prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「Red」

2020年03月08日 | 映画
ヒロインの夏帆が嫁に行った(という旧弊な言い方がぴったり)家の金かかっていそうな割に厚みのない調度の揃え方がいかにも今の日本という感じ。
お年始に出かけたりパーティーに出たりして接触する連中もまあ俗物性丸出しで、昔の日本映画は金持ちの描写がヘタというのが通例だったけれど、安い金持ちの描写は堂に入るようになった。

夏帆は実質母子家庭の出身でかなり生活水準が違う中どうやって嫌な言葉だが「玉の輿」に乗ったのかとも思える。

間宮祥太朗 の夫はいかにもマザコン丸出しで女は家庭を守って当たり前と、もう当たり前とすら思っていない感じがよく出ている。
それが悪役というより、雪の中でも子供のためなら戻ってこいといい放つ度しがたい無神経として、この国ではむしろあるあるなのがヒロインの行動に説得力を持たせた。

冒頭の雪と電話と車を生かしたただならぬ雰囲気の描写から、雪の中の旅に緊張感と詩情が不倫というお話の単純な印象を越えて持続する。
妻夫木聡が適度に貫禄がついて色気が出てきた。

ラストは言ってみれば「人形の家」だが、あの1879年に書かれた古典ドラマが骨格としては成立するくらい、母親だけに子供を押しつけるイエ体質というのはしぶとく生き延びているのだろう。




3月7日のつぶやき

2020年03月08日 | Weblog



「スキャンダル」

2020年03月07日 | 映画
テレビのキャスターといったら特にアメリカではとんでもない高給とりでエスタブリッシュメントの仲間とみなされるわけだろうけれど、実は案外と立場はもろくて本当のシステムの支配者にしてみれば歯車のひとつにすぎず、クビになる時はあっさりクビになるのがわかる。

昔は(今でもか)女優が性的消費の対象であると同時に女性が自前で収入を確保できる数少ない職業のでもあったという矛盾を、もっと大衆の面前でさらに巨大な額のマネーと知名度とで増幅した感がある。

ニコール・キッドマンやシャーリーズ・セロンがモデルになったキャスターにそっくりになったカズ・ヒロによる特殊メイクがアカデミー賞を受賞したのが話題になったが、元のキャスターの顔をよく知らないのが困る。

セクハラの背後には金髪長身とスタイルよしといった性的紋切型があるのだろうが、主演女優たちがそういったタイプにもろに当て嵌まるのが皮肉でもあるし、一方そういう人たちが声を上げたから「効果」があったとも言える。

ドラマとすると、主役三人が直接絡むところは特になく、ジョン・リスゴーのセクハラパワハラを居直った意識もなく行っている男を結節点にしていて、キャラクターの感情面より、セクハラパワハラとはどういうものか、どう証明するか、どう戦うかの具体面をスポーティに中継しているような作劇演出。




3月6日のつぶやき

2020年03月07日 | Weblog



「ミッドサマー」

2020年03月06日 | 映画
ミッドサマーといったらシェークスピアのA Midsummer Night's Dream(夏の夜の夢)を当然に思い出すわけだが、前は真夏の夜の夢と誤訳されていたくらいMidsummer(夏至)というのは日本ではイメージがつかみにくかったと思われる。

ヨーロッパの緯度の高い場所だと日がずうっと沈まず柔らかい光が絶えない玄妙な雰囲気が続くのを妖精が出没するファンタジックな舞台に生かしたわけだが、それをまたアレンジしたのがイングマール・ベルイマンの艶笑喜劇「夏の夜は三たび微笑む」ということになる。

で、果たせるかな登場人物にイングマールという名前がつけられている見てにやりとする(珍しい名前ではないが)。
白い服を着たコミューンのメンバーが手をつないで長い列を作ってぐるぐる踊るというのは、ベルイマンの「ファニーとアレクサンドル」のクリスマスパーティの再生とも見える。

アバンタイトルの雪の夜のシークエンスの異様なタッチが一転した明るい場面が続くうちに忘れてしまうのだが、ラストのラストで冒頭とつながる。

独自の論理による習慣を守っているコミューンに外部の街の人間たちが紛れ込むという話は、構図とすると「食人族」とかと実は同じ。その土俗の論理の異様さという点で諸星大二郎を思い出したりしたが、表面的な白っぽく植物や花で飾られたメルヘンチックなヴィジュアルとのコントラストの分、なお奇怪。

花や草が萌えるのがこれくらいグロいテイストで映像化されたのも珍しい。




3月5日のつぶやき

2020年03月06日 | Weblog




「グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇」

2020年03月05日 | 映画
太宰治の絶筆の書かれなかった部分を補った舞台の映画化、には違いないのだが、太宰色は特に後半に行くに従って薄れる。

それもそのはずで、原作は映画でいうとやっと二人目の橋本愛の画家が登場するあたりまでしか書かれていない。
つまり大半は舞台のケラリーノ・サンドロヴィッチと映画の奥寺佐渡子の創作ということになる。

