prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「オーメン ザ・ファースト」

2024年04月11日 | 映画
今や常套となったダミアン誕生までのいきさつを綴るエピソード・0といった作り。

666のしるしのある身体の場所に工夫がみられる。
舞台はイタリアで画面自体の色彩が油絵風になっている。
半ば事故のように半ば何者かの意思で人が次々と殺されるあたりはこれまでの見せ場を踏襲しているが過剰に残酷に走らないで見せる手順で効果をあげている。





「アイアンクロー」

2024年04月10日 | 映画
父フリッツ・フォン・エリックがテキサス大学時代にクラリネットで奨学金を得ていたというのにびっくり。
星一徹のアメリカ版みたいなキャラからはちょっと想像つかない。

フリッツは息子たちに自分がとれなかったNWAチャンピオンの座につかせるのに執念を燃やしているわけだが、当時のNWA王者というのがハーリー・レイスとかリック・フレアーといったなんだか軽い(対戦した相手によるとそれなりの上手さはあるらしいが)相手なもので、なんだか今ひとつピンと来ない。

ここでは出てこないがNWAの権威というのはおそらくルー・テーズの名前と936連勝記録と共にあったわけで、それに比べるとチャンピオンの座の重さがチャンプその人の重量感と逆転してしまっている。

とはいえドラマの中心になるケビン・フォン・エリックは早く亡くなった長男のジャックJrを除けば最年長で、弟たち(全部男兄弟なのね)とも仲は良い。
その仲のよさと素直さが良くも悪くも父親への反発や葛藤にはなかなか結びつかないわけで、そのあたり星一徹と星飛雄馬とは違う。

東京高輪東武ホテルでの三男(事実上の次男)のデビッドの急死をどう描くのかと思ったら、父親が電話を受けるだけで日本の場面など出てこないあっさりした描き方で、以降も悲劇の描写はあっさりしたものに抑えられている。
いきなり全部見せずに省略を効かせながら少しづつ見せていくといった演出をとっている。

プロレスの描写などはずいぶんこってり凝っており、俳優たちの身体の作り方からそっくりぶりからまあ凄い。

団体間の競争が激しくなってレスラーも薬物に頼ることが増えたのがエリック一家の悲劇の原因かと思っていたが、ドーピングが問題になってきたのは2005年のエディ・ゲレロや2007年のクリス・ベノワの死からで、1985年のデビッドの死とはタイムラグがある。それだけ長いことほったらかしにしていたということかもしれない。





「マエストロ その音楽と愛と」

2024年04月09日 | 映画
オープニングの大移動撮影にかぶるのが映画「波止場」の映画音楽で、いかにもスリリング。
レナード・バーンスタインは「ウェストサイド物語」ほか劇音楽でも有名だけれど、ブラッドリー・クーパーの役者としての見せ場としては指揮者に重きを置いている。

妻役のキャリー・マリガンとのものすごい口論描写が目立つが、愛人との関係を隠そうとしもしないのを含めて硬軟とりまぜた競演は「ある結婚の風景」か「マリッジ・ストーリー」かといったところ。






「遺灰は語る」

2024年04月08日 | 映画
タヴィアーニ兄弟のうち弟のパオロの単独監督作。というか、兄のヴィットリオは2018年に亡くなっている。
兄弟の監督作の「カオス シチリア物語」はルイジ・ピランデルロ原作だったが、これはムッソリーニが抱え込んでいたピランデルロの遺灰を運ぶ話。

ほぼ白黒映像で通していてラストの「釘」というエピソードだけカラーになる。パオロの遺志を感じても考えすぎではないだろう。

お話映画として、意外性と収まるとところに収まるのを両立させているのは「カオス」同様。





「三体」

2024年04月07日 | 映画
原作読んでから相当経っているので、こんなだったかなと何度も思ったらけっこう変えているらしい。冒頭の文化大革命の描写は確かにこんなだったが。

