長崎の原爆を描いているのだが、ピカドン式の描写を前半は外し気味にしているのは意外だった。
原作者にあたる永井隆博士役の加藤剛が原爆投下前にレントゲン用防護服を身につけていたりするのが目に見えない原爆症がじわじわと迫ってくる感じを暗示的に出していたと思う。
その後の描写もたんたんとしてサイズも引き気味、固定画面が主体で、色彩も抑制が効いている。
ただし開かれた戸の外に広がっている焼け跡の廃墟のスケールがさりげなくすごくてびっくりする。
木下恵介とすると「笛吹川」で戦国時代の合戦を再現しながら一向にエキサイティングにしようとせず、百性たちの生活の背景としか描かなかったようなものだろう。武張った描写を避けるのは根っからの体質と思える。
「ウルトラマン」の特殊造形で有名な成田亨が特殊効果を担当したラストシーンで一気に大破壊描写を持ってくるのだが、すでに起こってしまったことであり、取り返しのつかないことであり、「ターミネーター2」みたいには当然ならない。