晴れ、24度、80%
一人で旅行する時は、機内に持ち込めるトランクひとつです。おそらく女性としては、荷物が少ない方です。ところが、家人と一緒の旅行となると、トランク一つという訳にはいきません。旅先でお会いする人もあります。この20年ほど、家人とプライベートな旅行など皆無ではないかしら。二人揃って、何かのお祝いや式典に出席するための旅行ばかりです。
2007年の事でした。12月のクリスマス前後に、インドに行く事になりました。手渡された日程表には、ガンジーの親族との会談、インド副大使との昼食会、コルカタ領事主催の晩餐会、明けの日は領事主催の天皇誕生日の式典。香港からは、私たち2人ですが、日本からの6人とご一緒に、ちょっとした団体でした。インドといっても、その時期は、気温が下がり始めます。相手にも失礼にならないように、私の荷物はスーツ3着、靴3足、挙げ句に、滅多に身につけない貴金属まで持っていく事になりました。当然、家人だって、かなりの数の服を持っていきました。
香港からニューデリーには、夜半に着きます。日本からの方達より、一足先にインド入りしました。ニューデリーは初めではありません。家人がいつものように、手際よくプリペイドのタクシーを手配して向かった先は、オベロイホテルでした。ボーイさんが荷物を部屋に入れてくれ、さて、洋服を早いうちにクローゼットに。ひとつふたつ、トランクを開けていくうちに、靴を入れたトランクが見えません。家人がフロントに問い合わせます。無いとの事。さて、どこで、小型のトランクとはぐれてしまったのでしょう。
二人で旅行の時は、お互い荷物の個数を検討しています。タクシーに乗る時には、小型のトランクを見た記憶がありませんでした。どうやら、空港のコンベヤーからとり忘れてしまったようです。しかも、そのトランクに入れていたのは、靴だけではありませんでした。何と、私の貴金属一式が入っていました。その上、中国、東南アジアを旅する時、私たちは外歩きには良い時計をしません。つまり、二人の一番良い時計まで入っていました。フロントから、空港に連絡を取ってもらおうとしましたが、時間が時間です。次の朝一番に、空港に行く事にして、休む事にしました。少々の事では、すぐ寝入る私も、寝付く事が出来ません。家人が心配するだろうと、寝たふりです。家人だって、寝返りばかり打って、寝れなかったはずです。
貴金属を付けなくても、パーティーには出れます。靴はホテルのアーケードで買えばいいし。もう一度全部買ってあげるから、と何度も寝る前の家人は言ってくれました。物じゃないのです、誕生日などの折、そんなに豊かでなかった頃、贈ってもらった物は、もう取り返せませんからね。
翌朝、早々に空港に向かいました。あっちに行きなさい、こっちに行きなさいと、右往左往した挙げ句、空港裏手のインド人のばかりいる所へ、入っていく家人を見送っていました。危なそうなので、外で待たされました。30分ほどして、小型のトランクを持った家人が、入り口に姿を現しました。物もそうですが、大事な思い出が戻って来た事で、二人とも大きなため息。今では、笑い話です。
急にこんな事思い出したのは、来月、またしても2晩続きの式典に二人で出席します。という事は、またしても、貴金属の包みを携えていくわけです。でも、今度は東京だからね。何故か、安易な私です。
見出し写真は、ニューデリーのガンジーのアシュラムの建物です。