晴、14度、82%
数ヶ月、チクチクと刺繍をしていますので本に割く時間がぐっと減っています。来月から4月にかけて次々に新刊が届く予定です。チクチクもあとひと月で終わりそう、本との時間が長くなります。
「ブリットベネット」初めの作者です。まだ30代の若い黒人女性作家です。この本が初めての本かもしれません。今年になって刊行された本なのでまだ翻訳は出ていません。「消えてしまったもう一人」とは私がつけた日本語の題です。夏ごろからこの本はニューヨークタイムズのベストセラーの1、2位にランキングされています。
1960年代、肌に色が薄い黒人だけが住むルイジアナ州の小さな町を16歳で飛び出した双子の姉妹デジレとステラ。デジレは肌の色が濃い夫との間にできた娘を連れて故郷に戻りますが、もう一人にステラは「白人」としていくる道を取りブロンドで青い目の娘を産み白人社会で生きて行きます。この双子とその娘たちがそれぞれの世代を通して黒人にとっての肌の色とそのアイデンティティの問題を描いた小説です。
単一民族の日本に住んでいると肌色からの差別をほとんど感じることなく生活しています。私が長く住んだ香港も中華系民族ですから私たちと差して変わらぬ肌色です。黒人、肌色の濃いことで問題が起きるのは海の向こうの話です。アメリカでは今年初め無防な黒人男性を警察官が殺してしまう事件が起きたことで世界中でもその反発運動が起きました。福岡でも差別反対のデモがあったと聞きます。こうした差別を肌で感じ、考える機会が私には欠けていました。そもそも、「白人」と全く肌色を持つ「黒人」がいるということすら知りませんでした。
自分が生きて来た世界の中では問題視されなかった「肌色による差別」アメリカばかりか世界中の黒人は常にその蔑視を感じているのだと思います。香港では南アジアからの出稼ぎの黒人が多くいました。「電車のシートで黒人の横に座らない香港人」と新聞記事が出た事を思い出します。福岡でも色の濃い人種の居住者が増えています。人々の受け止め方は様々です。
「肌色の違い」実際に直面する問題ではありませんが、長い歴史の間、この問題は常にどこかで燻っています。ほんの少しですが、無知な私にその事を気付かせてくれた本でした。
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