みどりの一期一会

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婚外子差別―子どもの権利は平等だ/[婚外子相続判決]時代に合わせた改正を

2009-11-10 16:54:21 | ジェンダー/上野千鶴子
今朝の朝日新聞の社説は「婚外子差別―子どもの権利は平等だ」。

9月末に、婚外子相続の民法規定に関して、最高裁の判決が確定して、
いちおう合憲となったけれど、4人の裁判官の一人が「反対」で、
もう一人も、「違憲の疑いが強い」と意見をつけていました。

「婚外子差別の撤廃」「夫婦別姓」「再婚禁止期間の短縮」などを盛り込んだ民法改正要綱が
法政審議会の審議を終え、法務大臣に答申されたのは1996年2月のこと。

民法の一部を改正する法律案要綱(平成八年二月二十六日法制審議会総会決定)

その年の4月には、日弁連も、民法改正案の上程を求めて会長声明を出していたが、
その後、バックラッシュが強くなり、今にいたるまで民法改正は実現していません。

選択的夫婦別姓制導入等民法改正案の今国会上程を求める会長声明(1996-04-26)

この問題については、P-WANのセレクトニュースでアップしましたが、
ブログでも紹介したいと思って記事を集めて下書きに入れてありました。

政権交代が実現し、差別撤廃に前向きな千葉景子さんが法務大臣になったので、
こんどこそ、民法改正が実現するのでは、とわたしも期待しています。

以下に、今朝の朝日新聞と、関連の記事を紹介します。

【社説】婚外子差別―子どもの権利は平等だ 
2009.11.10 朝日新聞

 法的に結婚している男女から生まれた子どもは「婚内子」、そうでない子どもは「婚外子」と呼ばれる。遺言を残さずに親が亡くなり相続するとき、婚外子の相続分は婚内子の半分とする。民法はそのように定める。
 婚内子にせよ、婚外子にせよ、子供が選んだ結果ではない。生まれたときから子どもは一人の人間として尊重され、法の下で平等に扱われねばならないはずだ。にもかかわらず、不合理な規定が長い間、生き残ってきた。
 国連からは何度も撤廃を勧告されてきた。それにもかかわらず、こんな差別が法律に残っていることは法治の先進国としていばれることではない。廃止の議論が続いてきたのも当然だ。
 ところが国民は慎重なようだ。3年前の内閣府の世論調査では、現行維持41%▼差別撤廃25%▼どちらともいえない31%、という結果が出た。
 厚生労働省によると、出生に占める婚外子の割合は、英仏では40%を超え、米国もそれに近い。家族の多様化が進み、事実婚が普通のことになっているといった事情が大きい。
 一方、日本はわずか2%程度。社会の結婚観、家族観の違いが根底にあるから単純な比較はできない。しかし、だからといって法律上の差別をいつまでも残したままでいいのだろうか。
 法務大臣の諮問機関である法制審議会は96年、差別の撤廃を盛り込んだ民法の改正案を答申した。野党時代の民主党も差別撤廃の法案を提出した。世論の動向があったとはいえ、時の政権がこうした動きに応えてこなかった責任は大きい。
 合憲の判断を続けてきた最高裁の姿勢も問われる。最高裁大法廷は95年、次のような判断を示した。法律婚主義のもとで婚内子の立場を尊重するとともに、婚外子にも一定の相続分を認めて保護をはかるものだから、婚外子の相続での扱いは著しく不合理とはいえない。
 10人の裁判官によるこの多数意見に対し、5人の裁判官は「法の下の平等を保障する憲法に反している」として明確に違憲を主張した。
 少数意見の違憲論の方に説得力を感じる。その後も最高裁は、婚外子の相続差別を争う裁判で合憲の判断を変えていないが、違憲とする反対意見もまた絶えない。
 法律で婚外子を差別することは、婚外子に対する偏見を助長する温床にもなってきた。そうした事態を救済し、平等を実現することも司法の大切な役割ではないのか。最高裁は時代の変化に応じて判例を変更することをためらうべきではない。
 鳩山政権の千葉景子法相は、この差別規定の撤廃に前向きな姿勢を示している。早急に実現に向けた努力を始めてほしい。
(2009.11.10 朝日新聞) 



