夏休みのイギリス旅行に備えて、吉祥寺のヨドバシカメラに旅行グッズを買いに出かけた。
ついでにDVD売り場ものぞいて、『アメリカン・グラフィティー』と『追憶』を買う。老後の楽しみに(もう「老後」かもしれないが・・・)、わが青春を飾った思い出の映画のDVDを揃えている。
『エデンの東』、『ティファニーで朝食を』、『ペーパー・ムーン』あたりから始めて、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』頃まで10本くらいが目標。『思い出の夏』、『雨に濡れた舗道』、『シベールの日曜日』などを除いて、ほぼ揃った。
その後、サン・ロードに出て、外口書店の店頭にあった、赤井三尋 『翳りゆく夏』(講談社文庫)を買う。200円。
第49回江戸川乱歩賞受賞作。
読み始めると、中が汚くて閉口する。食べこぼしでページが開かなかったりする。元の所有者が、よっぽどだらしなかったのだろう。
話の中味のほうはまずまずだった。
推理小説というよりは、マスコミ業界を描いた風俗小説と言うべきもの。
著者がニッポン放送の社員というだけあって、朝日新聞、週刊新潮か文春、フジ産経グループの三つ巴の争いを背景に読めば、何とかリアリティーも感じられる。
そして、著者がフジ系マスコミの現役社員ということを考えれば、結末も「想定の範囲内」(フジの天敵、堀江貴文の言葉だが)か・・・。
どちらかと言えば、朝日側の人間であるぼくにとっては、「まさか・・・」であったが。
この作品も、祐天寺、石神井公園、荻窪、国立(一橋)など、地理勘のある舞台が頻繁に登場した。
翔田覚『誘拐児』もそうだったが、何で誘拐ものを書く作家は、身代金受け渡し現場に横浜を選ぶのだろうか? 横浜というのはそんなに騒然とした街なのだろうか。
最後の40~50ページは蛇足に近い。
ディーン・クーンツだか、スティーブン・キングだったかのハウ・ツ・本に、結末を示したら、さっさと話を終わらせろとあった。
最後の「犯人の告白」と「3年後」は不要である。「晩夏の陽ざしに梶はどこか翳りを感じた」くらいで終わらせたほうがよかった。
どうしても後日談を語りたいのなら、犯人親子のほうが気になるところである。
会話はうまいと思った。不自然さを感じなかった。
少なくとも、G・マクドナルドよりは数段上である。
* 写真は、赤井三尋 『翳りゆく夏』(講談社文庫、2006年)の表紙カバー。