先日「MAKIKYUのページ」で取り上げたKORAILの平和列車「DMZ-Train」(写真・先日公開した画像の再掲です)ですが、今日は先日の続編記事として車内の様子を取り上げたいと思います。
DMZ-Trainは先日の記事で触れた通り、CDC(都市通勤型ディーゼル動車)と呼ばれる車両を種車に、観光列車向けに改造を施した車両となっており、元々統一号→通勤列車で用いられていた車両ですので、CDCの客室設備はセミクロスシートとなっていました。
(クロスシート部分は転換式ですが、一部はボックス配置で登場した後、転換式に改められた車両も存在します)
現在も通勤列車として京元(Gyongweon)線で活躍する車両は、この設備を堅持しており、大邸地下鉄放火事件以来強化された、内装材の不燃化対策が施されずに今も活躍している数少ない車両にもなっていますが、それ以外の車両は用途変更と共に内装不燃化対策も併設されており、化粧板の交換等も行われています。
用途変更されたCDCは、ムグンファ号用に改造されたRDCと呼ばれる車両が大半を占めており、こちらの座席は他のムグンファ号と同様の回転式リクライニングシート(JR特急普通車相当)に取り替えられ、客室と客ドア付近はデッキを設けて分離されるなど、CDC時代とは随分様変わりした状況で、江原道(Gangweon-do)を走る「パダ(海)列車」用車両に改造された車両などは、それ以上に様変わりしています。
しかしながら「DMZ-Train」はソウルから片道1時間程度の都羅山(Dorasan)駅までの運行で、運行距離や乗車時間が短い事から、セミクロスシートの座席は大半が再用され、デッキなし2扉車のままであるなど、他のCDC改造車に比べると、CDC時代の面影が強く残存した車両と言えます。
とはいえ床材や座席モケットなどは種車と随分異なる鮮やかなモノに交換、一部座席へのテーブル設置や、車端の一部座席(元々は転換式クロスシート)を窓向きにも転換できるロングシート配置にするなどの変化が見受けられ、見るからにCDC改造車という雰囲気ながらも、観光列車ならではの改造点が幾つも見受けられます。
車両側面の化粧板には、様々な言語で「平和 愛 和合(peace love Harmony)」の意味を記したステッカーでコーティングされ、この中にはMAKIKYUには読めないモノが幾つも存在しています。
(余談ながらDMZ-Trainは3両編成と言う事もあり、各車両には「平和室」「사랑(愛)室」「和合室」という呼称も付けられています)
中国語表記(平和は「和平」と表記)が存在する事もあってか、日本語は漢字ではなくひらがなで「へいわ あい わごう」と記されている事や、韓国語の「愛」は漢字の読み方(애)ではなく、「愛」を示す固有語の「사랑」と表記されている辺りは、多少なりとも日韓両国の言語を解する人間が見れば、気になる所かと思います。
片道の乗車時間が1時間程度、3両と言う比較的短い編成ながらも、中間車(사랑(愛)室)の車端部には、物販コーナーが設けられていたり、走行中の前面展望を映し出すモニターが設置されていたりする点も、観光列車ならではと感じます。
物販コーナー脇には、乗車記念スタンプやポストカードも置かれており、ポストカードはメッセージを記して車内に掲げられたモノも多数見受けられたものでした。
MAKIKYUも客室乗務員(残念ながら日本語はNGでした)から掲示用メッセージを勧められ、外国人と分かると少々驚かれましたが、車内にも一枚メッセージを残したほか、日本国内の知人数名宛てとして車内設置ポストカードに車内設置スタンプを押印した後、メッセージを記して旅先からのAIR MAILとして送付したものでした。
(AIR MAILとして韓国から日本へ送付する場合、別途切手(MAKIKYUが郵便局で尋ねた時は400W、該当金額の郵票(切手)がないため、200W郵票を2枚貼る事になりました)が必要になりますが、それでも日本の国内郵便よりも割安ですので、DMZ-Train乗車の暁には、知人宛に旅先からの便りを送るのもおススメです)
先頭車乗務員室背後からの前面展望に関しては、以前MAKIKYUが一度だけ乗車した事がある東海岸を走る観光列車「パダ(海)列車」と同様に相変わらずの状況で、構造的には展望をウリにする事も容易かと思いますので、今後の改善にも期待したいものです。
また車内の広告掲出枠には、韓国語で記された詩などの掲出と共に、現在KORAILで活躍する各種車両や、過去にKORAILで活躍した車両などの写真も掲げられており、この様なモノを見ながら車内の様子を観察していると、1時間程度の乗車(都羅山行きは場所柄臨津江(Imjingang)駅での一旦下車・セキュリティチェックがあるため、所要時間は若干長くなります)はあっという間に感じたものでした。
(ちなみにこの写真の片側は、DMZ-Trainの種車にもなっているCDCが、過去に纏っていた様々な装い(現在は塗装変更で消滅)の一つです)
ちなみにこの「DMZ-Train」は設備的にCDCと大差ないにも関わらず、観光列車だけあって、一般列車では最も割高な「セマウル号特室」料金が適用となります。
DMZ(非武装地帯)へ乗り入れる列車と言う特異性を考慮しても、韓国の物価を考慮すると少々割高感が否めず、日本のJR観光列車並みと言っても過言ではありませんので、一応地元住民向けの短距離特定運賃設定なども存在するものの、運賃設定に関しては、もう少し検討の余地ありとも感じたものでした。
私も9月19日、臨津閣駅から都羅山駅往復でDMZ Trainを利用して行ってきました。
私も利用しながら感じた点は、CDC自動車の内装だけ改造した形なので、大きな枠組みでは全く変更がない特有のノイズや乗り心地の部分はそのままと非常に残念に感じました。
ただしkorailらしくない観光列車にはかなり気を使う姿には、印象が深かったのですが...やっぱりセマウル号特室料金に与えたという点は何か、国内旅行者には距離や場所に比べて何かメリットが落ちる感じでした。
DMZ-Trainは種車CDCの特徴を踏襲している部分が数多く、台車からの振動など居住性の悪さなどは相変わらずですね。
座席も転換式クロスシートはモケット交換程度で再用しており、この設備で観光列車料金(セマウル特室運賃)適用は、割高感が否めないのもご指摘通りで、RDCと同様のムグンファ号運賃程度であれば…とも感じます。
KORAILでもS-train(もう少ししたら取り上げる予定です)は所定運賃より割引された金額となっており、DMZ-Trainは場所柄故に往復利用が前提にもなりますので、往復利用時の割引など、何らかの割引運賃設定は検討余地があると思います。
韓国は観光列車を除く陸上公共交通機関の運賃が、他の物価に比べて割安に設定されており、割安な運賃に慣れている事も、尚更割高感を強くしていると思いますが、安過ぎると運営が成り立たなくなる恐れもあり、運賃体系自体の改訂をし難い環境も考慮すると、itx-セマウルのセマウル料金適用(設備的にはムグンファ号レベル)程度は、致し方ないのかもしれませんが…