[インタビュー]米日は冷戦的思考をやめ歴史を直視すべき
趙啓正・中国人民外交学会顧問 =北京/ソン・ヨンチョル特派員//ハンギョレ新聞社
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18日に開幕する「ハンギョレ・釜山(プサン)国際シンポジウム」に基調演説者として参加する趙啓正・中国人民外交学会顧問(76)は、ハンギョレとの インタビューで「過度な米日同盟の強化と日本の右傾化が韓中日の北東アジア3国協力の枠組みに脅威となっている」とし「米日は冷戦的思考とゼロサムゲーム 構図から抜け出し歴史を直視すべき」と話した。韓中日はこの土台の上で交流を拡大することにより東アジアの平和構図を作ることができると強調した。
趙啓正顧問は今月10日、ハンギョレとの書面インタビューで「韓中日は東アジア地域で最も規模が大きく相互依存関係が強い3大経済体制であり、3国の協 力とアジア太平洋地域の平和発展はすでに時代の趨勢だ」として「3国は新しい経済協力体制を構築し、共同で平和と繁栄を追求しなければならない」と話し た。
しかし、趙啓正顧問は「過度な米日同盟強化と日本の右傾化は3国協力の枠組みを脅かしている」として「米国と日本は自分たちの既存の主導権が縮小される ことを憂慮して、中国を牽制するために同盟を強化している」と指摘した。 彼は「米日が冷戦的思考とゼロサムゲームの構図から脱却し歴史を直視しなければならない。これを通じてこそ3国が交流拡大により東アジアの平和構図を作る ことができる」と強調した。
趙啓正顧問は南シナ海の軋轢と関連して「航行の自由を守るという米国の主張には説得力がない」として「これは米国が自分たちが持っている既存の海洋覇権 を維持しようとする意図が込められたものだ」と話した。 しかし、彼は「米中間に相互偶発的軍事衝突を防止するための安全準則に合意しただけに衝突の可能性は高くない」と見た。
趙啓正顧問は北東アジアの平和発展のために韓国が北朝鮮の国際経済体制への編入を助けなければならないと主張した。「北東アジアの平和的発展において韓国が占める位置は大変に重要だ」として「韓国が先に南北関係で実のある協力を推進しなければならない」と話した。
北東アジア平和のために韓国の役割が重要
南北関係で先に実のある協力推進
米日は冷戦思考から脱却し歴史直視を
米の「航行の自由」主張には説得力ない
新防衛ガイドラインは南シナ海の緊張を高める
米、中国を封じ込める口実に北朝鮮を利用
6カ国協議再開が北朝鮮核問題を解く最善策
中台の歴史的握手から南北も意味を発見
■米日同盟
-趙啓正顧問は韓中日3国の友好関係が重要だと強調した。しかし最近、米日同盟が憂慮されるほど厚くなった。その理由は何だと考えるか?
「冷戦が終わった後、ソ連が米国と日本に投じた危機感は消えた。当時、米国と日本の間は経済、貿易摩擦が多かった。 米日同盟は一時不安定な状態だった。 だが、米国は冷戦後に米日同盟に依然として重大な戦略的価値があると判断して強化を図っている。 今年4月、米日は新米日防衛協力ガイドラインを発表した。 このガイドラインは日本が対外的に武力を行使する範囲と条件を拡大し、米日同盟における日本の地位を高めた。 特に米国は中国の全体的な実力が上昇したために自分たちの世界覇権に影響を及ぶことを心配している。 日本もやはり東アジアの主導権が中国に移ることを願わない。 米日は同盟強化を通じて中国の崛起を抑制しようとしている」
-一部では米日同盟の強化が中国を包囲するための米国のアジア再均衡戦略に重点を置いたものと見ているが。
「米日の新防衛ガイドラインは、釣魚島(日本名・尖閣列島)を安保の範囲に入れた。日本の自衛隊が南シナ海を含む全世界に出て行くことを鼓舞した。 これはアジア太平洋地域の地政学的秩序に衝撃を与えかねない。 地域の平和と安定的発展にとって絶対に利益にならない。 オバマ米政府はアジア再均衡戦略を前面に出して外交経済貿易軍事分野で中国を抑制し、同地域での自身の主導権を維持しようとしている。 日本の戦略家たちは日本が経済軍事政治の多方面で中国を警戒すべきだと見ている。 安倍晋三・日本首相は政権を取った後に靖国神社を参拝し、歴史問題で逆行している。いわゆる自分たちの“価値外交”を強化した。 経済分野でも米国は日本を環太平洋経済パートナーシップ協定(TPP)に引き込んで経済と貿易の面で中国に対する優位を維持しようとしている」
-今後の北東アジア情勢はどのように進むか?
