曇、26度、94%
暑いのに「熱いミルクティー」を作ります。小鍋に水を入れ紅茶の葉をたっぷり沸かしミルクをたっぷり入れて沸騰直前まで煮ます。そっとカップに濾し入れます。夏はお茶の色も薄く薫りも爽やかなセイロンの茶っ葉を、冬は深い香りのアッサムの茶っ葉を使います。
初めてインドに行ったのは20年以上前のことです。主人の会社関係のお祝いの席に夫婦連名でご招待を受けました。ニューデリーを経由して北の「チャンディガ」に向かいました。「チャンディガ」は「コルビジュエ」が街全体の構想を作った街です。田舎ながらそこかしこに作られた街の美しさがあります。
着いてすぐに相手の会社に挨拶に行きました。応接間のような広い部屋の通されました。主人は仕事の打ち合わせとかで私一人その部屋の残して別の場所へと出て行きました。いつものことです。しばらくすると下働きかと思われる若い男性がお茶とお皿に乗った物を運んで来ました。その後から会社の上役と思われる男性が4人ほど部屋に入って来ました。紹介されても名前を覚えるのですらままなりません。インドの方は長い長いお名前です。お茶は私一人だけ、一人の方が砂糖壺から角砂糖を3つ私のカップに入れてくれました。「飲んでください」というお接待でしょう。男性たちが見守る中、スプーンでかき回しました。静かな部屋の中で砂糖の「ジャリジャリ」と溶ける音が大きく響きます。ミルクティーは熱いのに膜が張っています。膜も一緒にスプーンで「ジャリジャリ」。口に入れると香りがよくその甘さとミルクの濃さでいっぺんに旅の疲れが消えました。美味しいミルクティーでした。一緒に出されたのは生のカシューナッツを揚げたものです。この組み合わせは最高のお接待だと後に知りました。塩も振っていないカシューネッツの揚げ物はナッツそのものの甘さを感じます。男性たちもカシューナッツには次々に手を伸ばして食べていました。
どんな話をしたのか覚えていません。小1時間も女は私一人でした。思い返せば「日本人の女性」など珍しかったのかもしれません。主人が部屋の戻って来た時は「やれやれ」とホッとしたのを覚えています。
夏物のスーツが汗ばむ季節でした。暑い中で飲む「熱いミルクティー」のおいしさそして疲れを取ることを知ったのはこの時です。その後幾度かインドを訪れました。寒い季節でももちろん「熱いミルクティー」です。このミルクティーにガーダモン、シナモン、ナツメグなどを入れれば「チャイ」の出来上がり。
長かった梅雨が昨日明けました。お昼過ぎには34度、おやつの時に熱くて甘い「ミルクティー」を入れました。この香り、砂糖の溶ける「ジャリジャリ」はあの日の思い出につながります。