にまわったからでもあるだろう。

画面自体が現代美術的な感触があって、美術展会場の鏡や投射映像を生かした殺し場などすごくモダン。

インテリである主人公がかつての差別され迫害された黒人のシンボルであるキャンディマンになっていく、それをパートナーの女性が立ちすくむように見守る図が決めるラストが見事。

警官が黒人と見るとあたまから犯罪者と決めつけたり、不動産価格と住人の人種とが連動している仕組みなど、かなり日本でもおなじみになってきている。

なんでもないように描いているが、鏡の中にキャンディマンが出没するあたり、昔だったらカメラが鏡に映ってしまうところを上手く合成している。デジタル技術の進歩のたまものだろう。