上野さんの『男おひとりさま道』を探しに行った本屋さんで、
『倒壊する巨塔 上』を見つけたので買ってきて読んでいる。
10月4日の書評で、岐阜新聞と毎日新聞の両方に載っていたので、
読みたいと思って切り抜いていた本。
一冊だけかと思ったら、上下巻になっていることに、読みはじめてから気付いた。
『倒壊する巨塔 アルカイダと「9.11」への道』
(ローレンス・ライト著/平賀秀明訳/白水社)
分厚くて文字が小さくて読みでがあるのだけど、読み出すと引き込まれる。
内容は、あの9.11事件の背景と全貌を克明に描き出して秀逸である。
それもそのはず、
2007年の「ピュリツァー賞」受賞作を翻訳したノンフィクション。
「9.11」の根源を探る (2009.10.4 岐阜新聞記事)
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本については、わたしが説明するより、版元の「白水社」の「ちょっと立ち読み」に
詳しくアップされているので、紹介します。
『倒壊する巨塔(下)』もはやく読みたいのですが、朝からずーっと
勉強会のレジメを作っていて、買いに行く暇がありません。
10月27日から11月9日までの二週間は、「読書週間」。
第63回読書世論調査:あすから読書週間
本との付き合い方は(毎日新聞 2009年10月26日)
余計なお世話だけど、秋の夜長、本と親しみましょう(笑)。
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『倒壊する巨塔 上』を見つけたので買ってきて読んでいる。
10月4日の書評で、岐阜新聞と毎日新聞の両方に載っていたので、
読みたいと思って切り抜いていた本。
一冊だけかと思ったら、上下巻になっていることに、読みはじめてから気付いた。
『倒壊する巨塔 アルカイダと「9.11」への道』
(ローレンス・ライト著/平賀秀明訳/白水社)
分厚くて文字が小さくて読みでがあるのだけど、読み出すと引き込まれる。
内容は、あの9.11事件の背景と全貌を克明に描き出して秀逸である。
それもそのはず、
2007年の「ピュリツァー賞」受賞作を翻訳したノンフィクション。
「9.11」の根源を探る (2009.10.4 岐阜新聞記事)
今週の本棚:山内昌之・評 『倒壊する巨塔 上・下』=ローレンス・ライト著(白水社・各2520円) 毎日新聞 2009年10月4日 ◇9・11--渦巻いたそれぞれの思惑 9・11同時多発テロは謎の多い事件であった。そのなかで、ウサマ・ビンラディンやザワヒリといったテロ犯罪者だけでなく、その好敵手たちの思惑や心理のひだまでくっきり描き出した本書は、歴史学とルポルタージュの長所を生かした力作である。『ニューヨーカー』誌のスタッフライターの著者は、事件の発端と因果関係に触れるだけでない。ビンラディンを育てたサウジアラビアの情報部長官トゥルキー王子や、ビンラディンらを追い詰める一歩手前までいった米連邦捜査局(FBI)の対テロ部長オニールは、その複雑な屈折感だけでなく、野心的で想像力に富み、情け容赦なく敵対者の一切合切をすべてだいなしにする点で犯人らとも性格的に共通する面が少なくない。 第一夫人と離婚して十五歳の少女と結婚するビンラディンや多数の女性遍歴を重ねるオニールらの恐ろしく人間臭い生活ぶり、テロリストだけでなくFBIやサウジアラビア王室内部でも繰り広げられる嫉妬(しっと)に満ちた権力闘争も興味をそそってやまない。ことにイスラム・テロの専門家オニールの警告を生かせずに引退へ追い込み、そのうえ9・11に世界貿易センタービルで第二の人生を歩み始めたばかりの彼を死に追いやった責任は誰にあるのか。サウジアラビア王室の寵児(ちょうじ)で無口のビンラディンがその体制の腐敗ぶりや異教徒アメリカ軍の導入で王族と決別するあたりの人間模様も読みでがある。 アフガニスタンの洞窟(どうくつ)から超大国アメリカに挑戦したビンラディンの“清廉”な使命感や、「決断の集権化、実行の分権化」というアルカイダの組織運営の特質もよく描かれている。世俗的な科学技術を発達させた巨人ゴリアテのアメリカの力にも臆(おく)する様子のないビンラディンは、“自爆”という手法に少しもたじろがない。むしろ“自爆”戦術こそ多くの人間を殺すテロ作戦の意図に道徳的な逃げ口上を提供したと著者は語る。大量殺戮(さつりく)が目的のアルカイダにとって、“罪もない人たち”という概念自体がありうるはずもなく、人びとを無差別に巻き込むテロに忸怩(じくじ)たる感情もなかった。ザワヒリは生物・化学兵器にひどく執着したのに、ビンラディンはむしろ核兵器使用のほうがましだと考えたようだ。「アルカイダ内のハト派」という表現には不謹慎ながら苦笑を誘われるが、かれらはムスリムの土地で民間人を巻き込んで生物・化学兵器を使うのを逡巡(しゅんじゅん)したという。しかし「タカ派」は、アメリカが二度も日本に核兵器を実際に使用し、イラクでも劣化ウラン弾を使用している以上、ムスリムを守るのに何の遠慮もいらないというのだ。 9・11の下手人たちは大半が上・中流の出身者で自然科学や工学への傾斜が強く、精神疾患の兆候もなかった。かれらは、欧米社会で本当の足場を築けなかった境界線上の人間であり、その「寄る辺なき思い」がかれらを自然にモスクへ通わせ、反ユダヤ主義にも感染させた。その一人モハメド・アタらの宗教的潔癖さと女性への忌避感を発見した著者は、性的葛藤(かっとう)もアタをテロに走らせる“文明の衝突”並の大きな影響を及ぼしたと推測する。9・11の直前、トゥルキー王子は情報部長官を辞めオニールはFBIを退職する。そして、新生アフガニスタンの担い手になるべき北部同盟のマスードはビンラディンの密使によって爆殺された。事実確認を積み重ねていく“水平的報道”と事の本質を深く理解していく“垂直的報道”が見事に融解したピュリツァー賞受賞作である。(平賀秀明・訳) 毎日新聞 2009年10月4日 |
倒壊する巨塔―アルカイダと「9・11」への道(上・下) [著]ローレンス・ライト [掲載]2009年9月6日 朝日新聞 [評者]松本仁一(ジャーナリスト) ■細部まで綿密取材、惨劇への過程描く 「9・11」から8年がたつ。事件はなぜ引き起こされたのか。米国がそれを防げなかったのはなぜか。 アルカイダ指導者のビンラディンやザワヒリ、米連邦捜査局(FBI)捜査官オニールらの動きを、生い立ちや日常生活から洗い直すことで、本書は「9・11」の実相に迫っていく。07年のピュリツァー賞を受賞した調査報道である。 ビンラディンの父親は、イエメンからサウジアラビアへの出稼ぎ労働者だった。建設会社をおこして着々と地歩を固め、王家の信頼を得て同国最大のグループ財閥にのし上がる。ビンラディンはその25人の息子のうちの17番目だった。 アラブの富豪の息子だが、受け身でシャイな長身の若者。その身長を書くのに、著者は多くのデータを調べ、友人や肉親に会って自分より何センチ大きかったかを尋ね、最終的に「183センチとちょっと」に到達する。米情報機関が安易な情報から「195センチ」などとしていたにもかかわらず。 やがてソ連のアフガン侵攻が起きた。彼は潤沢な資金を手に、義勇兵を率いてアフガンに乗り込む。 しかし実戦経験もない夢想家は戦場ではオジャマ虫だった。それを変えたのは、過激なイスラム指導者アイマン・ザワヒリとの出会いだ。 ザワヒリはかつて獄中で手ひどい拷問を受け、その結果、「テロによる民間人の犠牲は仕方がない」と唱えるような人物になっていた。 アフガンで、過激イスラム指導者とサウジの財閥の息子が結びついた。それに、社会から疎外されたアラブの若者たちが加わることで88年、テロ組織アルカイダが生まれた、と本書は語る。 93年の貿易センタービル爆弾事件以来、FBIはイスラム過激派への警戒を強め始めた。その責任者がジョン・オニール特別捜査官である。しかし米中央情報局(CIA)はオニールにアルカイダ情報を渡そうとしない。9・11が起きて初めて、CIAは「すでに米国入りしていた19人」のリストを提出するのである。 事件直後、FBIが実行犯全員の氏名を手早く発表したのに驚いた記憶がある。あまりの手際のよさに「米側の陰謀ではないか」との意見さえ出たほどだ。真相がCIAとFBIとの対立にあったと、本書は関係者の実名入りで明らかにする。 著者は取材に5年をかけたという。ビンラディンの肉親に会い、アルカイダのメンバーと会い、スーダン指導者の息子に会い……。数十回のインタビューを重ねた人物もいる。その結果、ビンラディンの子どもとの接し方や、オニール捜査官の女性関係などのディテールにまで取材が及び、人物像が生き生きと浮かび上がる。スパイ小説を読むような生々しさだ。 誇大妄想的なアルカイダだが、アフガンという「帝国の墓場」に米国を引きこむ、というビンラディンのねらいはその通りになった。その不気味さが印象に残る。 ◇ 平賀秀明訳/Lawrence Wright 47年生まれ。米国の作家、映画脚本家、ニューヨーカー誌スタッフライター。本書で07年ピュリツァー賞。映画「マーシャル・ロー」(98年)では共同脚本を手がけた。 |
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本については、わたしが説明するより、版元の「白水社」の「ちょっと立ち読み」に
詳しくアップされているので、紹介します。
ちょっと立ち読み ピュリツァー賞受賞作品 ──『倒壊する巨塔 アルカイダと「9.11」への道』(1) 一九九六年三月十七日、聖パトリックの祭日。FBI(米連邦捜査局)のニューヨーク支局で対外諜報を担当するダニエル・コールマン捜査官はその日、ヴァージニア州タイソンズ・コーナーにむかって車を走らせていた。数週間前のブリザードが残した灰色に汚れた雪で、歩道はいまだ埋まったままである。グロスター・ビルディングという名前の、これといって特徴のない政府系の建物に入り、エレベーターで五階にあがる。そこがコールマンの新しい職場、CIA(米中央情報局)のいわゆる「アレック支局」だった。CIAは世界各国に支局を展開し、当該地域を担当させていたが、そこは初の〝ヴァーチャル支局〟で、場所は本部から目と鼻の先。組織図上は「対テロ・センター」の下に置かれていた。「テロ資金リンク課」というのが正式名称だったけれど、その主要任務は、最近活動の目立つとあるテロ資金提供者の動向監視にあった。男の名は、ウサマ・ビンラディンといった。コールマンがビンラディンの名前を初めて耳にしたのは一九九三年のことである。「サウジアラビアのさる王子」がイスラム過激派組織を支援しているという話が、外国情報筋からもたらされたのだ。その過激派組織はニューヨークの代表的建造物の爆破を企んでいると。標的の候補リストには国連本部ビル、リンカーン・トンネル、ホーランド・トンネル、そして「フェデラル・プラザ26」―コールマンが当時働いていたFBIニューヨーク支局も入っている連邦合同庁舎ビル―などがふくまれていた。それから三年。FBIはようやくコールマンを出向させて、CIAがこれまで収集した情報を精査し、この人物を捜査対象とすべきかどうか検討することになった。 アレック支局はすでにビンラディンにかんする三十五巻もの資料を保有していた。ただ、その大半はNSA(米国家安全保障局)の電子の耳が拾ってきた電話の通話記録にすぎず、実際にチェックしてみると、重複が多く、これという決定打に乏しかった。それでも、コールマンはビンラディンを捜査対象とすることを決断した。この「イスラム主義者の金庫番」がもし万が一、より危険な存在に化けたときの備えからだった。 FBIの多くの捜査官がそうであるように、ダン・コールマンもやはり、ソ連との冷戦をたたかう要員として訓練された。彼は一九七三年、当初は事務職員としてFBIに入局した。だが、たぶんに学究肌で知的好奇心に富んでいたことから、対敵防諜部門に引っ張られたのはごく自然ななりゆきだった。一九八〇年代、コールマンは国連の周辺に掃いて捨てるほどいる共産圏出身の外交官を相手に、彼らを寝返らせ、アメリカのスパイに仕立てあげる任務に邁進した。たとえば、ある東ドイツの随行員はまさに宝の山だった。しかし、肝心の冷戦が突如として終結したため、コールマンは一九九〇年、中東のテロリズムを担当する特捜班に異動となった。彼にはこの新分野に取り組むだけの基本的知識がほとんどなかったが、事情はFBIも同様だった。なるほどテロはトラブルの元ではあるけれど、真の脅威ではないというのが従来の通念だったから。ベルリンの壁が崩壊し、この晴れわたった空のもと、超大国アメリカに刃向かえる敵がいまも残っているなんて話は、およそ信じ難かった。 そして一九九六年八月がやってきた。ビンラディンがアフガニスタンの洞窟の奥から、アメリカにむけ〝宣戦布告〟をおこなったのである。あえてアメリカとの戦いに踏みきる理由として、ビンラディンが掲げたのは、湾岸戦争終結からすでに五年が経過するのに、アメリカ軍がいまだサウジアラビアに居すわっている現状への怒りだった。「きみたちがわれわれの土地に軍隊を持ちこんでいるあいだ、きみたちにテロ攻撃を加えることは、正当なる権利であり、道徳的な義務でもある」とビンラディンは明言していた。この冗長な文書は、ムスリム(イスラム教徒)のかかえる法的問題にかんする宗教的見解の表明、すなわち「ファトワー」(教義判断)という体裁をとっていたが、その一部は当時の米国防長官、ウィリアム・ペリー個人に向けられていた。「きみに伝えよう、ウィリアム。これらの若者はきみたちが生きることを愛するように、死を愛していると。……これらの若者はきみに説明を求める気はない。彼らは大声で唱えるだろう。われわれのあいだに説明が必要なものは何もなく、ただ殺傷あるのみと」 だがしかし、サウジアラビア出身のこの反体制派人士の名前に当時聞き覚えがあったり、あるいは多少なりと関心を持っている人間は、アメリカ全体どころか、FBIの内部でさえ、コールマンを除いて、ほとんどいないのが現状だった。アレック支局の三十五巻の資料が描きだすのは、救世主的な資質をもった億万長者―という人物像だった。ビンラディンは、サウジ支配層と深い関係を築き、きわめて羽振りがよく、影響力も強い富豪一族の出身だった。ソ連のアフガン占領に抵抗するジハード(聖戦)に参加したことでその名をあげた。そんな人物が何でまたアメリカに〝宣戦布告〟をするのか、その真意はどこにあるのだろう。コールマンは、この文書でさかんに言及される十字軍と初期イスラムをめぐるさまざまな抗争について理解しようと、歴史書をたっぷり読んでみた。実際のところ、この文書の衝撃的な特徴のひとつは、時の経過が千年前で停止しているように思える点だった。現在があり、千年前の過去がある。しかし、その中間には何もないのだ。ビンラディンの世界では、さながら十字軍がいまもまだ続いているようだった。その怒りの激しさも、コールマンには理解しがたい点だった。このような人物に、われわれはどう対処したらいいのだろう、とコールマンは思案した。 まずはビンラディンの「ファトワー」のテキストを、ニューヨーク南部地区の連邦検事たちに見せてみた。どこまで本気か分からず、突飛なところもあるけれど、これは犯罪を構成するようなものだろうかと。法律の専門家たちは、一種独特の言葉遣いに困惑しつつも、とりあえず法的判断を示してくれた。暴力行為をおこなうよう他人をけしかけている点、合衆国政府の転覆を企てている点に鑑み、南北戦争期にまでさかのぼる治安攪乱罪にめずらしく抵触するのではないかと。アフガニスタンのトラボラ地区の洞窟にいる、祖国を追われたサウジアラビア出身の一個人に対して、アメリカ法の適用を考えることは、いささか拡大解釈に思われるかもしれない。だが、コールマンは、根拠に乏しいそうした先例を基礎にして、刑事事件の捜査を開始する。やがてビンラディンは、FBI史上最大の指名手配犯になっていく。ただこの時点では、コールマンは依然として、孤独なひとり旅を強いられていたのだが。 |
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