高村薫『マークスの山』に献呈の言葉が載っている「鍬本實敏氏」のことを、「この献呈の辞もフィクションの一部ではないか」などと以前に書いた。
しかしグーグルで検索して、鍬本實敏氏は実在の警視庁刑事だったことを知った。
そして、鍬本實敏『警視庁刑事--私の仕事と人生』(講談社文庫)を、アマゾンで買った。
巻末に、高村薫や、宮部みゆきの著者にまつわる思い出話が載っていた。
いろいろな推理作家の、警察の捜査活動などに関する知恵袋的存在だったようだ。
本職から観ると、高村『マークスの山』の合田などは、まだ「青くさい」刑事らしい。
彼女たちのレベルになると、講談社の編集者が彼に会わせてくれらしい。
二流の推理作家が、元刑事の手記などを参考に警察の捜査を描いても、とても及ぶべくもない。
ただし、6年間(!)にわたって彼から学んだことは、刑事という生身の人間であって、警察組織や警察官については何も調査をしたことがないという高村薫の言葉は印象的である。
* 写真は、鍬本實敏『警視庁刑事--私の仕事と人生』(講談社文庫、1996年)の表紙カバー。