侵略者が到着するまで四百年かかるという考えてみると宇宙の巨大さからすると不思議はないのに改めて着目するのがなんとなくおかしい。

ヘンリー八世とか中国の昔の暴君といったあたりの地球の歴史の取り込み方がもっともらしい。

それにしても劉慈欣って中国の作家で文化大革命を堂々と描けてアメリカでも中国でも映像化されるというのは、どういう立ち位置なのだろう。





「オッペンハイマー」

2024年04月06日 | 映画
世界は破壊された、というセリフが繰り返される。
原爆の製造によって抑止力が生まれ平和が来るといった思惑とそれをあっさり裏切る断絶にも言えると思うし、それ以前に敵味方の区別を超え人類の文明、どころか地球上の生物の生存、この星の存在すら物理的に破壊しかねないと言っても大げさではない。それがあっさりスルーされて「今まで通り」の勝つか負けるかの発想で政治家に運営されるのがいかに奇異なものか。
その一種絶対的な物理現象に片足を置き、もう片足を戦争と政治というぐちゃぐちゃした世界に置いたのがオッペンハイマーということになる。

ハーバード大学でオッペンハイマーが初めから物理を学んだのではなくてホワイトヘッドに哲学を師事したりしている(ホワイトヘッド自身、数学から哲学に移ってきたのだが)。割と後まで何やるか決めてなかったらしい。

核爆発のカウントダウンにつれて、意外なくらいの不快感に襲われた。場面としてはこれまでも繰り返されたクリシェなのだが

後半のふたつの聴聞会のカットバックで、主にオッペンハイマーとルイス・ストローズ(ロバート・ダウニー・Jr.)との主観が時制も交錯させて激しく乱反射する。
ノーランは「メメント」の昔から「インセプション」「ダンケルク」「テネット」など主観=時制を交錯させる技法を好んでいたけれど、その一環ということになるだろう。
「テネット」など物理の法則そのものをネタではなくモチーフとして扱っている気すらする。

広島長崎の圧倒的惨禍の描写を避けているわけだけれど、吉田喜重の意見ではないが、映画には描けないことがある。熱も苦痛も映画に写りはしない。
ただ、描けないなりに迫ろうとした試みは無数にあるわけで、そういう時の人間の視点は虫の目であって神でも物理法則でもない。

ふたつの聴聞会のうちカラーで描かれる一つを奥行きのある構図で人物を不規則に配置し、モノクロで描かれる方を横に広げた整理された構図にしている対照。





「ザ・キラー」

2024年04月05日 | 映画
殺し屋が「偶然に頼るな」とか孤独にクールに独白を繰り返しながら、意外と手違いを重ねるところがほとんどコメディかと思わせる。

コトが大げさになりそうな大格闘を繰り広げたりして、いわゆる非情な殺し屋像と似て非なるもの。
逃亡の途中でヘルメットを川に投げ込むところをわざわざその川に放り込まれたヘルメットを川の中のアングルから捉えたりするあたりオフビートな感じすらする。





「ゴーストバスターズ フローズン・サマー」

2024年04月04日 | 映画
今回は予告編で繰り返されたようにニューヨークの街が氷詰めになるというのが趣向なのだが、地面から上向きに鋭く尖った氷がにょきにょき突き出てきて人に刺さりそうになって、しかし刺さらないのは残酷描写を避けるためでもあるだろう。

ゴーストを縛るのに使われるおなじみのビームが凍るというのは落語で声が凍るみたいなホラ話のタッチ。

ナディーム役のクメイル・ナンジアニはパキスタンのムスリム家庭の出身。
多様性に配慮している感じ。

今回は前作の監督から製作総指揮にまわったジェイソン・ライトマンは初めのうち父親のアイヴァン(前作が遺作になったのでエンドタイトル前に献辞が出る)のレジェンドになったこのシリーズを避けるような社会派的作風だったが、収まるところに収まった。

一番若いマッケナ・グレイスが「ゴーストバスターズ」の前作「アフターライフ」(2021)とあまり変わってなくて、14歳と17歳って一番変わる時期ではないかなと思ったが、身長154cmと小柄なせいもあるだろう。よく見るとやはり変わっているみたい。

