気ままに

大船での気ままな生活日誌

美術評論家 鏑木清方

2015-07-26 10:21:04 | Weblog

鎌倉の鏑木清方記念館で”清方の作品から学ぶ、日本画の描き方”展が開催されている。展示室内に、このテーマに沿った下絵と並べた本作品など、名品が並べられていて、それはそれで、いつもながら楽しく鑑賞させてもらった。ただ、今回は、主展示ではなく、ロビーの副展示ともいうべき作品にも心を惹かれた。

それは、清方の美術評論文である。清方が文筆家であることは良く知られているが、婦人公論の美術欄を担当して、評論を書いていたことは知らなかった。それらの雑誌が、そのページを開いた形でガラスケースの中に展示されている。たとえば、”美人画解説/小林古径作・婦人図”(19巻3号)、勝川春章作・ほととぎす(19巻4号)、土田麦僊作・林泉舞妓(19巻2号)、鳥居清長作・隅田川(19巻8号)である。

昭和9年の雑誌だから活字も小さく、おまけにガラス越しだからメモするのに苦労したが、ひとつだけ、勝川春章論だけ紹介しておこう。この絵は、朱塗りの行燈の下で、栄花物語をひもときながら、ほととぎすの声を聞いている、ふたりの女を描いている。この絵もそうだが、春章の描く女は豊かな気品に溢れている。浮世絵畑で育っているが、英泉、国貞、歌麿と同じ浮世絵師と呼ぶのはどうか、彼らとは違い過ぎている。たとえば、応挙を浮世絵師と呼ぶようなものである。今日の研究者、学者はその辺の理解がない。こう言った主旨の論文である。ちょうどこの絵の、清方による模写が展示室の方にある。”婦女風俗十二か月の内四月 杜鵑”。戻って、この絵をみると、たしかに、そういわれれば、という雰囲気である。その横には、歌麿の三作品、鷺娘、道成寺、三番曳の摸写もある。清方がこの絵師たちに私淑していたことがよくわかる。

ほかの美術評論も、いずれも作者の良さをほめたたえたものばかりで、批判めいたものは一つもない。ときおり、自分の物差しが一番だと誤解して、切りまくる評論家をみかけるが、みっともない。物差しなど無数にあるのだから。

評論だけではなく、”画家には特殊な天分が必要”(婦人世界)といった文章もある。どこか毛色が変わっている、異色がある、個性があるというか、つまり、なんらかの特長をもつ、こういう人が真面目に勉強すれば見込みがある、と書かれ、実際どういう勉強をすればいいかというと、それは次ページになっていて読めなかった(笑)。

ということで、いろいろ楽しめた展覧会でしたよ。

桜もみじ(下絵とともに)

にごり絵、風流線、一葉女史の墓

ここの入場券をもっていくと、そごう美術館の国芳展(8月1日~30日)が200円割引してくれるとのことで、とってある(汗)。

 

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フィラデルフィア美術館浮世絵名品展 春信一番/写楽二番

2015-07-26 08:18:26 | Weblog

三井記念美術館で開催されている”春信一番/写楽二番”展の前期をみてきた。そそとした春信美人は若い時から好感をもっていたし、写楽の似顔絵大首絵も、機会あるたびにみている。それに、今回の展覧会はフィラデルフィア美術館からのものだという。これもひき付けられた理由。2012年晩秋に、この美術館を訪れている。そして、ぼくの書斎の壁には同館所蔵のルノアールの”大浴女”の複製が貼られている。ちなみに、この絵は、その、また5年ほど前の都美で開催された”フィラデルフィア美術館展”のちらしの表を飾っていた。

当時のブログ記事をみると、館内に再現されている日本茶室のことは書いてあるが、浮世絵をはじめとする日本美術のことは何も触れていない、たぶん、限られた時間のなかで、みていなかったのだと思う。そのときの借りを返そうと(笑)、じっくりみさせてもらった。

何と、4,000点以上もの浮世絵を所蔵しているとのこと。その、よりすぐりが前後期合せて、150点も集結している。とくに、春信が30点も!これが、前期15点、ずらりと並ぶ。トーハクでもときどき並ぶけど、まあ、めったにないこと。

遠くからでも紅色が鮮やかで、はやくこう、はやくこう、と呼んでるようなので、この展示室で一番にみた”やつし芦葉達磨”。芦の葉の乗ってかなたをみている春信美人。禅宗の初祖・達磨が一枚の芦の葉に乗って 揚子江を渡り、魏に入ったという説話をもとにした図柄。これが一番印象に残った。あとはどこかでみたような風景の中の春信美人を楽しんだ。風俗四季哥仙 五月雨、伊勢物語 武蔵野とか。さて、お仙ちゃんはどこ?と探したが、残念ながら、来日していなかった。

春信一番のあとは写楽二番。第二章錦絵の誕生:春信の浮世絵革命 展示室6で大首絵が前後期10点。前期は6点だけ。お馴染みのものばかりだが、似顔絵の好きなぼくは、喜んでみる。三代目大谷鬼次の江戸兵衛は全期展示。後期でも逢えるぞな。

そして、北斎、広重、歌麿、清長、国芳とスター作品もあって、上方の、ありのままに描く、流光斎如圭らの似顔絵もあったり、楽しい浮世絵展であった。

春信一番!やつし芦葉達磨 お子さん、マネはしてはいけません。池に沈みます。

昨日の夕焼けみたいな風情!

清長も北斎も歌麿あるでよ

写楽二番!

よかったな、フィラデルフィア美術館!1876年、アメリカ建国百周年の際に建設されたメモリアルホールがはじまり。映画”ロッキー”で、主人公ロッキー・バルボアがトレーニングのために、この美術館の正面階段をつかった。現在、「ロッキー・ステップ」と呼ばれている

ぼくの書斎に飾ってある、同美術館所蔵のルノアールの”大浴女”。春信美人とは対極!(汗)。どちらもよか。

ルノアール3番!


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