1枚280円で買ったDVDで、アルフレッド・ヒチコック監督の“断崖”(1941年、アメリカ)を見た。
原作はフランシス・アイルズ「犯行以前」というのだそうだ。
社交界ではいわくつきの色男(ケイリー・グラント)が、列車の中で見そめた大金持ちの売れ残り娘(ジェーン・フォンテイン)と相思相愛となり結婚するのだが、次第に妻は夫が殺人を犯して金を得ているのではないかと疑うようになり、そして「その先はどうなるのだろう?」となってくれればよかったのだが、最初から最後まで「逆玉の輿」の夫、ケイリー・グラントがただの善良で陽気な男のままで、疑わしい感じがまったくしないのである。
いかにも妻が疑惑を抱きそうな場面では、「いかにも疑わしいでしょ!」とでも言いたげな表情でケイリー・グラントが演技するのである。
原題は“Suspicion”(疑惑)というのだが、なぜ“断崖”という邦題になったのか。「殺人」現場が断崖の上だったのかもしれないが、この断崖も何かゆったりと白波が打ち寄せるのどかな田園風景にしか見えなかった。
同じヒチコックの“ロープ”には遠く及ばない、残念ながら“汚名”程度のレベル。
でも、疑惑をもった妻を演じたジョーン・フォンテインはこの映画でアカデミー主演女優賞を受賞している。
救いは、イギリスの当時の(?)高級車が次々に登場すること。大金持ちの娘がパーティー会場から抜け出してケイリー・グラントとのデートに使う車のボンネットにはロールス・ロイスのシンボルが鎮座している(上の2枚の写真)。オールド・ファッション・カーの名前などはわからないのだが、これくらいは分かる。
その他にも、イギリス郊外の有閑マダムが乗ったオープンカー(次の写真)や、主人公夫婦が疑惑の断崖へ向かう夫婦専用のクルマも、さっきのロールス・ロイスとは別のオープンカーだった。
古いヨーロッパ車に興味がある人になら薦められる映画かもしれない。
* KEEP社“水野晴郎のDVDで観る世界名作映画 断崖”(アルフレッド・ヒチコック監督、KEEP社)
2011/1/13 記