prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「アメリ」

2007年03月13日 | 映画
こういうのって、ひとりよがりっていうんじゃないかなあ。ヒロインの行動も、映画の作り方も。
けっこう受けてるんでテレビ他で何度か繰り返して見ようとしたが、どうしても受け付けず。もういいや。
(☆☆☆)


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「ヴェロニカ・ゲリン」

2007年03月12日 | 映画
報道によって命を失った実在の女性ジャーナリスト素材は興味が持てたのだが、製作がジェリー・ブラッカイマー、監督ジョエル・シュマッカーという単細胞コンビなのでイヤな予感があったら、せっかくダブリンを舞台にしているのに、テロを含む長い政治的抗争にまるで触れずただワルモノとしての麻薬組織の報道だけの話にしているのが、はなはだ物足りない。報道がぶつかるジレンマというのは、いくらなんでももっと複雑なものだろう。子供が麻薬に溺れているのを強調しているのも、なんだかあざとい。
(☆☆☆)


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アカデミー賞受賞式

2007年03月11日 | 映画
アカデミー賞の授賞式をNHK衛星第二で見る。前はWOWOWを入れていたので当日に見られたのだが、今は解除している(多すぎて見切れないのよ)ので遅れたが、適当に編集されているので長々と見せられるよりむしろありがたい。
脚本賞でシナリオの朗読と実際の画面をかぶせて見せたのが面白い。
名誉賞のエンニオ・モリコーネのプレゼンターがイーストウッドというのは気が効いている。モリコーネは英語が話せないのでアメリカの知名度は長らく低かったと聞いていたが、ホントに話せないのね。イタリア語のスピーチをイーストウッドが通訳(?)していた。イタリア語がわかるとは思えないが、まあだいたい言うことは決まっている。
まぁたピーター・オトゥールが落選。すごく老けてなんともいえない顔。
スキンヘッドのジャック・ニコルソンがブキミ。
スコセッシの受賞はお膳立てが整っていた感じ。コッポラ・ルーカス・スピルバーグとかつてのニューハリウッド三人衆がプレゼンターで並んでるのだものねえ。三人との違いはメガヒット作の有無で。


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「特攻大作戦」

2007年03月10日 | 映画
原題The dirty dozen(汚れた12人)。
チームが困難な任務を果たす話、なのだがこの死刑囚や懲役20年といった囚人チームが割と後までバラバラでなかなかチームとしての態をなさない。どっちかというと「シルミド」みたいなムチャな任務に駆り立てられる迷惑さ、上層部の勝手さの方の印象が強く、男くさい役者がずらっと並んでいる割に痛快な感じはしない。ドイツ将校たちを地下に閉じ込めてガソリンを注ぎ込んで火をつける場面なども残酷な印象を強める。

監督のロバート・アルドリッチについて故・瀬戸川猛志は「アメリカ嫌いのアメリカ人というのもいるのではないか」と書いていたが、そういう感じ。もともと親族に州知事とか上院議員がぞろぞろいるロックフェラーにつながる一族の出で、映画界に入ったので勘当されたとか、アカ扱いされてアメリカを追放されたチャップリンの助監督を「ライムライト」で勤めたとかいったエピソードからしても、首肯できる気がする。この映画についても「アメリカ兵だけが正義でドイツ兵だけが残虐なんてことがあるうるわけがない」といった発言をしていた。
(☆☆☆)


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「女のみづうみ」

2007年03月09日 | 映画
スジからいけばよろめきドラマ(古いね)以外の何者でもないのだが、何しろ監督が吉田喜重だから、脅迫者にして二人目の不倫相手が死んだのか生きてるのか、脅迫のネタになった写真のネガがあるのかないのか、といった存在と不在の間のキャッチボールといったヤヤコシイ観念劇をものすごく美的に撮っている。
よろめきをまともに撮って面白くなるとも思えないが、こうも高尚に撮るのは感心するのとついていきかねるのと、両方。
(☆☆☆)


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「カミュなんて知らない」

2007年03月07日 | 映画
映画青年的な観念性とヌーベル・バーグ風の映画の引用癖を、ベテランの域に達した柳町光男がどういうつもりで今更やって見せたのか、理解不能。
「ベニスに死す」のパロディ(?)など、見ていられない。
(☆☆★★)


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「推手〈すいしゅ〉」

2007年03月06日 | 映画
息子を頼ってアメリカに渡ったはいいが、アメリカ人の嫁を初めとして、なかなかアメリカ社会に溶け込めない中国人の老人を通して、二つの文化のの葛藤を描く。家を出て皿洗いをしているとオーナーが理不尽な解雇をしようとするので太極拳で対抗し、若者たちが力任せに追い出そうとするがびくともしないのが痛快。

