みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

一票の格差 早急に国会は抜本策を/最高裁判決は「合憲」だが「不平等」「格差縮小」を指摘

2009-10-01 14:48:13 | ほん/新聞/ニュース
昨日、2007年7月の「参院選挙区選挙での定数格差は違憲」として、
首都圏の有権者が提訴して争っていた事件の最高裁判決が出た。

判決は「合憲」だけど、立法府である国会に法改正を求める内容のもの。

司法が立法に、下駄を預けた、というか、責任を押し付けた形。
15人の裁判官のうち、5人が「違憲」としたそうだから、
憲法判断としては、「黒とまではいえないが、がぎりなく黒に近いグレー」、というものだろう。

さいしょにNHKで流れてから、PCの前で仕事をしながら注意していたら、
通信社が速報を出してきて、大手新聞各社も続いた。

朝までにいちばん詳しかったのが、毎日web。
ということで、朝刊5紙を読み比べると、やはり毎日新聞がいちばん詳しい。

参院選「1票の格差」訴訟:「選挙制度見直し必要」 最高裁、初の指摘
毎日新聞 2009年10月1日

 ◇07年、格差4・86倍 定数配分「合憲」
 選挙区間の「1票の格差」が最大4・86倍だった07年7月の参院選は、法の下の平等を定めた憲法に違反するとして、東京と神奈川の弁護士が各都県選管を相手に選挙無効を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允(ひろのぶ)長官)は30日、定数配分規定を合憲と判断し、原告側の上告を棄却した。その上で「定数振り替えだけでは格差の大幅な縮小は困難で、選挙制度の仕組み自体の見直しが必要。国会の速やかな検討が望まれる」と指摘した。参院の選挙制度見直しの必要性に言及したのは初めて。(11面に判決要旨、社会面に関連記事)
 裁判官15人のうち竹崎裁判長ら10人の多数意見。中川了滋裁判官ら5人は「違憲」と反対意見を述べた。
 判決は、「投票価値に著しい不平等状態が生じ、相当期間継続しているのに是正しないことが国会の裁量権の限界を超える場合は違憲」とする従来の枠組みを踏襲。その上で、(1)06年の公職選挙法改正による「4増4減」の定数是正で、最大格差5・13倍の04年選挙より格差は縮小(2)国会が参院改革協議会を設置(3)選挙制度の大きな変更は時間がかかり、07年選挙までに見直すことは極めて困難--として、「定数配分を更に改正しなかったことが、国会の裁量権の限界を超えたとは言えない」と結論付けた。
 一方、4・86倍の数字そのものについて合憲か違憲か明言しなかったが「憲法が要請する投票価値の平等の観点からは、大きな不平等がある」と指摘。「選挙制度見直しには参院の在り方も踏まえた高度に政治的な判断が必要で、課題も多く時間を要する」としながら、国会に投票価値の平等の重要性を踏まえた早急な検討を促した。
 金築誠志裁判官は補足意見で「目安とすべき2倍の格差をはるかに超え、著しい不平等」と違憲状態を指摘。反対意見の5人は「投票価値の平等を大きく損なう」などとして違憲と指摘したが、公益性を考慮し選挙は有効とした。近藤崇晴、宮川光治両裁判官は抜本的な見直しがなければ、将来は選挙無効の判断があり得ることも指摘した。【銭場裕司】

 ◇真摯に受け止めて--原告団の話
 選挙制度の仕組みを見直す必要があるとはっきり述べた画期的な判決。国会は、真摯(しんし)に受け止めてもらいたい。
==============
 ◆最高裁判決骨子◆
 ▽07年7月の参院選当時、選挙区選出議員の定数配分規定は憲法14条1項等に違反しない。
 ▽投票価値の平等の観点からは、この定数配分規定の下でも、なお大きな不平等がある状態。
 ▽国会において速やかに、投票価値の平等の重要性を十分に踏まえ、適切な検討が望まれる。
==============
 ■15裁判官の意見■
                 今回 06年
◎竹崎博允 (裁判官)   ○   -
 藤田宙靖 (学者)     ○   ○
 甲斐中辰夫(検察官)   ○   ○
 今井功  (裁判官)    ○   ○
 中川了滋 (弁護士)   ×   ×
 堀籠幸男 (裁判官)   ○   ○
 古田佑紀 (検察官)   ○   ○
 那須弘平 (弁護士)   ×   ○
 涌井紀夫 (裁判官)   ○   -
 田原睦夫 (弁護士)   ×   -
 近藤崇晴 (裁判官)   ×   -
 宮川光治 (弁護士)   ×   -
 桜井龍子 (行政官)   ○   -
 竹内行夫 (行政官)   ○   -
 金築誠志 (裁判官)   ○   -
 ○は合憲、×は違憲。-は06年判決後に就任。かっこ内は出身、◎は裁判長
毎日新聞 2009年10月1日
========================================================================
1票の格差:判決での最高裁の指摘 原告団は高く評価

