今回久しぶりに豪徳寺を訪ねた目的の一つは、石川屋の写真を撮ることだった。
石川屋は肉屋だが、ぼくの昭和30年代の思い出の中では石川屋はコロッケ屋である。当時の土曜日の昼食は決まって石川屋のコロッケと食パンだった。
勉強机のような机の引き出しから衣のついたコロッケを取り出して揚げていたのだが、勉強机と食べ物というのがミスマッチで印象に残っている。
杉浦茂の“コロッケ五円の助”の時代である。
石川屋が閉店したという情報は今も豪徳寺に住んでいる友人から聞いてはいたが、“ちい散歩”で石川屋の店頭で焼き鳥を売っている風景が写っていたので、まだ大丈夫かと思っていたが、おととい行ってみると靴屋になっていた。
石川屋の右側の精肉売り場、柱にかかった大きな温度計、左手のコロッケ売り場の思い出は、ぼくの記憶の中だけのものになってしまった。
2010/7/9