「米日の軍事同盟強化は全体的に東アジア情勢を緊張させる。 その重要な証拠が、米日の新防衛ガイドラインと日本が通過させた新安保法制だ。 中国と米国、中国と日本の軍艦と飛行機が東・南シナ海で遭遇し接触することが一層頻繁になるだろう。 だが現在、世界とアジア太平洋地域で平和と発展は時代的な趨勢だ。 過去にも地域の経済貿易協力と人文交流は中断されたことがない。 特に11月初めに3年余にわたり中断されていた韓中日3国指導者間首脳会談が韓国で開かれた。 3国首脳は「北東アジアの平和と協力に関する共同宣言」を発表し、北東アジアの平和と協力に力を注ぎ経済社会協力を拡大することにした。 また、3国共同の繁栄を成し遂げて国民の信頼と理解を深め、地域と国際社会の平和と繁栄を推進することにした。 3国首脳会議の再開は全面的な協力の回復を象徴している。 アジア太平洋地域の平和は各国の共同利益に符合する。
趙啓正・中国人民外交学会顧問 =北京/ソン・ヨンチョル特派員//ハンギョレ新聞社
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■北東アジアの過去問題
-日本は米日同盟の強化に非常に積極的だ。 安倍首相の8・14談話は村山談話の後退と見ることができる。 日本の新安保法制も同じく日本が戦後維持してきた平和路線から抜け出すことを意味する。 日本の態度は今後、東アジアでどのような変化を招くか?
「安倍首相が8・14談話を発表した後、中国と韓国から批判が強かった。 談話の中に侵略と植民統治に対する反省謝罪などの表現はあるが、過去の村山談話に比べれば重大な問題で明確に後退した。 村山談話は日本の植民統治と侵略戦争がアジア周辺国に莫大な被害を与えたとし、これについて謝ると明確に述べた。 しかし、安倍談話は戦争の性質について明確な記述をせず謝罪もしなかった。 安倍談話は公然と日露戦争を美化して「アジアとアフリカの人民に勇気を与えた」と述べた。 しかし、実際には日本は露日戦争後の1910年に朝鮮半島を併呑し植民統治を始めた。 慰安婦問題に関しても安倍首相は強制徴集やそれに伴う被害を認めず謝罪もしなかった。
日本の参議院は9月19日に安保関連法案を通過させた。これは戦後日本の政治・軍事・安保戦略の重大な転換だ。 今後日本は外国によって侵犯されなくとも集団自衛権の名目で他国に武力を行使できる。 日本が戦後遵守してきた“専守防衛”という方針に根本的な変化が現れたことを意味する。 日本の平和憲法の核心、すなわち「交戦権は認めない」と規定した憲法第9条を有名無実化するもので、東アジア地域の国際構図にとって新しい変化要因になる だろう。
東アジアで中国と韓国の協力は極めて順調だ。 その反面、中国と日本、韓国と日本の協力は上手く行っていない。 根本的な原因は日本の歴史に対する態度だ。 安倍首相が政権を取った後の一連の言動と行動は歴史問題に逆行し中韓両国国民の強力な反発を招いた。 安倍首相は中国と韓国の反対を無視して靖国神社に参拝したし、「侵略の定義は学界的にも国際的にも定まっていない」と言った。 我々は安倍首相が重い歴史的負担を減らし、歴史を直視して未来へ向かうことを願う。このようにしてこそ中日、韓日協力に良い基礎ができる」
■南シナ海緊張
-最近、南シナ海で中国の人工島建設を巡って米日の攻勢が激しい。 米国の意図は何であり、中国はどう対応するのか?