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[婚外子相続判決]時代に合わせた改正を
沖縄タイムス 2009年10月04日 社説

 家族観が多様化し親子関係は一律にくくれなくなった。大きく変化する社会情勢に目をつぶり、机上の法律に拘泥すると、現実から遊離した判断をしてしまうのではないだろうか。子どもには何の罪もない。その場合はなおさらだ。子どもの立場に思いをいたし、ごく常識的にとらえることができれば異なった結論になったのではないだろうか。
 婚姻していない男女の間に生まれた婚外子の遺産相続は、嫡出子の半分と定めた民法の規定が法の下の平等を保障した憲法に違反するかどうかが争われた審判の特別抗告審決定で、最高裁第2小法廷は合憲と判断した。
 申し立てていたのは県内在住の婚外子の兄弟4人。父親が2000年に死亡し、嫡出子側に平等な遺産相続を求めていた。
 最高裁の判断は、合憲は合憲でも、揺れるてんびんの上に載ったような微妙なものである。裁判官は4人で合憲は3人の多数意見だが、反対意見の1人は「婚外子かどうかは子ども自身ではどうにもならないのに、差別することは個人の尊厳と相いれない」と明確に「違憲」と述べた。
 合憲とした1人も「現時点では違憲の疑いが極めて強い」と時代の変化を踏まえながら補足意見を付けた。実質「違憲」と判断したと受け止めてもいい内容だろう。
 合憲の根拠は、1995年の最高裁大法廷決定の判例だ。民法は事実婚主義を排し法律婚主義を採用しており、嫡出子と婚外子との区別が生じてもやむを得ない―との判断を踏襲している。
 ただ、大法廷決定の際も15裁判官のうち5人は「違憲」と反対意見を述べていた。当時すでに意見が割れていたことから分かるように、その後の小法廷でも「違憲」とする反対意見が止まらず僅差(きんさ)でかろうじて合憲となっている。
 法制審議会(法相の諮問機関)が96年に答申した民法改正案では、婚外子の相続を嫡出子と同等とすることを定めている。ただ、改正案は非嫡出子の問題だけでなく、選択的夫婦別姓や離婚後の女性の再婚禁止期間を現行の6カ月から100日に短縮することなどを盛り込んでいたため、当時与党の自民党内には家族の一体感を損なうなどと反対論が根強く、同党からは提案されなかった。
 政権交代で、婚外子差別撤廃などの改正に積極的な千葉景子氏(民主)が法務相に就任した。来年の通常国会に改正案を提出する意向だ。
 日本の法律には家・家父長制度が根強く残るが、少しずつ変わってきているのも事実だ。最高裁は2008年、日本人男性とフィリピン人女性の間にできた子の日本国籍取得に両親の婚姻を要件とした国籍法の規定を違憲とした。
 婚外子と嫡出子を区別しないのは国際的な流れである。国連人権委員会は日本政府に是正するよう勧告している。日本が批准している「児童の権利に関する条約」でも差別が禁じられている。
 今回の決定で違憲の疑いの補足意見を付けた裁判官は民法改正を立法府に強く促した。政府、国会の責任は重い。
(沖縄タイムス 2009年10月04日)

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[選択的夫婦別姓]結論を出す時期がきた
沖縄タイムス 2009年10月30日 社説