 07年参院選の「1票の価値」について、30日の最高裁大法廷判決は「選挙区間で大きな不平等がある」と改めて指摘し、制度見直しの必要性に言及した。弁護士で構成する原告団は「裁判所を動かした」と高く評価した。合憲と判断したものの、司法は「国民の意思を適正に反映する選挙制度が民主政治の基盤だ」と、抜本的な改革を避けてきた立法府に強いメッセージを送った。【銭場裕司、安高晋】
 「国会において速やかに適切な検討が望まれる」。竹崎博允(ひろのぶ)裁判長は主文を告げた後、判決の骨子を読み上げた。最高裁の民事・行政訴訟で、判決理由に触れるのは極めて異例だ。
 参院の定数を巡る大法廷判決は今回が8回目。92年選挙について、96年に「違憲状態」と判断した以外は、いずれも合憲判断している。07年選挙の議員1人当たりの有権者数は、最小の鳥取を「1」とすると最大の神奈川は「4・86」。83年判決以降では、格差がもっとも小さく、原告側に厳しい判決が予想されていた。それだけに、多数意見が制度見直しにまで踏み込んだ意義は大きい。
 原告側は、東京など大都市を抱える9都道府県と、残りの38府県の人口がほぼ同じなのに、議員数は38府県選出で3分の2を占める不自然さを訴えた。
 憲法は、任期6年の参院議員を3年ごとに半数改選すると規定する。都道府県を単位とする選挙区定数は必ず複数になり、最低でも2議席が割り当てられる。単純な地域代表でない側面も持つ参院の独自性を踏まえ、かつては「格差6倍以内なら合憲」ともとれる判断が示されてきた。だが今回の判決は、現行制度の維持と格差縮小が両立しないことを明確に指摘した。
 判決には「4増4減」の是正をした06年以降、具体的な議論が見えない国会へのいらだちもにじんだ。前回の「合憲」から「違憲」に転じた那須弘平裁判官は「真摯(しんし)な努力が見受けられない」と切り捨て、宮川光治裁判官は「奇数配分の選挙区設定や都道府県にとらわれない区割りを試みるなど抜本改革すべきだった」と厳しい目を向けた。
 一方、合憲派の竹内行夫裁判官は「衆院は厳格な投票価値の平等が求められるが、参院は多角的民意反映の考えに基づき、人口比例原理以外の政策的理由を考慮することが、二院制の趣旨に合う」と提言した。
 「良識の府」とされ、政局とは距離を置いてきたが、最近は「数の論理」が目立つ参院。衆院に対する独自性が薄まる中、1票の格差を巡る議論は、参院の在り方や存在意義にも影響を及ぼそうとしている。
毎日新聞 2009年9月30日 21時35分(最終更新 9月30日 22時54分


参院選「1票の格差」訴訟:最高裁判決(要旨)(毎日新聞 2009年10月1日)

判決要旨を読むと、多数意見としたもののなかに、

「07年選挙当時に定数配分が違憲状態にあったと考える余地もないではない。ただ、憲法判断は次回選挙で行うのも一つの選択肢と考える。」゜
「定数配分を違憲とはいえないとしたが、そのことを口実に立法府が改革の作業を怠ることを是認するものではない。」
「国会が、衆院とは異なった参院の在り方にふさわしい選挙制度の仕組みの基本となる理念を速やかに提示することが望まれる。」
「選挙区間の最大格差は、目安と考えるべき2倍をはるかに超え、憲法上合理的範囲内として是認するには、よほど強い明確な理由が存在しなければならない。」
などの厳しい「補足意見」がある。

