数日前MAKIKYUは都心を通り抜けて千葉方面へ向かう所用があったのですが、その際は少々時間に余裕があった事もあり、数ヶ月ぶりに都電荒川線に乗車して来ました。
都電荒川線はかつて隆盛を誇った都電の中が次々と廃止されていく中で、専用軌道(路面上を走る区間を併用軌道と称しますが、その逆で電車専用の区間の事)が大半を占めていた事も幸いして現在まで生き延びた唯一の路線で、東京の都心部を走る路面電車という点でも希少な存在となっています。
路面電車といえばLRTと呼ばれる最新の都市交通機関も注目されていますが、日本国内、それも特に東京では今でも「過去の交通機関」「懐かしさ」といった印象を持つ方が多いのが現状で、郷愁を求めて観光も兼ねて乗車するケースが非常に多く見られます。
これは都電荒川線の沿線が下町然としたエリアという事もありますが、荒川線自体がホーム嵩上げという路面電車では異色の方法で完全なバリアフリーを実現しているものの、使用車両自体は近年日本国内の路面電車でも導入事例が相次いでいる最新の低床車両(荒川線で低床車は必要ありませんが…)とは程遠い旧型の改装車が殆どを占めており、この様な車両が大きな走行音を奏でながら走る状況が、郷愁を求めて乗車する交通機関となる大きな要因を占めているのは確かです。
この様な状況は郷愁を求めて乗車する分には良いのですが、やはり都市交通機関としては決して望ましいとはいえませんので、新型車導入による車両代替などでサービス面での改善が必要となる訳ですが、荒川線では今年春に9000形と呼ばれる新型車両が走り始めていまして、現在はまだ1両だけの存在ですが、今後の増備も計画されています。
MAKIKYUは最近荒川線を利用する機会が極めて少なく、まして1両のみの車両ともなれば、乗車する機会そのものがなかなかありませんが、数日前に荒川線を利用した際には、数本待てば9000形がやって来る状況でしたので、絶好の機会という事でこの新型車両に乗車して来ました。
9000形の特徴としては、荒川線は先述の通りホーム嵩上げが行われている事もあって、低床車とする必要がない事から、路面電車における近年の純新車(路面電車では下回りを旧型から転用し、車体のみを新造する事例が数多くあります)にしては珍しく、他の荒川線現存各車両と同様に高床車となっているのが大きな特徴ですが、この構造ですとデッドスペースは生じないですし、ステップなしでも車内に段差がない点は大いに評価できるものです。
外観や内装をレトロ調にしている事も大きな特徴で、2重屋根や独特な窓形状の外観、それに従来車両とは大きく異なる塗装は目を引きますし、内装も木材や木目を多用し、照明も黄色味を帯びた間接照明となっていて天井の構造も独特ですので、なかなか独自色が強く高級感も感じられ、近年質素で没個性的な車両が増えている首都圏においては、かなり好感が持てる車両では…と感じます。
座席はロングシートが主体ですが、一部を一方向きのクロスシートとしているのが特徴で、乗客層を考慮してか、最近の車両にしては詰め物の材質が比較的軟らかめな感じがしますが、クロスシートは乗車時間の割合短い荒川線においては余り問題ない事とはいえ足元がかなり狭く感じられますので、この部分の座席はどちらかというと小柄な方向けという感じがします。
また古風な感が漂う部分もある一方で、座席間にポールが立っていたり、つり革は優先席付近をオレンジ色で区分してその他の部分も一部の高さを低くするなど、バリアフリーを考慮した点や、下回りはレトロな外観と裏腹に最新型のVVVFインバーター制御を採用し、非常に静かで快適な乗り心地を誇る点は、やはり現代の最新型車両であると感じさせられますが、最新型の路面電車にしては珍しく、運転台が2ハンドルとなっている点も特徴的です。
快適過ぎる乗り心地は、旧型群の大きな走行音や振動に比べると少々物足りない感があります(こんな事を考えるMAKIKYUの様な人間は酔狂以外の何者でもなく、一般客の立場からすれば歓迎できる話ですが…)が、サービス面での向上は明白で大いに評価できる事ですし、この新型車両9000形は一般客の注目度も絶大で、MAKIKYUが乗車した際も沿線でこの車両が走る姿を見て、カメラを向ける人々が後を絶たないのは印象的でした。
9000形は評判もかなり良い様ですし、荒川線の路線特性にも見合った車両かと思いますので、今後の活躍にも期待すると共に、この車両の導入を機に荒川線への注目度が高まり、路線の活性化にもつながる事を願いたいもので、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様も9000形に遭遇する機会がありましたら、是非乗車されてみては如何でしょうか?
(ちなみに9000形の運用は一部が都交通局HPで公開されていますし、それ以外でも当日の運用であれば、荒川電車営業所では電話での問い合わせにも対応していますので、事前に問い合わせてから出掛けられるのも良いかと思います)
写真は9000系の外観と車内の様子(車外から撮影)です。