京都第一日目の展覧会の旅は、京博、堂本印象館と”琳派”が続いたが、三番目に訪れた三条高倉にある京都文化博物館は違う。光悦対宗達の競演に代わり、こちらはレオナルドとミケランジェロの幻の競演だ。この展覧会”レオナルド・ダ・ヴィンチと「アンギアーリの戦い」展”は、八王子の富士美術館でこの夏、行われていたがうっかり見逃していた。それが、旅先で出会えて、幸運だった。レオナルド関連展だけは、はずしたくなかったのだ。
この展覧会は、とくにレオナルド真筆の名画がきているわけではない。フィレンツェの、シニョリーア宮殿(現パラッツォ・ヴェッキオ)の大広間の壁に描かれた壁画(現在は、別の壁画が重ねて描かれ、幻の壁画といわれている)の一部に違いないという戦争場面の板絵がきているのである。そして、レオナルド作品の横(向かいという説もある)にあった、ミケランジェロの壁画の下絵(摸写)も来日しているのである。
あのパラッツォ・ヴェッキオの中で、ルネッサンスの両雄が同じ場所で同じ時期に壁画を描いていたなんて、想像するだけでも楽しいではないか。どんな顔をして、お互いにどんな気持ちで壁に向かっていたのか。
まず、アンギアーリの戦いから。
作者不詳(レオナルド・ダ・ヴィンチに基づく)
《タヴォラ・ドーリア》(《アンギアーリの戦い》の軍旗争奪場面)
16世紀前半 油彩とテンペラ/板85.5×115.5 cm
ウフィツィ美術館(2012年、東京富士美術館より寄贈)

対するカッシナの戦い。
アリストーティレ・ダ・サンガッロ(本名バスティアーノ・ダ・サンガッロ)
《カッシナの戦い》(ミケランジェロの下絵による模写)
1542年 油彩/板 78.7×129 cm
ホウカム・ホール、レスター伯爵コレクション

ミケランジェロはすでにダビデ像を完成したあと、これに向かっていた。また、レオナルドはこのあと、以下のような聖女を描くことになる。この展覧会では、ウフィツィ美術館所蔵のレオナルドの摸写作品が展示されている。戦争もののあと、この絵があり、ほっとする。レダと白鳥(1500年頃の摸写、実物は不明となっている)と聖アンナと聖母子(実物はルーブル博物館で所蔵)

ウィキメディアによると、レオナルドの絵画作品(今回のように現存しないものも含め)は以下のようになる。
†メドゥーサ、受胎告知**、キリストの洗礼、 カーネーションの聖母、ジネーヴラ・デ・ベンチの肖像、ブノアの聖母、東方三博士の礼拝、荒野の聖ヒエロニムス、**リッタの聖母、岩窟の聖母(ルーヴル美術館展示版)、音楽家の肖像、白貂を抱く貴婦人、**岩窟の聖母(ナショナル・ギャラリー展示版)、最後の晩餐、*ミラノの貴婦人の肖像、*救世主、**糸車の聖母(2つのバージョン)、聖アンナと聖母子、モナ・リザ、†アンギアーリの戦い、ほつれ髪の女性、†レダと白鳥、洗礼者聖ヨハネ
(記号: *本人のと伝わる作品 - **共作 - †現存しない)
ぼくは、ロンドンナショナルギャラリーとルーブル博物館で”それぞれ、レオナルドダビンチ展”を見る機会があったので、観賞作品数は、十数点には、なっている。全制覇を目指してガンバロー!
ここの常設展もみて、そのあと、ぼくは、四条河原町の方へ歩き始めた。行き先は、午前中に行こうかと思っていた京都市学校歴史博物館。”近代京都画壇の名品にみる日本画/余白の美”展を開催していたので。それに館長が上村淳之さんというから松園さんの旧宅だったのかな、なんて思いながら探したが、見つからなかった。もう、5時近くになったんで、深入りはせず、錦市場や新京極辺りをぶらついた。
途中で、お腹もすいてきたので、居酒屋の有名店”酔心”に入った。いくつか肴を頼み、酒は横山大観も愛した広島銘酒”酔心”をいただく。京都で広島のお酒では、失礼と、〆はマッサンの、山崎のウイスキーにした。

いい機嫌で、京都駅に戻ったら、まだ、伊勢丹ビルの美術館”えき”が開いてるという。ここは翌日の予定だったが、長いエスカレーターを登って行ったのだった。(つづく)