舞台版は見ていないので異同はわからないが、映画だけ見ても一つ一つのシーンが芝居としての組み立てと捻りとオチを持っているのに気づく。
カットをあまり割らずふわふわした感じで移動しながら芝居を全体として捉えていくカメラワークで、その芝居を各出演者たちがたっぷりものにしているのが何よりのお楽しみ。

小池栄子は美人でやたら力が強くて無神経で(実生活の夫の坂田亘が元プロレスラーなのがかぶる)すべての造作が大型というぴったりの役どころ。
カラスミに味の素をどっさりかけるという無神経ぶりなのだが、しかし最近は味の素をそのままかけるというのとはしないね。

終盤、展開がお話のためのお話になってすっきり着地しないのは惜しい。
ちなみに、映画に出てくるタイトルは「グッドバイ」だけで副題なし。




3月4日のつぶやき

2020年03月05日 | Weblog


「ハスラーズ」

2020年03月04日 | 映画
まあ出演者の皆さんの肉体美が圧巻。
性的消費の対象だった肉体が逆襲して金の力を圧倒するのがすがすがしい。

ショパンのピアノ曲がところどころで使われるのが女性たちのパフォーマンスがミスマッチのようで不思議とマッチしている。




3月3日のつぶやき

2020年03月04日 | Weblog

「グッドライアー 偽りのゲーム」

2020年03月03日 | 映画
みっちり芝居を見せるタイプの映画で、ヘレン・ミレンとイアン・マッケランという組み合わせは魅力十分。

謎解きが後出しジャンケンみたいなところがあって、それまでヒントや伏線がないところに回想シーンを出して説明するのは技術的にややこなれていない感じ。

とはいえ、高齢の名優をカップルで主役に立てて色っぽさ満々の芝居を展開させるというのは、さすがにイギリス。




3月2日のつぶやき

2020年03月03日 | Weblog


「名もなき生涯」

2020年03月02日 | 映画
「頭の先からつま先まで、細胞の一個一個に至るまで芸術家といった人です」とは「天国の日々」で組んだ撮影監督ネストール・アルメンドロスの監督テレンス・マリック評。

すごい評言だが、その全身芸術家ぶりはどの作品にも言えることとはいえ、「ツリー・オブ・ライフ」「トゥ・ザ・ワンダー」「聖杯たちの騎士」といった比較的最近の半ば連作は、いかに「天国の日々」の生涯のファンである自分もついていくのは難しく途中でたびたび舟を漕いだ。

今回も実に三時間の長尺で内省的なナレーションと自然光と多くが自在な手持ちカメラによる圧倒的に美しい映像といった文体はまったく変わらず、かなり覚悟していったのだが、芸術家気どりではなくこれが芸術なのだという物を見て、一種粛然とさせられた。

ナチスに併合されたオーストリアでヒトラーに忠誠を誓わなかったために死刑にまで処せられる農夫の物語、ではあるのだが、毎度のことながらストーリーはあるがおよそ語り口でひきつけるといった機能は果たさない。

見ながらかなり自己流に考えていたことを書き連ねると、ナチが支配していた神なき世界で、神を顕現するふたつのものが三時間にわたって続くとも言える。つまり、光と言葉、「ヨハネによる福音書」の冒頭「初めに言葉ありき、言葉は神と共にあり、 言葉は神であった」と、創世記の冒頭の「光あれ」ですね。

農夫が譲らないのは忠誠を誓うこと、思ってもいないことを口にすること、言と心とが食い違うこと、と突き詰めていて、ヒトラーが許せないから、とか、愛国心や道徳心からといったある意味わかりやすい意味解釈に接近するのを執拗に続く背景を満たす光とボイスオーバーによって回避しているとも言える。

はたからは理解できない価値観を通して命を捨てるに至る人といえば、代表はキリストだろうし、言及される場面もある。
かといってこれが宗教的な映画かというと、キリスト教的な人格神であるより、自然や光といったもの自体の中に超越的なものを見ようとしているといった微妙なところでイデーとしての宗教から外れている気がする。

いずれにせよこれは珍しいくらい思索と表現を突きつめた一作。




3月1日のつぶやき

2020年03月02日 | Weblog



2020年2月に読んだ本

2020年03月01日 | 
読んだ本の数:21
読んだページ数:4898
ナイス数:0





読了日:02月05日 著者:小林 雅一




読了日:02月09日 著者:安倍 夜郎




読了日:02月09日 著者:野田 サトル




読了日:02月09日 著者:野田サトル




読了日:02月09日 著者:野田 サトル




読了日:02月09日 著者:後藤 健太




読了日:02月13日 著者:南勝久




読了日:02月13日 著者:南勝久




読了日:02月13日 著者:南勝久




読了日:02月13日 著者:南勝久








読了日:02月13日 著者:竹中 明洋




読了日:02月16日 著者:ジューン ゴールディング




読了日:02月27日 著者:四方田 犬彦




読了日:02月28日 著者:いとう せいこう




読了日:02月28日 著者:かわぐちかいじ




読了日:02月28日 著者:かわぐちかいじ




読了日:02月28日 著者:かわぐちかいじ




読了日:02月29日 著者:かわぐちかいじ




読了日:02月29日 著者:かわぐちかいじ