prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ゴールド・ボーイ」

2024年03月16日 | 映画
岡田将生が「ドライブ・マイ・カー」を再現するキレッキレぶり。あるいは「デスノート」のように、ひとりで悪役を背負わずに他のキャラが次第に嵌入してくるあたりのタッチ。
考えてみると、沖縄独特のでかい墓がこれだけ生かされて描かれたことはなかったかも。マーラーのアダージョと共に死の匂いがする。
キャラクターが進展するというより回想の中でひとひねり半して遡るような描き方が独特。
金子修介監督は中国で撮った映画があったと思ったが、製作体制でそれとの関連どうなっているのだろう。
ラスト近くシャッター街がちらっと写るのが「衰退している国」をさりげなく匂わせる。





「52ヘルツのクジラたち」

2024年03月15日 | 映画
原作を先に読んでいたので、ストーリーの意外性はないのは当然として、ちょっとキャラクターが演じる役者と乖離している、という疑問はある。
欲をいうなよという思えるのといやそこまでいかないと本当ではないのではないかというのと両方で、今後ますます問題になる気はする。

タイトルの象徴的な意味あいというのが実際のクジラの映像でむしろ力強くなっている。





「ネクスト・ゴール・ウィンズ」

2024年03月14日 | 映画
公式戦でワンゴールを決めたら合格と、思い切りハードルを下げている。
下げておいて多少上げたらお汁粉に少し塩を入れるみたいに甘さが強くなるかという作戦なのだろう。

クライマックスをストレートに盛り上げないでフラッシュバックを重ねて焦らしながら描くのは良くも悪くも変化球。
マイケル・ファスビンダーが金髪にしているのは実物に合わせたのがわかる。





「マダム・ウェブ」

2024年03月13日 | 映画
なんか最近のマーベルユニバースものって、予習復習が必要みたいで面倒。

怒られるか知らないが、脇に出る3人娘が誰なのかわからなかった。他で出てるのだろうけれど。
スパイダーマンそっくりのキャラクターがなんでそっくりなのかも良くわからないし。
ユニバースものばっか見ているわけにはいかないのですよ。

ヒロインがデジャヴ(既視感)に襲われ、それがすでに見たものではなく、これから見るものであることがわかってくる。

ヒロインの名前がカサンドラというのはギリシャ悲劇のキャラクターからとったもので、予言能力を与えられると同時に誰もその予言を信じないので結局危機を避けられないというアイロニカルな悲劇的な存在なのだが、予知能力を与えられるのは一緒だが着地はかなり強引に楽天的。
そうでないと次に続かない事情もあるにせよ。





「落下の解剖学」

2024年03月03日 | 映画
あれ、これで終わり?というのが正直なところだった。何かもっとどんでん返しがあるのかと思ったのだが。
見方間違えたか。

突飛なことを言うけれど、「氷の微笑」みたい。
女性作家の作品のネタが実際の殺人?に反映するところとか、セクシュアリティとか。
あれもモヤモヤする映画だったけど。

展開とすると掘り進んで真相に迫るというより岩盤に突き当たって止まってしまう感。






「おかしな奴」

2024年03月02日 | 映画
歌笑という落語家は小林信彦の「日本の喜劇人」の渥美清の項で知った。小林は実在の歌笑を知っていて映画の渥美清と比較すると、かなりずれがあるらしい。
たとえば歌笑がジープにはねられて死んだのは1950年で、バックで流れる「銀座カンカン娘」がヒットしたのは1949年といった具合だが、歌笑を知らない身には考証は難しい。YouTubeを検索してみても映像はなく音声しか残っていない。

民衆が歌笑を英雄視していたような描き方は渥美自身「アラビアの ローレンス ママ 」みたいな歌笑だったろ、と小林に言っていたらしいが、歌笑を持ち上げた民衆が同時に引き下ろしもしていた記憶のある人間には違和感があったということか。
生前の歌笑のことは知らず妙な英雄視というのは今の寅さん=渥美清と一周まわって妙に重なっているみたい。
なお1966年のテレビドラマ「おもろい夫婦」で再度歌笑を演じている。

脚本の鈴木尚之は同時期に中村錦之助主演、内田吐夢監督の「宮本武蔵」シリーズを書いていて、腕ひとつ芸一本で底辺から這い上がる男の意地と女性に対する純情という点で渥美清の原型になるキャラクターに共通するところがあったのではないか。

渥美清は顔がおかしい(ファニー)のに対して声と口跡はすごく良い。落語家役などぴったりに思えるのだが、高座に上がるだけでまだ構えた感じになる。

気のせいか、兄弟子役の佐藤慶が立川談志に似て見えた。