先日「MAKIKYUのページ」では、いすみ鉄道の有料急行などで用いられる古参気動車・キハ28形(+キハ52形)に関して取り上げましたが、MAKIKYUが先月いすみ鉄道の上総中野~大多喜間を運行する普通列車でこの古参気動車に乗車した後は、大多喜駅で一般車両充当の普通列車に乗り換え、大原を目指したものでした。
いすみ鉄道の一般車両は、つい最近までは国鉄木原線からの転換時に導入されたレールバスが主流を占めており、MAKIKYUが過去にいすみ鉄道を何度か利用した際には、毎度この車両に乗車する状況でした。
しかしながら第3セクター開業ブームの昭和末期、各地で導入されたレールバスは、軽量で導入費用や運行経費こそ安価なものの、構造上車両寿命も短く、老朽化が著しい事もあってか、各地の第3セクター鉄道で運用離脱が相次ぎ、残存車の方が少ない状況になっています。
他鉄道に比べて長くレールバスを運用していたいすみ鉄道でも、新型の軽快気動車導入によって代替が行われており、今日いすみ鉄道の一般列車に乗車するとなれば、軽快気動車に当たる方が多い状況になっています。
新型の軽快気動車は、他の第3セクター鉄道にも導入されているメーカー標準仕様車で、昨年導入されたいすみ300形は、外観も装いを除くと、他の第3セクター鉄道で活躍している車両に類似した印象を受けます。
しかしながら今年導入されたいすみ350形は、まさかの譲渡劇で大反響を呼んだキハ52形に似せた古びた印象を受ける前面や、開閉可能な2段窓などは、機能的には新型気動車ながらも、各地の路面電車などで散見する「レトロ調車両」と言っても過言ではない雰囲気が漂っています。
いすみ鉄道では「キハ20系気動車の復刻版」と謳っている様ですが、ワンマン運転対応の関係もあり、両端に寄せられた客ドア配置などを見ると、キハ20形やキハ52形よりも、キハ20系列の中でも酷寒地向けに導入され、今日でもそのコピー車が茨城県内の某私鉄に残存する「キハ22形」を連想させられます。
前面の行先表示も今日流行のLEDではなく、敢えて字幕表示としている辺りなども、古参気動車の復刻版車両らしい所ですが、装いはいすみ鉄道ならではの黄色を基調とした華やかな装いとなっており、さすがにJR某社が最近経費削減を兼ねて実施している単色化リバイバル塗装にはなっていません。
(2両目の車両を登場させる際に、この装いで登場させるのも面白いかもしれませんが、最近この装いに改められた車両で顕著な色褪せと、既存いすみ300形を含めた単色化(黄色1色なら悪くないかもしれませんが…)は勘弁願いたいものです)
車内に足を踏み入れると、こちらは日常の通勤通学で常用される車両という事もあり、さすがにリバイバルではなく一般的な仕様で、つり革形状が少々特徴的に感じる程度、トイレなしオールロングシートという機能性重視の設備は、運行距離や乗車時間が比較的短い路線ならではと言う印象を受けます。
それでもメーカー標準仕様の造りながら、座席モケットや化粧板などは敢えて古風な雰囲気としており、比較的シンプルな造りのメーカー標準車両でも、内装次第で見栄えが随分変わる事を示す好例とも言え、起点の大原駅で接続する路線の主力車両なども、もう少しは何とかならないものか…と感じてしまいます。
列車が動き出すと、新鋭気動車だけあって乗り心地は古参車とは大きく異なり、風貌に見合わないギャップを感じさせられます。
バス用の音声合成装置などを用いたレールバスとは異なり、ワンマン車内放送では首都圏の通勤路線にでも乗車しているかと錯覚させられる高音質の車内放送(これで駅名部分だけ日本語読みする特徴的な英語放送が追加されれば完璧ですが…)が流れたのも少々意外に感じたもので、運賃表示器もLCDモニターを用いた最新式となっている辺りも、最新鋭車両ならではと感じたものです。
古参気動車導入だけでなく、新鋭の軽快気動車でも他に類を見ない独特な車両を導入する辺りは、最近のいすみ鉄道はただものではないと感じさせられますが、今後導入される軽快気動車も、この車両と同様の風貌で導入される事になるのか否かも気になる所です。