「反対」意見は、5人の裁判官が明確に「違憲」とした上で、
「国会の審議に見るべき進展や真摯(しんし)な努力が重ねられた形跡も見受けられないから、憲法違反があったと判断せざるを得ない。」
「選挙制度の抜本的改正が必要であると96年判決で指摘されたのに、抜本的な改正がないまま施行された07年選挙は憲法に反する違法な選挙制度の下で施行されたものとして無効であるといわざるを得ない。」
「次々回選挙も抜本的見直しを行うことなく施行されるとすれば、定数配分が違憲とされるにとどまらず、事情判決の法理で選挙無効の請求を棄却することの是非が検討されることになろう。」
「選挙制度を抜本的に改革すべきだったし、その試みは遅くとも94年の公選法改正時ころまでに実現すべきだった。
 私は、定数配分は違憲無効の状態にあったと考える。将来、選挙結果を無効とすることがあり得ることを付言すべきだと考える。」と、
違法状態が改善されないなら、選挙の無効もありうるとの非常に厳しいもの。

現行の民主主義制度の基本である「参政権」は、「諸権利の中の権利」といわれ、
「自分の運命を自分で決める権利」のこと。

政権与党である民主党連立政権は、この判決を真摯に受けとめて、
来年の参議院選挙までに法改正をして違法状態をすみやかに改善してほしい。

この判決が、8月の衆議院総選挙の前に出ていたら、
有権者の投票により「国民審査」にさらされる裁判官の判断も、
もう少し違うものになっていたかもしれない、と思う。

人気ブログランキング(社会・経済)に参加中 
応援クリック人気ブログランキングへしてね
 

本文中の写真をクリックすると拡大します。



【社会】1票の格差4・86倍は合憲 最高裁判決
2009年10月1日 中日新聞

 「1票の格差」が最大4・86倍だった2007年7月参院選の定数配分は違憲だとして、東京都と神奈川県の有権者11人が、都と県の選挙管理委員会に選挙無効を求めた2件の訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允長官)は30日、定数配分は合憲との判断を示し、有権者側の上告を棄却した。一方で判決は「定数を振り替えるだけでは格差の縮小は困難。現行の選挙制度の仕組みの見直しが必要だ」と指摘した。大法廷が多数意見で選挙制度の抜本的な見直しに言及したのは初めて。国会は早急な対応を迫られる。
 判決は15人の裁判官のうち10人が多数意見で、5人は「違憲」との反対意見を述べた。
 07年の参院選は、06年6月の「4増4減」是正後に行われ、格差は04年参院選の5・13倍からわずかに縮小していた。
 多数意見は、4・86倍の選挙当時の格差について、投票価値の平等の観点からは「大きな不平等がある状態だった」と指摘。「国会は投票価値の平等の重要性を踏まえ、すみやかに検討することが望まれる」とした。
 一方で「選挙制度変更には時間がかかる。4増4減から07年の選挙までに改正しなかったことが、国会の裁量権の限界を超えたものとはいえない」として合憲と結論づけた。
 違憲とした近藤崇晴裁判官は、「次々回(13年)参院選までに見直しがなければ、主文で違憲とする判決もあり得る」と述べた。
 参院選の「1票の格差」をめぐる大法廷判決は8度目。1996年の判決は、格差が6・59倍だった92年の選挙で初めて「違憲状態」と判断。その後の定数是正で5倍前後になった選挙は、いずれも合憲としている。

====================================================================
【社説】1票の格差 国会は抜本策を早急に
2009年10月1日 中日新聞

