花見記事ばかりが続いて食傷気味の人のために、久しぶりに美術関係の記事をと、書きはじめている(笑)。
ラファエロ展とベーコン展と、話題の展覧会を立て続けにみたので、その感想文をと思ったが、おい、待てよ、と声がかかる。振り向くとクラコレだった。三菱一号館美術館で開催中の”奇跡のクラーク・コレクション/ルノワールとフランス絵画の傑作”展。始まって、すぐに観に行ったのだが、そういえば、まだ、感想文を書いていなかった。
この展覧会は、開催前からチラシをみて、期待していた。なぜなら、クラコレは、僕が昨秋、フィラデルフィアに行って観た、バーンズコレクションみたいだなと思ったから。アルバート・C.バーンズのコレクションは、フランス近代絵画を中心に、ルノアール181点、セザンヌ69点、マティス60点、ピカソ46点、スーティン21点、ルソー18点、モディリアニ16点、ドガ11点、ゴッホ7点、スーラ6点、マネ4点、モネ4点などから成っている。バーンズ財団美術館では、これらの作品がバーンズ氏の独特の展示法で、部屋という部屋に贅沢に飾られている。あまりの豪華さに度肝を抜かれしまったほど。
一方、クラーク・コレクションも、ルノワール22点を筆頭にピサロ7点、モネ6点、コロー5点、シスレー4点、ドガ4点、ミレー2点、ロートレック2点、マネ1点等フランス近代絵画がずらりである(全73作品中61作品が来日している)。規模では、バーンズコレクションが圧勝というところだが、蒐集内容をみると、似ているようで似ていない。ルノアール好きという共通点もあるが、クラークはバーンズが好んだ、セザンヌ、マティス、ピカソ、スーティンは見向きもしていない(笑)。
ボストン郊外にあるというクラーク美術館は、今、安藤忠雄の指揮により増改築しているそうだ。きっと、絵だけを観て、楽しむのではなく、飾られている室内の雰囲気を共に楽しむような美術館なのだろうと推測している。バーンズのような、”邸宅美術館”風の雰囲気があるのではないだろうか。
さて、クラコレ展。”邸宅美術館”の雰囲気を感じさせてくれる三菱一号館美術館での開催で、期待はますます膨らむ。”印象派への道/コローとバルビゾン派の画家たち”から始まり、コローの風景画やミレーの”羊飼いの少女、バルビゾンの平原”などが迎えてくれる。そして、”光の絵画/印象派の画家たち”のコーナー。モネの”エトルタの海岸”をはじめとする6点の作品が。はじめてみるものばかり。カイユボットはセーヌ川。ピサロは雪景色の絵。ルノワールも出てくるが、”シャトゥーの橋”の風景画など。
そして、いつのまにか階下に誘導され、ドガが現れ、メアリー・カサット、ロートレック、モリゾも楽しめる。そして、ルノアールの作品がずらり。ぼくはもともとルノアールが好きだから、どれも、それなりに良かったが、ちらしの表紙を飾った、”劇場の桟敷席”そして、”鳥と少女”はとくに良かった。
展示方法が違うので、”ミニ・バーンズ美術館のようだった”とはいえないが、ルノアールを中心に十分、楽しめた展覧会だった。
(ちらしから一括して)
近くの古書展で見つけた、1994年に国立西洋美術館で開催された”バーンズコレクション展”の図録。この展覧会は大人気で、入場者数が歴代3位だったそうだ。これも、美術館の新館建設中に来日した。ルノアールは、ふっくらした裸の女をたくさん描いていますが、バーンズはそれらをたくさん蒐集している。クラーク夫妻は”金髪の浴女”くらい。ここでも趣味の違いがみられ、おもしろい。
(西美の図録から)