 希望すれば夫婦が結婚前のそれぞれの姓を名乗ることができる「選択的夫婦別姓制度」について、千葉景子法相が早ければ来年の通常国会へ民法改正案を提出する意欲を示している。
 民主党は結党以来、同制度導入を柱とする民法改正案を繰り返し国会に提出している。2009年の政策集にも盛り込み、実現を目指す。
 政府の法制審議会が選択的夫婦別姓にゴーサインを出してから十数年。決着の時が近づいている。
 今の民法は夫婦の姓について「夫または妻の氏を称する」と規定する。どちらかを選ベるのだから一見平等に見えるが、実際は一方にそろえなければならず、女性の側がほとんど改姓している。
 女性の社会進出とともに改姓への負担感は強くなり、結婚後も「通称」として旧姓を使用するケースが増えている。夫婦別姓にするため婚姻届を出さない「事実婚」も珍しくなくなった。「仕事上築いてきた人脈を大事にしたい」「これまでの経験がすべて消されてしまうようで」など理由はさまざまだ。
 しかし仮に、そういった不便や支障がなくても、「愛着のある名前を手放すのは寂しい」と感じるのは自然なことだと思う。
 姓はアイデンティティーの一つでもある。その根っこにあるのは、「○○の妻」や「○○の母親」ではなく、「私」として社会との関係を築きたいという流れであり、個に根差した生き方の模索だ。
 1996年、法制審議会が選択的夫婦別姓を答申したものの、「家族のきずなを弱める」など伝統的な価値観から、当時与党の自民党内で意見がまとまらず、たなざらしにされてきた。
 2006年の内閣府の調査では、選択的夫婦別姓について、賛成36・6%、反対35・0%と賛否がほぼ拮抗(きっこう)した。
 この結果をもって、民法改正の世論が熟していないと見るのか。逆に夫婦同姓についての国民的合意が崩れているとみるのか。
 事実婚を選択している福島瑞穂男女共同参画担当相は「強制ではなく選択肢の拡大」と言い、千葉法相は「誰にでも生きやすい制度の実現」と話す。
 家族に必要な一体感は姓を統一することよりも、愛情や思いやりといった信頼関係だ。
 あくまで選択であり、同じ姓を名乗りたい人は、それを選択すればいい。子どもの姓も夫婦が協議して決めればよい。ライフスタイルの選択は人それぞれで、その思いは大切にしなければならない。
 離婚後300日以内に生まれた子は一律に「前夫の子」とする規定もそうだが、女性だけに設けられた再婚禁止期間、婚外子差別など、民法には古い家意識をよりどころとした不平等規定がいくつもある。
 現実と制度の溝は深まるばかりで、それが多くの差別や不都合を生んでいる。
 多様な生き方が選択できる新しい時代へ向けて、社会変化に対応した法律の改正に結論を出す時だ。 
(沖縄タイムス 2009年10月30日)



2裁判官が「違憲」「疑い」 婚外子相続の民法規定
2009/10/03 【共同通信】

 婚外子の遺産相続分を嫡出子の半分とする民法の規定が、法の下の平等を定めた憲法に反するかが争われた審判の特別抗告審決定で、最高裁第2小法廷は3日までに、合憲と判断。しかし、裁判官4人のうち1人が「違憲」と反対意見を述べ、別の1人が「現時点では違憲の疑いが極めて強い」と補足意見を付けた。
 規定をめぐっては、1995年の最高裁大法廷決定が合憲と判断。その後の小法廷でも踏襲されてきたが、違憲の反対意見が相次ぎ、今回も小差の結論となった。千葉景子法相は既に、婚外子差別撤廃を盛り込んだ民法改正の方針を表明している。
 決定は9月30日付。婚外子の兄弟4人=沖縄県在住=の特別抗告が棄却された。
 合憲の結論は古田佑紀裁判長(検察官出身)ら3裁判官の多数意見。反対意見を付けたのは今井功裁判官(裁判官出身)で、多数意見に賛成しつつ、補足意見を付けたのは竹内行夫裁判官(外交官出身)。
 今井裁判官は「婚外子かどうかは子ども自身ではどうにもならないのに、差別することは個人の尊厳と相いれない」と指摘。96年に法制審議会(法相の諮問機関)が平等にするよう答申したのに、法改正が実現しないことを踏まえ「立法を待つことは許されない」と述べた。
 竹内裁判官は、婚外子が増加するなど家族観も変化し、国連の委員会から是正勧告されていることなどから、違憲の疑いとした。



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