 小手先の見直しでは、もう済まない。参院選での「一票の格差」を最高裁は合憲と判断したものの、同時に現行制度の改革の付言もした。国会は厳粛に受け止め、早急に抜本是正に乗り出せ。
 百年河清を俟(ま)つ…、望んでも実現の見込みがないたとえの言葉が、頭に浮かびそうだ。いっこうに抜本是正を進めぬ国会と、現状の追認に陥っている最高裁の両方についてである。
 二〇〇七年の参院選挙での「一票の格差」をめぐる訴訟で、最高裁大法廷はまたも「合憲」の判断をした。国会が〇六年に「四増四減」の配分是正をしたものの、この選挙では議員一人あたりの有権者の格差は四・八六倍あった。
 合憲の論理はこうだ。〇六年の大法廷判決で「格差縮小の検討継続」という“宿題”が投げかけられていたが、相応の時間が必要だ。この選挙までに見直すのは困難で、改正しなかったことも国会の裁量内だ…。
 一方で、最高裁はこの格差を「大きな不平等が存在する状態」とも指摘している。まるで「憲法の番人」が違憲判断を回避している及び腰の印象だ。
 一九九二年の選挙で生まれた六・五九倍の数字を「違憲状態」とした以外は、最高裁は一貫して「合憲」を繰り返している。定数配分の技術的困難を考慮しても、五倍近い格差は開きすぎというべきで、一票の価値に極端な格差が許されていいはずはない。
 今回の判決でも五人が反対意見を述べた。うち一人は「国会の審議に進展も、真摯(しんし)な努力の形跡も見受けられない」と批判した。要するに国会が怠慢だということだ。「端的に主文で違憲を認めてよい」と述べたほどだ。
 多数意見の中でも、定数配分の是正だけでは格差縮小は困難としたうえで、「現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となる」と踏み込んだ。つまり、もはや選挙区ごとの定数をいじる小手先の改革では、限界だと指摘されたに等しい。
 「一票の平等」は民主主義の根幹である。今、求められているのは、参院の在り方を議論し、ダイナミックな改革をすることだ。都道府県の枠からもっと広いブロック制にしたり、すべての議席を比例代表にすることなども一案に考えられよう。改革は待ったなしといえる。政治が問題を放置するならば、最高裁も躊躇(ちゅうちょ)なく「違憲」判決を突きつけるべきだ。



社説:参院1票の格差 抜本改革、第三者の手で
毎日新聞 2009年10月1日

 「1票の格差」が最大4.86倍だった07年7月の参院選挙区選挙での定数格差について最高裁大法廷は「不平等は憂慮すべき状態だが、見過ごせないほどではない」と合憲の判断を示した。一方で「投票価値に大きな不平等のある状態」として「国会において速やかに適切な検討をすることが望まれる」とも述べた。04年の大法廷判決で改善を求められた参院は4増4減などの是正策を実施したが、選挙制度そのものを見直さなければ抜本改革にならないと改めて迫られたのである。
 参院の定数格差について転機となったのは、6.59倍の格差が問われた96年の最高裁判決だ。それまでは「憲法には選挙区定数を人口比例配分するべき旨の規定がない」との理由で違憲性は否定されていたが、初めて「違憲状態」(判決は合憲)と判断された。それ以降、違憲の目安は6倍と見られるようになり、格差の顕著な選挙区の定数削減などが行われた。
 ところが、04年の最高裁判決は5.06倍の格差を合憲としながら、現行定数配分規定に疑問を呈する裁判官が過半数を占め、「次の選挙で漫然と現状が維持されたままなら違憲判断の余地は十分にある」と是正を求めた。参院は各党議員による参院改革協議会を設置し、05年の報告書で(1)格差の大きな選挙区の再配分案(4増4減から14増14減まで5案)(2)議員1人当たりの人口が最も少ない鳥取県を別の県と合区する案(3)全国を10程度のブロックとする案などが挙げられた。参院のあり方にふさわしい選挙制度を憲法改正も絡めて論議することにも言及された。しかし、公選法改正に盛り込まれたのは、現議席の変動に最も影響が少ない4増4減案で、結局5倍近い格差が残ることになった。
 衆院の場合は小選挙区比例代表並立制が導入されると同時に、内閣府に衆院議員選挙区画定審議会(区割り審議会)が設けられ、10年ごとの大規模な国勢調査に基づき、1票の格差は2倍までを基本とする見直しが行われている。議員以外の有識者から成り、改革案を作成して首相に勧告している。
 参院の格差が大きいのは選挙区が都道府県単位になっているからで、総数を増やさずに抜本改革するには合区やブロック制などの論議も避けられないだろう。自らの議席に直接利害が絡む議員の手でどこまで踏み込んだ改革ができるのか。小手先の是正では憲法の保障する法の下の平等を守ることはできない。選挙制度を根底から見直すには、しがらみのない第三者に委ねるしかないのではないか。5倍近くの格差をこれ以上放置することは許されないだろう。
毎日新聞 2009年10月1日



最後まで読んでくださってありがとう
人気ブログランキングへ人気ブログランキングへクリックを

 記事は毎日アップしています。
明日もまた見に来てね
  


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする