先月MAKIKYUが青春18きっぷを使用して浜松へ出向き、その際に乗車した遠州鉄道の路線バスに関する記事などを既に取り上げていますが、今日は先月MAKIKYUが浜松を訪問した際にバスと共に乗車した、同社の鉄道線を走る旧型車両に関して取り上げたいと思います。
遠州鉄道の鉄道線は電化線区ながらも架線電圧は750Vと低圧で、路線も全区間が単線でありながらも、列車運行間隔は昼間12分間隔で夜も23時台まで列車が運行され、ラッシュ時間帯には4両編成に増結される列車もあるなど、大都市圏の鉄道に匹敵する利便性には定評があります。
使用車両も旧型車両や中古車両ばかりというのが地方私鉄の通例ですが、遠州鉄道の車両は全て自社発注車両で、それも最新鋭のVVVFインバーター制御車(IGBT)も走っていますし、改集札も自動改札機の設置こそないものの、近年ではICカード乗車券(ナイスパス)も導入されるなど、かなり近代的な感があり、大手私鉄の一部路線を凌ぐのでは…という感がありますが、その様な路線にも関わらず今でもラッシュ時間帯には旧型車両が活躍する姿も見られ、それが今日取り上げるモハ30+クハ80形です。
この車両は1960年頃から20年余りに渡って製造され、モハ30+クハ80形の2両で一編成を構成していますが、完全新造車と機器流用車が混在しているのが特徴で、また最終増備車の一編成だけは番号帯やデザイン、下回りなどが大きく異なります(実態は別形式の様なものです)が、この形式は全て側面の扉数が1両2箇所となっているのも特徴(主力の1000・2000形は3扉)です。
最終増備の一編成を除くと下回りは旧式の釣り掛け駆動を採用し、外観は前面が非貫通2枚窓の通称湘南形と呼ばれる形状となっていますので、見るからに古めかしい印象を受けますが、今や地方私鉄でも数少なくなった昔ながらの如何にも「電車」という感がある走行音も魅力的で、遠鉄電車は600V線区とはいえそこそこの速度を出しますし、その上この車両は減速時にもなかなか良い音を発しますので、鉄道好きにとってはなかなか魅力的な存在です。
また製造時期によって扉が片開きと両開きの双方が存在し、編成によっては同じ編成の中で片開扉車と両開扉車が混在していますし、冷房装置も新製当初から取り付けられた編成と、後から改造で取り付けられた編成があり、この両者では冷房装置の外観も異なるなど、車両による個体差が激しく、雑形車とも言える状況を呈していますので、この状況も更に通好みな車両となる要因となっています。
とはいえ旧式の釣り掛け駆動車は騒音が大きく、2扉車で乗降性も決して良いとは言えませんので、サービス面では最新型の2000形などに比べると大きく劣るのは事実で、また主力となっている3扉車の1000形・2000形との連結運転も不可能ですので、専ら平日朝夕ラッシュ時間帯の4両編成運転(土曜日にも一部あり)が行われ、3扉車だけでは車両数が不足する際に運用される程度となっています。
そのため昼間は新浜松駅にも大抵1本が留置されて姿を見るのは容易ながらも、なかなか乗車出来ない車両となっていますし、その上近年は新形式2000形の導入によって徐々に廃車も行われていますが、まだ暫くは活躍が期待出来そうです。
また同系の朝ラッシュ時間帯の運行は浜松圏在住者や、浜松市内に宿泊している場合以外には乗り難い時間帯ですが、現状では夕ラッシュ時間帯の運行は限定運用で運行時間が限られるとはいえ、乗車後にJR普通列車を乗り継いで帰る場合でも、その日の内に首都圏や近畿圏まで帰還できる時間帯に運行されており、日の長い時期であれば撮影も可能な時間帯(これからの時期は厳しいですが…)に運行されている事も魅力的ですので、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様も浜松周辺を訪問・経由される機会がありましたら、是非この希少な旧型車両に乗車されてみては如何でしょうか?
写真は西鹿島駅に停車中のクハ86(先月MAKIKYUが乗車した編成)と、編成からばらされたモハ30形、先月乗車した際の車内の様子です。