みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

いじめ題材の新作『ヘヴン』 (川上未映子著)読みました。

2009-10-20 20:07:06 | ほん/新聞/ニュース
P-WANサイト製作者の高橋さんが、岐阜に立ち寄られるというので、
午前中に病院にいってから、昼過ぎに、JR岐阜駅で待ち合わせ。 

アクティブGの「ひな野」でランチビュッフェを食べながら、
記事のアップの仕方やアイコンの各種機能などを教えてもらいました。

お互いPC持参で、サイトの相談などもしながら約2時間半の会議終了。

高橋さんと別れてから駐車場に向かったら、岐阜シティタワー43で、
「養老軒のふるーつ大福を販売」という張り紙を見つけました。
養老軒のふるーつ大福販売!(~21日)

デザートを食べたばかりだというのに、駐車場を通り過ぎて、シティタワー43へ。

2階奥のお店を見つけたら、期間限定で明日まで、ということなので、
  
ふるーつ大福4個・丸ごと巨峰の大福1個・抹茶の生どら焼き1個を買いました。


とりあえず、家に帰って、セレクトニュースをアップしてから、
おいしいコーヒーをいれて、ふるーつ大福を味見。
 

しっとり柔らか、甘みを抑えたやさしい味で、おいしいです。


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高橋さんに会うまでの間、少し時間があったので、カルコスに行って、
上野さんの最新刊『男おひとりさま道』を探したのですが、まだ出ていないようです。

そのかわり、というわけではないのですが、
一昨日に読んだ、川上未映子さんの最新刊『ヘヴン』を紹介します。

この前、岐阜高島屋の自由書房で買ってきたのですが読む暇がなくて、
仕事が忙しくなると本を読みたくなる、という性分のため、
どうしても読みたくって、仕事が終わってから、夜更かしして一気に読みました。

   
『ヘヴン』(川上未映子著)
講談社 (2009/9/2)


うーん、なんと言おうか、おもしろかったとひと言で言うには、
あまりにも重い、中学でのいじめがテーマになっています。

関係者が集団からのひどいいじめを受けたことがあるので、
読みすすめるのがつらかったです。

14日の朝日新聞夕刊に書評が載っていたので紹介します。

 善悪の価値観、問い直す 川上未映子さん長編「ヘヴン」(1/2ページ)
2009年10月14日 朝日新聞

川上未映子氏
 川上未映子さんが長編小説『ヘヴン』(講談社)を発表した。いじめの関係を通じて、善悪の価値観を問い直す斬新な作品だ。3作目にして得意としてきた大阪弁の語りをやめ、シンプルな文体で対立する議論を柔らかな物語に昇華した。川上さんは「誰でも心当たりがあるテーマで、誰も見たことがない所へと連れていきたい」と構想したという。
 中学2年の「僕」は斜視でクラスの有力者たちに「ロンパリ」となじられ、日常的に暴力を振るわれている。その「僕」に手紙が舞い込む。貧乏で不潔だとしていじめられている同級生のコジマという女生徒からで、2人は心を通わせる。コジマは、離縁した父を忘れない「しるし」としてわざと汚くしているのだと言う。
 川上さんは「いじめがテーマというより、ある出来事を通じて価値観を検証したかった。犯罪だと客観的に悪とされるが、いじめなら善悪の根拠を問いかけられるのではないか、と。毎日、価値判断を下している倫理に働きかけるテーマを選んだんです」と語る。
 コジマは「僕」に〈わたしたちはただ従ってるだけじゃないんだよ。受け入れてるのよ……むしろ強さがないとできないことなんだよ〉と訴え、〈君の目がすきだよ〉と語りかける。
 「14歳でも、勝ち負けの大きな枠組みの中で動いている。ちょっとした心持ちでルールは作り替えられ、既成の勝負から逸脱できる、という希望をコジマに託した。ただ、独りでかたくなに信じているのがつらいから、『僕』を信者にした。コジマは決して極端ではなく、『苦しみには価値がある』とか『試練に耐える』とか、みんなが信じている物語なんです」
 一方、いじめっ子は、〈なんで、……君たちはこんなことができるんだ〉と問い詰める「僕」に対して、〈権利があるから、人ってなにかするわけじゃないだろ。したいからするんだよ〉とうそぶく。両者にはすさまじい落差がある。
 「二者の対立の中で、小説の構造上、語り手の『僕』はどちらのチームにもコミットできるフラットな立場に置いた。書きたかったのは、強者と弱者のせめぎあいの運動。強いとは何か。弱いとは何か。普段、うのみにしている価値観が何に根ざしているのかを問い、それに社会全体が動かされていることが滑稽(こっけい)だということを示せたら、世界に角度がつく」
 終盤、「僕」は斜視が手術で治せることを知る。コジマは「僕」が斜視でなくなることを裏切りだと感じる。
 「コジマは汚くしていれば弱い者の代弁者になれると考え、いじめの原因を消したら実の父を見捨てた母親と同じになってしまうと思う。14歳は男女に友情が成立する、イノセンスが許される時期。でも、大事なことは人とわかり合えないのかもしれません」(小山内伸)



