今月初めにJR東日本が発売する「週末パス」を利用した際には、利用対象路線の一つとなっているアルピコ交通(上高地線)の電車にも乗車したものでした。
長野県に縁のある方や、バス事情に詳しい方を除くと、アルピコ交通と聞いてもピンと来ないという方も居られるかと思いますが、松本電気鉄道などをはじめとする「アルピコグループ」の各社(他に川中島バス・諏訪バス)を合併し、2011年に社名を改めたもので、アルピコ交通への社名改称後も、愛称名として旧各社の名称も併用されています。
このアルピコ交通における交通事業の主体は、高速道路経由で都市間を結ぶ高速バスや上高地などへ向かう観光路線、松本市周辺を運行する生活路線などの「路線バス」ですが、他にも基幹となる会社の旧社名が「松本電気鉄道」ですので、社名の通り松本~新島々間で鉄道1路線も運行しています。
(かつては他に松本~浅間温泉間などを結ぶ路線もあったのですが、現在運行しているのは1路線のみです)
現在運行している1路線は「上高地線」という路線名が付けられていますが、この電車だけで有名な上高地まで足を運ぶ事はできず、上高地へ向かう場合は終点の新島々駅で同じアルピコ交通が運行する路線バスに乗換となります。
とはいえ松本~上高地間のアクセスとしては、路線バスと合わせて重要な役割を担っている他、松本の近郊電車としての役割も担っています。
現在では全線単線・2両編成のワンマン電車が毎時1~2本程度走る典型的な地方私鉄と言った状況ですが、1999~2000年にかけて車両入れ替えが行われ、現在に至っています。
現在運行に供される車両は3000系1形式のみ、高速バス運行で協力関係にある京王グループの京王井の頭線で用いていた車両の改造車で、同形の改造車はアルピコ交通以外にも幾つかの地方私鉄で活躍しています。
MAKIKYUはアルピコ交通の鉄道線はおろか、車両入れ替えで元京王車が走る様になってからの上高地線乗車自体が初めてと言う有様でしたが、他の京王3000系移籍各社では、全て元京王3000系改造車に乗車していますので、先日のアルピコ交通電車乗車で、ようやく京王3000系移籍各社の元京王3000系乗車を達成できたものでした。
幾つかの地方私鉄への譲渡例が存在する京王3000系の中では、改造内容は他社と類似したものが多く、電車に乗っている限りでは、アルピコ交通移籍車ならではの特徴は余り感じないものです。
とはいえ運転台がワンハンドルタイプに改められている事(残念ながら写真はありませんが…)や、ステンレス車にも関わらず車体を白く塗装している点は、京王3000系の他社移籍車には見られない特徴と言えます。
また現在2両4編成(8両)が活躍するアルピコ交通3000系は、編成による差異なども少なく、他形式の活躍もありませんので、車両バラエティという点でも地味な印象が否めないのですが、MAKIKYUが乗車した列車は「なぎさTRAIN」として前面マークの掲出や車体ラッピングが施されていました。
なぎさTRAINでは、車体ラッピングが側面最前部ドアの窓ガラスにまで及んでおり、車窓を楽しむ向きには不適ですので、この点は評価が大きく分かれるのでは…と感じたものでしたが、車両面では単調な印象が強い上高地線において、彩を与える存在としては評価できる電車と感じたものでした。
ちなみにアルピコ交通の通常運賃は主力事業の路線バスと同様に、電車も決して安いとは言い難く、運行本数も決して多いとは言えない路線ですので、沿線に所用が存在するか、上高地へ観光に出向くのでなければ、週末パスの様な乗車券がないと、松本駅で姿を見かける機会はあっても、なかなか乗車する機会のない路線と感じます。
この様な路線にふらりと乗車できるのも、週末パスの一つのメリットで、JR線で遠くへ足を運んで距離を稼ぐだけでなく、幾つもの地方私鉄に乗車できる点は、大いに評価できると感じたものでした。
上高地観光や沿線への所用などがなくても、週末パスで松本へ足を運ぶ機会がありましたら、この「なぎさTRAIN」をはじめとするアルピコ交通の上高地線電車にも乗車してみては如何でしょうか?