先日「MAKIKYUのページ」では、錦川鉄道で活躍する気動車に関して取り上げましたが、現在は錦川清流線と名乗る錦川鉄道は、国鉄時代には岩日線という路線名を名乗っており、この名前は岩国と日原(にちはら:津和野の近くにある山口線の駅です)それぞれの頭文字を取ったものでした。
現在の錦川清流線の終点は錦町となっており、こんな事を書くと「日原は?」と思う方も居られるかと思いますが、岩日線自体が廃線→第3セクター転換となる程の状況ですので、国鉄の財政難で錦町から先は工事が凍結されており、国鉄時代の岩日線という名称の様に日原までの鉄路が実現する事はなく、錦町までの盲腸線として現在に至っています。
しかしながら錦町寄りの区間は路盤などが概ね完成した状況のまま放置される事になり、未成線として永らく放置されていましたが、その内錦町駅から6km程山間を進んだ雙津峡温泉までの間で、2002年から「とことこトレイン」と呼ばれるトラクター牽引の遊覧車が走っています。
錦町~雙津峡温泉間の路盤は「岩日北線記念公園」という扱いになっており、このトレイン(厳密には列車ではないのですが…)はその遊具扱いで交通機関という位置づけではありませんし、とことこトレイン自体も岩国市が保有しています。
ただ「とことこトレイン」の運行は錦川鉄道が受託していますので、観光用で冬季を除く土休日や休暇期間の昼間のみの運行、また厳密には鉄道とは違った乗物ながらも、錦町~雙津峡温泉間は錦川鉄道の延伸区間と言っても良く、大抵は活用されずに放置されてしまう未成線を6kmにも渡って活用している事はレールファンとして喜ばしい事で、また未成線をこれだけ大規模に活用している事例は他にないという点でも、注目すべき存在といえます。
また「とことこトレイン」が走る錦町~雙津峡温泉間の岩日北線記念公園上路盤は、鉄道として建設されただけあって、カーブなどは非常にゆったりとした感じになっており、それこそ全国で幾つか存在する鉄道の廃線や未成線を利用したバス専用道路を連想させられるものがありますが、錦町~雙津峡温泉間にある途中の集落では1箇所駅を設置する予定があった事もあり、その痕跡が見られる辺りも面白い所です。
それに岩日北線記念公園上路盤を単に遊覧車が走るだけでなく、路線上に2箇所存在する長大トンネル(全長1000mを超えます)の内、錦町駅を出てすぐの所にある広瀬トンネル(きらら夢トンネル)と呼ばれるトンネルでは、トンネル内に蛍光石を用いた大規模なトンネル壁画があって、この場所で数分間停車して壁画を楽しめる様になっているなど、レールファンでなくても楽しめる様に趣向を凝らしているのも特筆すべき点と言えます。
ちなみにこの「とことこトレイン」は錦町~雙津峡温泉間で片道600円(往復はその倍額・片道のみでも乗車可)となっており、運転日が土休日など特定日に限られますので要注意(詳細は錦川鉄道公式HP内に掲載あり)ですが、錦町~雙津峡温泉間は路線バス利用(岩国市営錦バス)でも470円を要する事から、観光用の遊覧車という性質も考えると、その運賃設定はむしろ割安とも言えます。
錦川清流線の利用促進も兼ねている事から、同線を利用して訪れると、清流線の利用証明書(錦町到着時に車内精算する際に配布)を持参する事で100円引き(片道500円)となるのも有り難いものですが、鉄道利用の場合は電話での事前予約可能という特典も用意されています。
(MAKIKYUがとことこトレインに乗車したのは平日だけあって、予約なしで直接現地に赴きましたが、日によっては多客故に突然訪問しても、定員超過で乗車できない事もある様です)
この「とことこトレイン」、現在では山間の田舎町では大きな注目を集める観光資源の一つとなっており、とことこトレインを模したお菓子などの土産物なども売られている程ですが、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様も錦川清流線に乗車される機会がありましたら、是非もう一歩足を伸ばして「とことこトレイン」にも乗車して、雙津峡温泉まで足を伸ばしてみては如何でしょうか?
あと「とことこトレイン」で使用している遊覧車と、岩国市営錦バスに関する記事も近日中に掲載予定ですので、こちらはもう暫くお待ち頂ければと思います。
写真はとことこトレイン錦町駅と雙津峡温泉駅、雙津峡温泉駅周辺の様子ときらら夢トンネル内のトンネル壁画、乗車中のワンシーンと錦町駅の駅名標(雙津峡温泉駅にも同様の駅名標があります)、とことこトレインの乗車券(○鉄の印は鉄道利用を示しており、もう一枚のきっぷは錦川清流線の普通乗車券で硬券)です。