曇、20度、90%
「ウルトラトレイルマラソン」をご存知ですか?高い山、100キロそれ以上の距離を走り抜く競技があります。中でも「モンブラン」は過酷な地理条件を備えたトレイル、そこで5回優勝した女性がイギリス人「リジー・ホーカー」です。
「リジー」のことは全く知りませんでしたが、日本語訳の彼女の本「人生と走る」という本で知りました。本の表紙の山間を走る女性の姿に目が釘付けになりました。美しい自然の中をまる飛ぶように綺麗なフォームで走っている「リジー」です。普通のマラソンでさえ忍耐と体力が必要なマラソンを空気の希薄な高山で昼夜をおかず走る、凄いことです。英語版を取り寄せました。
モンブランの競技に参加した時彼女は20代後半、現在46歳、未だ現役です。この「RUNNER」はその彼女の競技記録、そして重なる「疲労性骨折」から自分と「走る」意味について問い質した本です。彼女は「海洋学」の研究員という肩書きを持ち極地の調査にも出かけている経歴の持ち主です。
小さい頃から「走る」ことが好き、自然の中に身を置くのが好き、一人でいることに違和感を持たずに生きて来た「ランナー」の内面的な葛藤、心のバランスを保つ様を書き切っていると思います。彼女の読書歴から引用される様々なフレーズ、科学者でありながら、書く物は文学的な香りを放っています。
モンブランばかりかネパールの奥地、様々なシーンでの自然を見る目、感じる心、そして「走る」といことが彼女に意味することを問い続けています。「骨折」で自分の体と心を見つめ直す、その過程があからさまに書かれていることに強く惹かれました。
私は短い距離ですが、25年ほぼ毎朝走りに出かけます。季節季節の空気の匂い、明けやらぬ空の星や月、目にする物、体で感じるもの、そして足の裏では地球を踏みしめます。おそらくその全てが好きで私は「走り」続けています。競技に出るためではありません。走り始めたのは40歳です。香港で20年、福岡で5年、走るのは舗装された道、都会の中を走ります。香港では「太平山」の中腹を走りましたので福岡より自然の中を走りました。一緒に走った「ヤマアラシ」、蛇の出没など日常でした。
「走る者」のが胸に感じる思いが「リジー」の文章で言葉となって戻って来ます。改めて25年走ってきたことに喜びを感じます。事故、怪我、故障がなかったのは私の幸いです。65歳になった今、改めて体の故障、事故がない走りを強く意識しました。「走らない人」にもこの本は一人の人間の内面を探るものとして読み応えがあると思います。表紙の走る「リジー」の姿、美しい、どんな思い、何を五感が感じているのだろ?この本を手に取る度に何か重いものを手渡されたように思います。
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