ニューヨーク市長役がどこかで見た覚えがあると思ったら、ウィリアム・アザートン。「ダイ・ハード」とその続編のイヤミなテレビレポーター





「ラブリセット 30日後、離婚します」

2024年04月03日 | 映画
夫婦が離婚を決めて冷却期間を置くことにしたところで二人とも交通事故にあって記憶喪失になってしまい、同時にカウントダウンが始まる。
記憶喪失はもう韓国映画やドラマの定番中の定番だが、イヤな記憶はどこかに行ってしまい,基本いい記憶をこれから作っていくというかなり独特の前向きのドラマになった。

夫婦の不和そのものの描写はフラッシュバックで短く処理しているのが上手。
夫婦それぞれの友人たちが賑やかで可笑しくお節介。





「恐怖の報酬」(2024)

2024年04月02日 | 映画
もともとちょっとの衝撃で爆発するニトログリセリンをトラックで運ぶという基本的設定自体、クルーゾー版の時代(1953)ならいざ知らず現代でやるのはムリがある。
爆風で油田火災を消すのだったら比較的安全なダイナマイトを使うなり、実際にやっているように戦闘機用ジェットエンジンのジェット気流で消し止める()なりすればいいのにと思ってしまう。

現代化に伴って太陽光発電なんてやっているのだから石油に頼りきってはいないわけで、どうにもムリがある。

本当はダイナマイトが発明されたのは1866年なので、20世紀にはとっくに一応安全に扱えたわけで、フリードキンによるリメイクの一時間半版では 保管してあったダイナマイトはゲリラに奪われてしまって残されたダイナマイトはニトロが珪藻土から分離していて危険な状態に逆戻りという設定でフォローしていたのが、二時間の「完全版」ではそれがカットされているという妙な状態で、その他一時間半版では二時間版にはないカットがオープニングとエンディングのヘリコプターショット他いくつかあった。

フリードキン版(1977)に続くこの二度目のリメイクでは運転手のひとりが女になるというので「マッドマックス 怒りのデスロード」みたいになるのかと思ったら、そういうわけでもなく、NGOという設定。
四人のドライバーのうち二人が兄弟というのもこれまでと違う。

誘爆するといけないから一台トラックが出発してから距離と時間をとってまた一台出るのを守ってない。
あんなに接近して走ったら万一のとき巻き添えくうに決まっているではないか。
兄弟が一人一台分乗して、女を含む二人がオブザーバーとして別の一台に乗るというのも意図がわからない。

ニトロのそばでドンパチやるなよな。

余談になるが、クルーゾー版のイヴ・モンタンとシャルル・ヴァネル以外の二人のペーター・ファン・アイクとファルコ・ルリは特に説明していないがそれぞれドイツ人とイタリア人で、つまり第二次大戦の枢軸国側だ。
はみ出た立場の人間という設定だろう。





2024年3月に読んだ本

2024年04月01日 | 
読んだ本の数:20
読んだページ数:5638
ナイス数:0

読了日:03月07日 著者:藤子 不二雄A




読了日:03月08日 著者:藤子 不二雄A




読了日:03月09日 著者:藤子 不二雄A




読了日:03月10日 著者:藤子 不二雄A




読了日:03月11日 著者:藤子 不二雄A




読了日:03月12日 著者:ジュリー・アンドリュース




読了日:03月13日 著者:弘中 惇一郎







読了日:03月13日 著者:瀬尾 まいこ




読了日:03月16日 著者:辻村 深月




読了日:03月20日 著者:李 碧華




読了日:03月28日 著者:宇能 鴻一郎




読了日:03月29日 著者:浅野 いにお



読了日:03月29日 著者:浅野 いにお



読了日:03月29日 著者:浅野 いにお



読了日:03月29日 著者:浅野 いにお



読了日:03月30日 著者:ちばてつや




読了日:03月30日 著者:ちばてつや




読了日:03月30日 著者:ちばてつや




読了日:03月30日 著者:ちばてつや