善悪のはざま 疑う常識 いじめ題材に新作『ヘヴン』 川上未映子さん(作家)
2009年9月19日 東京新聞

 歯、乳房に続いて哲学的関心が向かったのは目。それも、斜視である。
「斜視の人は見ているものの立体感が乏しく感じられ、対面する人も視線をどこに向けたらいいか迷うこともある。<見る/見られる>という、人々が当たり前と思っている関係性を考え直す象徴的な器官として、まずこの斜視に引き寄せられ、そこから、いじめをめぐる善悪を題材にする構想が膨らんでいきました」
 作家・川上未映子さん(33)の三作目となる話題の長編『ヘヴン』(講談社)は、いじめが題材の小説だ。だが仮に、似た題材の小説の主目的が「いじめ=悪」という社会常識を敷衍(ふえん)することにあるなら、本作は相当に趣を異にする。斜視を切り口に、<いじめる側/いじめられる側>の当事者それぞれが依拠する<善/悪>を迫真のリアリティーで描くことで、むしろ「いじめ=悪」の常識の地平を大きく揺さぶるからだ。題材は社会派でも、根幹のテーマは前二作と同様、「人々に根づいている価値判断を一度ばらして、根底から疑ってみる」ことにある。
 本作は斜視が原因でいじめを受けている「僕」と、離別した父親の思い出を大切にするため、あえて不潔な格好をしていじめに遭っているクラスメートの女子、コジマとの友情が軸。コジマはいじめを受けつつも、「これを耐えなきゃたどりつけなかった場所やできごとが待ってる」とそれ自体に価値を見いだす。「弱さに意味があるという発想は、キリスト教的な人間観を念頭に置きましたが、発想自体は日本にも昔からある。コジマのようにこれを頭から信じることができたら、かなりの強度を持つ。それを十代前半で達成する人物を描いてみたかった」
 一方、いじめグループの百瀬は「したいことをやってるだけ」といじめの意味を否定し、「僕」を標的にした理由も、斜視は「関係ない」。さらに「僕」が<いじめられる側>の気持ちをどう考えるのかと尋ねても、人はそれぞれ「決定的に違う世界に生きてる」から、罪悪感もないという。コジマ、百瀬どちらの言い分も正=善であり、偽=悪でもある。そのどちらを信じても「僕」は真の救いを得られそうにないのだ。
 「ドストエフスキーの『罪と罰』が、犯罪という悪が、神という善に回収されていく話だとすれば、もっと善悪のグレーゾーンを扱ってみたかった」と語る通り、読者は「僕」とともに善悪の判断がつかないまま読み進める。そして、最終盤でいじめが解決に向かい、ほっとした気分で読了するにもかかわらず、この点は心に引っ掛かり続ける。まるで、読者自身の中に、コジマと百瀬が居座ってしまったかのように-。
 執筆前を振り返り、「前作『乳と卵』は『芥川賞受賞作』を読んでもらったのだと思う。だから、本作は初めて私自身が読者と向き合うという意味で、プレッシャーがあった」と話す。構想を練り始めた当初、二百枚程度で書くつもりだったが、「このテーマなら、広い意味の善悪の問題を含め、もっと同時多発的にいろいろできるのでは」と一カ月ほど考え抜いた結果、枚数は倍に。「題材に合わない」と、持ち味の大阪弁の語りも今回は封印した。
 「ヘヴン」という題名は作中に登場するコジマが好きな絵の題名だが、ラストシーンで、「僕」が斜視の矯正手術を受けた後、初めて並木道を見たときに出会う「奥行きのある」絶対的な美にも通じる。「こうした一回限りの出会いは、誰にでも起こり得る。一回性の人生を生きる読者が一作きりの本作と出会い、一人きりの『僕』と出会い、一度きりのラストシーンと出会い…と、一回性の入れ子構造を意識した。本作で一回性を追体験して、当然だと思っていた風景や考え方が、少しでも更新されればうれしいです」
 独特の哲学的な視点がどの作品でも骨格をなす。その理由を「性格だと思います。“正しいこと”を言うより、自分なりに検証を重ねて、より“まともなこと”を言うことに魅力を感じます」と語る。ただ、何事も疑ってみるのは楽ではなく、「毎日、寝る前に『人は絶対に死ぬ。それはどういうことだろう』なんて悩んだりしています」。
 二月には詩人としても中原中也賞を受賞。詩と小説に並行して取り組むことはなく、しばらく本作にかかりきりだったが、「書けずにいるときに、友人が電話で『まだ小説やってんの』なんて…執筆中、ずいぶん友だちをなくしました」と笑う。「苦しんだけど、やってよかった。小説家として手応えのある一歩だったと思います」 (三沢典丈)



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