気ままに

大船での気ままな生活日誌

開高健さんとロマネコンティ

2006-10-06 09:56:11 | Weblog
時々、茅ヶ崎の方にも出没しています。駅から図書館に向かう道は面白いです。居酒屋やスナックが続く飲み屋街なのです。よく遊び、よく学べと言うことですね、茅ヶ崎はえらいです。夕方、図書館から帰る頃に赤提灯が、灯っていたりすると、つい、のれんをくぐりたくなります。でも、ワイフの恐い顔を思い浮かべて、ぐっと、がまんします。

その道すがらに「大衆焼肉」と、大きな黄色い看板を掲げたジンギスカン料理の、小さな古びた感じのお店があります。ここが、茅ヶ崎にお住まいだった故開高健さんの行きつけの飲み屋さんです。お店の掲示板に雑誌のページのコピーが貼ってあり、それをみて、初めて開高さんとお店の関係を知りました。

その雑誌は、サライです、2005年9号の、開高健さんの特集号でした。・・・サライの特集では、「いざ鎌倉」とか 「京都へ」とかはありますが、一作家の特集なんかはめったにありません、異例の特集です・・・その中に、このお店と開高さんの関わりが述べられているのです。さらに、私はこの件の当事者の菊谷匡裕氏の著作「開高健が喰った」をもっています。ここから、歩いて25分ぐらいのところにある開高健記念館(旧居)を訪れたときに手にいれたもので、その中に詳しい紹介文が載っています。

開高さんが茅ヶ崎に引っ越してきてから数年後のことです。菊池さんが訪れると、今日はちょっといい酒、飲ませよか。見てびっくりです、何と、超最高級ワインのロマネコンティが2本とシャトーディケムです。こんな凄いの飲ませてもらえるんですか、ここでやりますか、と言うと、いや、駅前のジンギスカン屋でやろ。

注文したモツを鉄板で焼きながら、開高さんはビール会社の名前入りのコップにロマネコンティを並々とついで、ぐいぐい飲んだのです。・・・うまい!よう味わえや。・・・・・こんな飲み方は、世界の銘酒に対する冒涜だという人がいましたが、開高さんはこう言い返します。・・・不作法ちゅう作法だってあらあな・・・・

私は、開高さんが貴婦人ロマネコンティに向かってやさしく、こう言ったのではないかと思っています。・・・なあ、お前、いつも、気位ばかり高い紳士とつきあっていて、かわいそうだな、今日は鎌倉山ローストビーフあたりの紳士に会わせようかと思ったが止めたよ、平凡な奴だけど、俺の好きなモツ焼きとつきあってくれ、たまにはいいぞ(大阪弁に訳していませんが)・・・

開高さんは、よく食べ、よく飲み、よく釣りをして、遊びまくりました。もちろん大きな仕事もたくさん残して、58才の若さで、風のように去っていきました。

よく遊び、よく学べとは、俺のことやろ、わっはっはっ・・・開高さんの、あの独特の大きな声が、ジンギスカン屋さんの中から聞こえて来そうな、帰り道でした。


・・・・・・・・・・・・
ちょっと参考までに

「サライ」2005年9号 (サライホームページよりコピー)

【大型特集】ひとつの言葉と、一匹の魚に、夢を見続けた男
      開高 健

【第1部】作家の生涯
     悠々として急げ

【第2部】釣りと旅
     永遠に、幸せでいたかったら釣りを覚えなさい

【第3部】食す、飲む、纏う、和む
     人の一生のうちで 
    「食」の右にでられるものは
    「眠」のほかに何もない



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