「米国は南シナ海の航行自由権を守るためのものだと説明しているが説得力がない。南シナ海の航行は島と海洋領有権を巡る葛藤の影響を受けたことがない。 南シナ海の島は昔から中国の領土だった。 中国には自身の正当で合理的な領土主権と海洋権益を守る責任がある。 中国が南シナ海の島に建設を行ったことは特定国家をねらったものではない。 米国は“航行の自由”を口実として南シナ海の島の主権と海洋権益を巡る軋轢に割り込んでいる。 これは米国の南シナ海海洋覇権を維持しようとすることだ。 米国の軍艦と航空機は中国の強力な反対にもかかわらず定期的に中国の排他的経済水域(EEZ)に進入して偵察を実施した。 中国は終始平和発展の道を進むだろう。 昨年、米中は「重大な軍事行動は互いに通知し合い信頼を構築する」として、海洋と空中で遭遇する場合に備える安全行為準則に合意した。 双方がこの精神と準則を遵守するならば突発事態は避けられる」
-今後、南シナ海での軋轢はどのように展開するか?
「トウ小平は『主権は我々の手にある。争いを押し退け共同で開発しよう』と話したことがある。 昨年、中国は南シナ海問題を該当当事国どうしの交渉を通じて解決しようと話した。 このようにして解決すれば南シナ海は平和、友情、協力の海になるだろう。 南シナ海における航行と飛行の自由には何の問題もなく、将来にも問題がないだろう。 個人的には関係国家が国際社会で南シナ海問題を大々的に拡大させることを願わない。 また、当事国でない他国が南シナ海問題に干渉することに反対する。 これは問題の解決に何の役にも立たず、一層問題を複雑にしかねない」
-韓国が東アジア平和のためにすべき事は?
「北東アジアの国際構図は主に6カ国(韓国、北朝鮮、中国、米国、ロシア、日本)と関連がある。 韓国の地位は重要だ。 韓国は米国の同盟国であるだけでなく、朝鮮半島問題の直接当事者だ。 韓国は二つのことをすべきだと見る。 第一に、南北間で実のある協力を推進しなければならない。 関係を安定化させ和解を推進し信頼を構築しなければならない。 第二に、北朝鮮が国際金融、経済貿易体制に進入することを助けなければならないだろう。 朝鮮半島の経済発展は情勢を安定させ平和統一を成し遂げる上でとても重要だ。 それ以外に韓国は自身の特殊な地位を利用して米国と日本に冷戦的思考方式を捨てるよう薦め、東アジアの平和に利益になるようにしなければならない」
■対北朝鮮政策
-米国の対北朝鮮政策についてどのような展望を持っているか?
「米国は東アジアで自身の戦略的存在感を維持するためには北朝鮮のような敵が必要だ。 米国は対北朝鮮抑制政策を維持するだろう」
-米国がアジア再均衡政策次元で中国を牽制し封じ込めるために北朝鮮問題を利用しているという指摘があるが。
「米国のアジア再均衡政策の目的は、中国を封鎖、牽制しようとすることだ。米国は北朝鮮を口実として利用し、中国に対する直接的挑発は避けている。 米国は中国に対して抑制政策を展開する一方で、接触は維持する政策をとっている。 米国が中国に対してとっている“抑制、接触”政策を変えることを願う。 このような行為は互いに協力し利益を追求する世界経済発展の流れと符合しない」
-南北関係改善において中国と韓国はどのようにすべきと見るか?
「北朝鮮問題で最も核心的で緊迫したものは核の問題だ。 圧力を加えたところで解決はしない。 6カ国協議は核問題を解く最も良い枠組みだ。 中国と韓国は6カ国協議体制を維持し再開できるようにしなければならない。 韓国は南北関係の当時国であり、双方が対話を通じて和解することが必要だ。 7日に中国と台湾の指導者がシンガポールで歴史的な握手をした。 南北もこの握手から重大な意味を発見したと信じる」
※趙啓正・中国人民外交学会顧問:実務と理論を兼ね備えた国際情勢の専門家。 中国科学技術大学(核物理学専攻)を卒業した理工系出身の彼は、その後20年余り国務院機械工業部の工業と核関連部署管理者として仕事をした。 趙啓正顧問は1984年から15年間、中国改革開放の象徴である上海市で浦東管理委員会主任と副市長を務めた。 特に浦東地区開発に核心的役割を果たし「浦東趙」というニックネームも得た。 以後、中央政界へ席を移し国務院新聞弁公室主任を務め、中国全国人民代表大会(全人大・韓国の国会に当たる)の政策諮問機構である全国人民政治協商会議常 務委員と長官級役職である外事委員会主任を歴任した。 16期共産党中央委員を務めた。 現在は人民大新聞学部長も受け持っている。『中国はどのように世界と疎通するのか-グローバル時代中国の公共外交』、『公共外交と文化交流』などの著書が ある。
北京/ソン・ヨンチョル特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )