最近、二本立ての映画をみることがほとんどなくなったが、河津桜の翌日、大船で小津安二郎監督の映画を二本つづけてみた。鎌倉同人会が、小津監督、生誕110年、没後50年記念事業の第一弾として開催された映画会で、である。映画だけでなく、小津映画のプロデュースもされてきた、理事長の、山内静雄さんの記念講演会も開催された。
まず、山内さんのトークから。小津さんは還暦の誕生日に亡くなったんですよね、という話しから始まり、昨年、小津さんの”東京物語”が、英国映画協会(BFI)のSight&Sound誌の発表した「映画監督が選ぶベスト映画」の1位に選ばれたことを紹介された。封切られた頃には、松竹は、この映画は特殊で、とても世界には通用しないと思っていたそうだが、小津自身はいずれ欧米人にも分かる時代がくるさ、と言っていたそうだ。その通り、半世紀たって、プロが選ぶ、世界一の映画にまでなった。
”東京物語”は日本の片隅の家族の特殊な物語なぞではなく、”家族”、”時間”、”喪失”という普遍的なテーマについて、非常にていねいに描いた、”最も普遍的な世界的映画”という評価が得られたのだという。それみたことかと、小津さんは草場の影で喜んでいるのではないだろうか。小津フアンの一人としても、こんなうれしいことはない。なお、”評論家が選ぶベスト映画”でも、”東京物語”は3位に入っているとのこと。
さて、午前中の小津映画は、珍しく大映作品で、”浮草”。志摩半島の港町が舞台。そこに旅回りの一座がやって来る。そこには、中村鴈治朗座長がむかしの女(杉村春子)と、生ませた息子(川口浩)が住んでいる。公演中、たびたび、そこに訪ねる。それを妻の京マチ子に知られ、トラブルとなる。怒った京マチ子が、真面目な郵便局員の息子に若い女役者の若尾文子をわざと近づけさせる。そのうち、一座のやりくりがうまくいかなくなり、閉じることになる。さて、最後はどうなるか楽しみにみていたが、終盤になって河津桜の疲れが出て、いねむりしてしまった。だから、座長夫妻が撚りを戻したのか、川口浩と若尾文子が一緒になったのかどうかわからずじまいだった。
でも、小津映画らしいムードはよく出ていて十分楽しめた。
講演のあとの映画は、”秋刀魚の味”。これは、眠らずにばっちりみました(笑)。紀子三部作の原節子の役回りを、初々しい岩下志麻が演じる。その父役に、笠智衆。家事の一切を娘に頼っている。やはり妻を亡くした恩師が娘に頼り切り、嫁にいきそびれた杉村春子の姿をみて、娘の縁談を真剣に考えるようになる。クラスメートの飲み会でのエッチな話しとか、ひっかけなどの、お馴染みの野田・小津脚本のユーモア。赤をアクセントに使うなどの美術的な画面、ローアングル撮影などと、典型的小津作品だ。佐田啓二は志麻の兄役。ふとみせる表情が中井貴一にそっくりでびっくり。親子だものあたりまえ。そうそう、山内さんがはじめて小津監督と出会ったのが大船撮影所近くの”月ヶ瀬”という食堂(現在はない)。小津組がよく集まった食堂で、そこの娘さんが、佐田啓二に見初められたのだ。と、余計なことまで書いてしまったが、映画の最後は、娘を嫁に出した夜のさまよえる父の姿を追う。しみじみとしたラストシーンにみなほろり。閉幕後、拍手も。

