邦人刺殺
ブラカン州サンミゲル町で邦人男性(60)が刺され死亡。3人逮捕、2人逃走中
ルソン地方ブラカン州サンミゲル町の幹線道で、4月28日午後7時半ごろ、藤永勝重さん(60)=本籍・福岡県=が男性5人組に襲われ、刺殺 された。国家警察サンミゲル署は藤永さんが乗っていた車の運転手(48)が仕組んだ犯行とみて、この運転手ら3人を強盗殺人の疑いで逮捕し30日、同州マロロス市検察局に送検した。残る共犯2人は逃走中で警察が行方を追っている。
同署の調べでは、藤永さんは28日午後1時半すぎ、首都圏パサイ市のマニラ空港に到着、運転手ら2人と共に乗用車で、ルソン地方ヌエバエシハ 州カバナトゥアン市に住む交際相手のフィリピン人女性(32)宅に向かっていた。ところが運転手は午後7時半ごろ、サンミゲル町サクダランで、徐々にス ピードを落とし、幹線道ダアンマハリカハイウエーの路肩に停車。その直後、トライシクル(サイドカー付きオートバイ)に乗った4人組が車内に乗り込み、藤永さんの荷物を強奪しようとした。しかし、藤永さんが激しく抵抗したため、刃物で刺し逃走したとみられる。
藤永さんは自分の荷物を持ち、車外に逃げ出し、周囲に助けを求めたが、車から約100メートル離れた地点で、うつむけに倒れ、死亡していた。 藤永さんの遺体には、胸、あご、首にアイスピックとナイフによる刺し傷があった。また両腕には抵抗した際にできる防御痕が残っていた。荷物には現金27万 3千円、1万8千ペソ、ノートパソコン、時計などが入っていたが、犯行グループは荷物を置き去りにして逃走した。
周辺住民や町議会関係者からの通報を受けた警察は現場に急行、その場にいた運転手の身柄を拘束。運転手は取り調べに対し、義理の弟(33)と共謀し、犯行に及んだことを自供したため、29日午後3時ごろ、警察は犯行現場付近に住む義理の弟とトライシクルの運転役の男性(21)を逮捕した。
警察は、藤永さんと交際していた比人女性に対する運転手の恨みが犯行動機とみて調べている。運転手は、親族の葬式に参加するため欠勤した際、大幅に減給されるなど、比人女性に対して不満を抱いていたという。
一方、運転手は、マニラ新聞の取材に対し、比人女性の指示で犯行に及んだと主張している。運転手によると、比人女性は藤永さん以外にも、複数の男性と交際しており、2人は過去に女性の浮気が原因でけんかをしたこともあったという。
運転手の供述について、警察は自身の生活を支える藤永さんを比人女性が殺害する可能性は薄いとみている。担当捜査官は「犯人は、金品を奪うだけの計画だったが、藤永さんから思わぬ抵抗を受け、殺害してしまった。素人丸出しの犯行だ」と強調した。
藤永さんは14年前に比人女性に出会い、収入の少ない女性の家族を仕送りなどで支えてきた。藤永さんと比人女性は6月に結婚する予定だったという。
犯行現場はまっすぐな片側1車線の幹線道で、日中は車の通りが絶えない。沿道には数百メートル毎に民家が点在しているが外灯はない。運転手が停車させた路肩は、ちょうど民家がない区間だった。(鈴木貫太郎)