去る22日に営業運転を開始した小田急線の新形式通勤型車両・4000形ですが、今日MAKIKYUもようやく乗車できましたので、今日はこの4000形に関して取り上げたいと思います。
小田急4000形といえば、つい数年前まで走っていた機器流用車を思い浮かべてしまう方も居られるかと思いますが、今日取り上げる4000形はこれとは全く異なる新形式で、地下鉄千代田線直通用に導入された新形式の通勤型車両です。
小田急線内での営業は22日から開始され、この形式の本領発揮とも言える地下鉄千代田線直通は29日に開始と公式アナウンスされていますが、車両自体は5月頃から納入が始まり、その後試運転も頻繁に行われている状況(今でも試運転を行っている編成が存在します)ですので、まだ乗車はしていないものの、走っている姿は何度も目撃したという方も多いかと思います。
この車両は用途がほぼ地下鉄直通運用に特化し、小田急線内での分割運用を想定していない事もあって、小田急では他には1000形の一部編成(地下鉄直通用)しか例がない10両固定編成となっており、当面は7編成が製造・就役の予定ですが、JR東日本の最新鋭通勤型車両・E233系をベースにしているのが特徴で、「故障に強い」とされるメカニズム面や、IT技術を活用した情報管理・伝送システムなどをはじめ、車両内外の造りもJR車両との類似点が多く見られ、従来の小田急通勤型車両とは随分異なる感があります。
外観は窓の四隅が角張った客扉や、先代の3000形に比べてかなり小型化されたLED式の行先表示器などがJR車両をベースにした車両である事を物語っていますが、行先表示器は種別・行先と共に次の停車駅を表示し、日本語とENGLISHが交互に表示される点もベース車両との共通点ですし、側面の車号標記もプレートなどではなく車体に直接標記しただけとなっている点も、先代の3000形などと異なる点です。
車内も扉付近を見ますと、特徴的な窓の四隅が角張った客扉に細い黄色のラインが印刷されていて、床材もドア付近のみ黄色く色分けされている事や、非常用ドアコックがドア上のLCD式車内案内表示装置脇に設置されている事、そしてドア開閉装置には小田急初の電気式(今までの車両は空気式)が採用された事などが挙げられ、ドア開閉時のチャイムも今までの小田急通勤車で使用されていたモノと異なり、JRで多用され、他に東京メトロ10000系などでも用いられているタイプになっているなど、この部分だけを見てしまうとJR車両であるかと錯覚してしまう程です。
客室に入ると天井が質素な感を受けるFRP製となっている事や、つり革を吊っている支え棒の形状が随分シンプルな形状となっている事、車号の標記が今までの小田急通勤車各形式で見られるプレートではなくステッカーとなっている事、また側引戸の形状もJRと同等の形状に変更されている事などが、今までの小田急通勤車とは異なり、座席もベース車両に比べてやや薄いものの、最近のJR車両でよく見られるラウンド形状となっているなど、この点だけを見ると何処の鉄道に所属している車両なのかと感じてしまう程です。
車内の化粧板は先代3000形の印象を受け継いだピンク色(公式には薄い赤色としていますが…)を継承しており、これは地下鉄線内走行時にも暗い印象を与えない様に配慮した事もある様で、某社レンズ付きフィルムに似た名称で呼ばれる事が多く、現在千代田線にも2編成程が乗り入れている車両などに比べると印象は良いかと感じますし、ベース車両と同様に優先席付近で床材や化粧板の配色を変える発想も悪くないと思いますが、化粧板が真っ白で素っ気無い印象を与えるベース車両と同様に無地となっている点は、少々質素な感が否めない気がします。
ただそれでも側面の窓割はベース車と異なり、車端部の窓脇に結構な空間が出来ている辺りは、ベース車両そのままではなく、窓割や扉配置に私鉄標準規格を採用した車両である事を物語っていますし、下回りも主電動機(モーター)に通勤車両では全密閉式を採用して低騒音化(MAKIKYUが敢えて電動車に乗車した際も、惰行時などはかなり静かだった印象があります)を図ると共に、高出力形のモーターを採用する事で安定した性能と高速走行時の負荷低減(某社レンズ付きフィルムに似た名称で呼ばれる事が多い車両は、モーターの出力が低出力な事もあって高速走行時に過負荷状態となり、この状況は乗客の立場からも騒音が大きく不快に感じます)を図っている点などはこの車両の注目すべき点であると感じます。
またデザインは好評を博している特急ロマンスカー・50000形(VSE)のデザイナーが担当した事もあって、ベース車とは印象が大きく異なる前面や、今までの車両の印象を継承しつつも、イメージチェンジを図ったインペリアルブルーと呼ばれる色を採用したブルー帯などはなかなか見栄えがする気がしますし、現在地下鉄に乗り入れている1000形は一部編成が4+6両編成となっており、これを置き換える事によって地下鉄直通列車のデッドスペースが減少し、その分定員が増加するという点や、バリアフリー対応の充実に繋がる点などは評価できる気がします。
この新形式通勤車・4000形は今までの小田急通勤車各形式に比べると、小田急の車両という感が随分薄く感じてしまう点は否めませんが、全くのJR車両コピーではなく、JR車両をベースにしつつも独自色を出している点は評価でき、全密閉型モーターの採用をはじめとして注目すべき点もあるこの新形式の今後の活躍を期待すると共に、出来ることであればJR車両ベースという特性を生かし、現在東京メトロ車のみの運用となっていてダイヤ上の制約が大きい千代田線を介した小田急~JR直通列車の運用にも進出(この様な仕様であれば、JRでの取り扱いも容易でしょうし…)して、更に活躍の場を広げて欲しいと願わずにはいられません。
写真は今日乗車した4052Fと試運転を行っている4054F、車外の行先表示と車内の様子、4000形運行開始を告知する駅構内ポスターです。