「MAKIKYUのページ」では6月に乗車したKORAILの南道海洋観光列車「S-train」に関する記事を2つ程取り上げましたが、今日はその続編として乗車中の車中から眺めた景色や、停車駅の様子などを取り上げたいと思います。
MAKIKYUが乗車した「S-train」は、一応「慶全(Gyongjeon)線」の列車という扱いになるものの、列車の始発駅となっている釜山(Busan)から、同線の始発駅・三浪津(Samnanjin)までの50km弱は、KORAIL一の大幹線・京釜(Gyongbu)線を走ります。
京釜線は韓国初訪問以来、MAKIKYUは訪韓の度に何処かの区間、時には全区間を利用する路線ですので、訪韓暦2桁に達したMAKIKYUとしては、異国の鉄道ながら通い慣れた道の様にも感じる状況ですが、それでも釜山の市街地を抜けて洛東江沿いを走る車窓は、個人的にはKORAILの中でもお気に入りの一つです。
アメリカンスタイルのDLが牽引する客車列車や貨物列車、フランスTGVベースの高速列車・KTXなどと次々にすれ違う光景を見ると、釜山の街中など各地で見受けるハングル表示などと共に、福岡からは200km強、長崎県・比田勝(対馬市)からは直線距離で100kmも離れていない地ながらも、日本国内ではなく海外までやって来たと感じるものです。
慶全線の起点・三浪津は列車分岐のためにある駅といっても過言ではなく、S-trainも一旦停車したものの、通過駅だけあり運転停車のみですぐに発車となります。
慶全線における旅客流動の主流となっている京釜線大邸(Daegu)方面(更にソウルまで直通する列車や、東大邸でソウル方面列車と乗り継ぐ乗客も多数あり)からは、KORAILではありふれた存在と言える三角線で三浪津駅の西側をショートカットしている上に、釜山方面から慶全線沿線の各都市へは大回りとなり、釜山方面~慶全線方面への直通列車運行本数は1日数本と言う状況です。
おまけに三浪津始発の慶全線列車が皆無である事も災いしてか、釜山市内~慶全線沿線各都市間の旅客輸送は、市外バスなどの都市間バスに比べて劣勢ですので、一応分岐駅ながらも停車列車は少なく、実態は京釜線の一小駅に近い状況と言っても過言ではない状況で、この事も災いしてか駅構内も閑散とした状況でした。
(日本国内で例えるなら、岩手県・盛岡~宮古間の都市間バスと鉄道の都市間輸送状況に近いと言っても過言ではありません)
慶全線に入ると、以前は全線が単線非電化で如何にもローカル線という雰囲気だったものの、近年大規模な線路付け替えを伴う複線電鉄化が進められ、晋州(Jinju)まではKTXも走る様になった事から、この区間は新線に乗車している様にも錯覚し、よくここまで大規模な工事を次々と…と感心する程です。
途中停車駅の馬山(Masan)では、JR九州が「ななつ星」の運行を計画する際に、参考にしたとも言われるクルーズトレイン「ヘラン」の姿も見受けられましたが、停車時間が短い事もあり、じっくりと撮影できない状況なのは少々惜しいと感じたものでした。
晋州を過ぎると、複線電化の真新しい路線とは一変し、単線非電化で比較的きつめの曲線も多い状況となり、列車の速度も落ちるなど、如何にもローカル線と言った雰囲気に様変わりします。
交通機関としての機能性は劣るものの、趣味的な面白さと言う観点では、こちらの方に軍配が上がり、暫く走ると北川(Bukcheon)駅に停車します。
北川は同名駅がJRにも存在していますが、北川に限らず日本と漢字表記が同一の駅名が多数存在(仁川や水原、東海などが代表例)し、異国ながらも親近感を感じる辺りは、韓国の鉄道ならではと言えます。
(中華人民共和国も青島や松江など、日本と漢字表記が同一の駅名が幾つも存在しており、鉄道駅の無い都市名も含めれば、北川という地名も3カ国に存在します)
MAKIKYUの知人の中には、JR北川駅に停車する列車には幾度も乗車しているものの、同駅を通過する列車には殆ど乗車せず…という人物も居るのですが、MAKIKYUは日韓どちらの北川駅も通ったのは数回程度です。
両者は島式ホーム1面2線で上下列車が離合可能な、単線区間にある田舎の小駅と言う共通点もあります。
KORAILの北川駅は駅構内に多数のコスモスが植えられ、近年では「コスモス駅」として駅名票なども特別仕様になっているのが特徴で、4分程度と短い時間ながらも、S-trainは観光列車らしくホームの散策などができる停車時間も設けられています。
北川を出ると、宝城行のS-trainではその後順天(Suncheon)と得粮(Deungnyang)の2駅でも長めの停車時間が確保されていますが、前者は全羅(Jeolla)線と慶全線が交わるジャンクションで、全羅線を走るS-trainと相互接続を図るための停車ですので、駅自体に特別なイベント等はありません。
ただ全南地区における鉄道の要衝だけあり、駅構内では多数の車両が留置されている姿などを見る事もでき、レールファンであれば注目のポイントかと思いますし、全羅南道では大規模な部類に入る町で、周辺に観光スポットも多数抱える事から、順天で下車する乗客も多く、順天を過ぎるとS-train車内も閑散とした状況になります。
そして終点宝城の一つ手前・得粮では10分程の停車、運行本数の少ない慶全線順天以西ながらも、丁度ここで定期列車(ムグンファ号)との列車交換が設定されているのですが、同駅到着前は終点を目前にこの小駅で長時間停車は…とも感じたものでした。
得粮の駅舎内にはかつて使用していたタブレット閉塞の機器類や、今は見られないピドゥルギ(鳩)号列車をはじめとする多数の写真なども展示されており、これらを眺めていれば多少の停車時間があっても…と感じる状況でした。
駅周辺もレトロな街並みを再現した箇所が存在する様で、有名な宝城茶園へ向かうS-train利用者向け観光バスも、終点の宝城駅ではなく、一つ手前の得粮駅から出発する事も考慮すると、観光列車としては妥当な停車時間と感じたものでした。
そして得粮を出発すると、10分程で終点の宝城駅に到着、MAKIKYUは以前一度だけ光州市内→釜山市内へ向かう際に、慶全線列車で通った事はあるものの、田舎の小駅という事もあり、宝城駅を利用するのは先月が初めてでした。
宝城は茶で有名な街で、茶園へ向かうバスも発着するバスターミナルは、駅から徒歩10分程度の距離にあります。
(茶園は駅から徒歩で行ける距離ではありません)
宝城到着後はバスに乗車するため、徒歩でバスターミナルへ向かったものでしたが、このバスターミナルや乗車したバスに関しては、近日中に追って別記事で取り上げたいと思います。