台湾出身のアン・リー自身、アメリカ社会に溶け込んでオスカーを獲得するまで至るのと、当然重なって見える。二つの文化ともにリアリティがある。
(☆☆☆★)


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「すべては愛のために」

2007年03月05日 | 映画
前半、金持ちの道楽みたいな感じでチャリティに参加していたヒロインが、パーティに乗り込んできた現地で悪戦苦闘している往かれる医者と飢え死にしかけている子供に触れて現地に向かい、難民の悲惨さにじかに触れてショックを受けるまでは面白いが、後半話がロマンスに脱線してしまうのは元の木阿弥という感じで白ける。

NGOのスタッフが場合によっては武装勢力とも取引するあたりはリアルでいいのだが。

ヒロインが接する骨と皮ばかりになっている子供は作り物だろう。そうでなかったら怒るぞ。
(☆☆★★★)


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「インプリント ぼっけえ、きょうてえ」

2007年03月04日 | 映画
展開が、おどろおどろしい道具立てを順々に説明的に明かしていくだけで、それがわかったからといってストーリーあるいはドラマが前進するわけではないのでかなりかったるい。
日本の話なのだがセリフは全部英語で、役者も日本と英語圏混交。ちょっと石井輝男が手がけていた異常性愛路線で外人が時代劇に出没しているような感じ。拷問シーンを長々と撮っているあたりも。
撮影・美術・衣装ほかスタッフワークはレベルが高い。
(☆☆★★★)


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「どろろ」

2007年03月03日 | 映画
それにしてもとんでもないハナシだなあ、と映画になって見ると改めて思う。一種のフリークスだものね。美男美女が主演しても解毒にはならない。むしろ逆。
連載当時は人気がなくて打ち切り、かつては封印作品に近かったのがどういう脈絡で甦ったのか。

手塚治虫が四十八の妖怪という数を決めたのは水木しげるがウケていたいろいろな妖怪を出しやすいようにとそうしたので、ウケたら百でも二百でも出すつもりがウケなかったから途中で打ち切られたわけだが、今回の映画化もその目論見を受け継いで明らかにシリーズ化するつもりの作りだし、現にヒットしたから三部まで作るそう。

ちょっと物足りないのは、妖怪たちが数は出てくるしデザインや動きも工夫を凝らしてはいるけれどキャラクターがないこと。次からはとうぜん考えるだろうが。妖怪が死ぬとバラバラに飛び散るのをCGであまり毒々しくなく処理している。
(☆☆☆)


「叫(さけび)」

2007年03月02日 | 映画
映像言語がタルコフスキー作品、特に「ストーカー」に驚くほど共通している。

水が染み出してきている廃墟、どこからかビリビリ響いてくる振動(地震)が感じさせるある予感、直線的につながっているようで、いつのまにか行きつ戻りつしてずれて現実感を崩壊させてくる場面展開、世界の終末が迫っている(ただし神は関与しない)感覚。

幽霊の因果律関係なしの理不尽な現れ方が、呪いとか祟りとかの段を通り越して世界の秩序感をぶち壊すものという感じで、人間同様に肉体を持った幽霊は逆に物の実在を保障する客観的世界観を顛倒させる。
一方で、「雨月物語」以来の日本映画、というより「神」を持たない日本文化の下での「もう一つの生き方」としての幽霊のあり方の伝統をも思わせる。

のべつあちこちをほじくり返している今の東京の街で撮っているには違いないのだが、警察署の俯瞰など「メトロポリス」みたいなレトロSFの匂いがする。
建設現場というのは、廃墟と見分けがつかない。というより、すべてのものはできたと同時に古び始めるわけで、廃墟というのは過去を向いているよりは未来に向って育っていくものではないかと思わせる。

いささか濫用されている言葉だが、すぐれて世界観を持った映画。
(☆☆☆★★)


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「輝く夜明けに向かって」

2007年03月01日 | 映画
アパルトヘイトものというのは実際にそれが布かれていた時とは違って、今では批判するだけでは成立しないので、アパルトヘイト取り締りによって普通の市民が家庭を壊されてかえってテロリストになってしまうという、今のイラクのアメリカが押し付けた「民主主義化」がかえってテロを増やしている逆効果ぶりを思わせる展開になっている。

実生活では筋金入りのリベラルであるティム・ロビンスが取締官を演じて、一方でアパルトヘイトは長続きしないと思いながら職務は忠実に執行するがどこか上の空という複雑なキャラクターを作り出した。単純に善悪どちらの面もあるというより、悪いことと知っている頭とは別に自動人形的に迫害と拷問を行うといった薄気味悪さは、オスカー受賞作「ミスティック・リバー」の役に権力を与えたよう。
(☆☆☆★)