ついでながら、”映画監督が選ぶベスト映画”トップ10。
1位:『東京物語』 小津安二郎監督
2位:『2001年宇宙の旅』 スタンリー・キューブリック監督
2位:『市民ケーン』 オーソン・ウェルズ監督
4位:『8 1/2』 フェデリコ・フェリーニ監督
5位:『タクシードライバー』 マーティン・スコセッシ監督
6位:『地獄の黙示録』 フランシス・フォード・コッポラ監督
7位:『ゴッドファーザー』 フランシス・フォード・コッポラ監督
7位:『めまい』 アルフレッド・ヒッチコック監督
9位:『鏡』 アンドレイ・タルコフスキー監督
10位:『自転車泥棒』 ヴィットリオ・デ・シーカ監督
まず、山内さんのトークから。小津さんは還暦の誕生日に亡くなったんですよね、という話しから始まり、昨年、小津さんの”東京物語”が、英国映画協会(BFI)のSight&Sound誌の発表した「映画監督が選ぶベスト映画」の1位に選ばれたことを紹介された。封切られた頃には、松竹は、この映画は特殊で、とても世界には通用しないと思っていたそうだが、小津自身はいずれ欧米人にも分かる時代がくるさ、と言っていたそうだ。その通り、半世紀たって、プロが選ぶ、世界一の映画にまでなった。
”東京物語”は日本の片隅の家族の特殊な物語なぞではなく、”家族”、”時間”、”喪失”という普遍的なテーマについて、非常にていねいに描いた、”最も普遍的な世界的映画”という評価が得られたのだという。それみたことかと、小津さんは草場の影で喜んでいるのではないだろうか。小津フアンの一人としても、こんなうれしいことはない。なお、”評論家が選ぶベスト映画”でも、”東京物語”は3位に入っているとのこと。
さて、午前中の小津映画は、珍しく大映作品で、”浮草”。志摩半島の港町が舞台。そこに旅回りの一座がやって来る。そこには、中村鴈治朗座長がむかしの女(杉村春子)と、生ませた息子(川口浩)が住んでいる。公演中、たびたび、そこに訪ねる。それを妻の京マチ子に知られ、トラブルとなる。怒った京マチ子が、真面目な郵便局員の息子に若い女役者の若尾文子をわざと近づけさせる。そのうち、一座のやりくりがうまくいかなくなり、閉じることになる。さて、最後はどうなるか楽しみにみていたが、終盤になって河津桜の疲れが出て、いねむりしてしまった。だから、座長夫妻が撚りを戻したのか、川口浩と若尾文子が一緒になったのかどうかわからずじまいだった。

講演のあとの映画は、”秋刀魚の味”。これは、眠らずにばっちりみました(笑)。紀子三部作の原節子の役回りを、初々しい岩下志麻が演じる。その父役に、笠智衆。家事の一切を娘に頼っている。やはり妻を亡くした恩師が娘に頼り切り、嫁にいきそびれた杉村春子の姿をみて、娘の縁談を真剣に考えるようになる。クラスメートの飲み会でのエッチな話しとか、ひっかけなどの、お馴染みの野田・小津脚本のユーモア。赤をアクセントに使うなどの美術的な画面、ローアングル撮影などと、典型的小津作品だ。佐田啓二は志麻の兄役。ふとみせる表情が中井貴一にそっくりでびっくり。親子だものあたりまえ。そうそう、山内さんがはじめて小津監督と出会ったのが大船撮影所近くの”月ヶ瀬”という食堂(現在はない)。小津組がよく集まった食堂で、そこの娘さんが、佐田啓二に見初められたのだ。と、余計なことまで書いてしまったが、映画の最後は、娘を嫁に出した夜のさまよえる父の姿を追う。しみじみとしたラストシーンにみなほろり。閉幕後、拍手も。

ついでながら、”映画監督が選ぶベスト映画”トップ10。
1位:『東京物語』 小津安二郎監督
2位:『2001年宇宙の旅』 スタンリー・キューブリック監督
2位:『市民ケーン』 オーソン・ウェルズ監督
4位:『8 1/2』 フェデリコ・フェリーニ監督
5位:『タクシードライバー』 マーティン・スコセッシ監督
6位:『地獄の黙示録』 フランシス・フォード・コッポラ監督
7位:『ゴッドファーザー』 フランシス・フォード・コッポラ監督
7位:『めまい』 アルフレッド・ヒッチコック監督
9位:『鏡』 アンドレイ・タルコフスキー監督
10位:『自転車泥棒』 ヴィットリオ・デ・シーカ監督