みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

貧困率、衝撃の15.7%/6~7人に1人が「貧困」/深刻な子どもの貧困

2009-11-05 18:45:13 | ほん/新聞/ニュース
今日は終日、勉強会当日につかう資料作りに追われていました。

最近は、朝一番で「P-WAN」に10件ほどの最新ニュースをセレクトしてアップしています。

広い範囲をフォローしているので、たくさんのニュースを目にしていて、
お腹一杯ということもあってか、ブログのニュース紹介が相対的に減ったような気がします。

セレクトニュース毎日更新しています。10月287件、9月188件。

このところ、関心を持ってピックアップしているのが「貧困15.7%」のニュース。
昨日は朝日新聞の社説、今日は毎日新聞の「記者の目」と各社が取り上げています。

セレクトニュースのなかから、いくつか紹介します。

【社説】15.7%の衝撃―貧困率が映す日本の危機
2009年11月4日(水) 朝日新聞

日本の相対的貧困率は、07年調査ですでに15.7%だったと長妻昭厚労相が発表した。約6人に1人が「貧困」という事実は何を意味するのだろう。
 日雇い派遣で生計を立てる都内の大卒30代男性の生活を紹介したい。
 宅配便の配達や倉庫の仕分け作業で一日中くたくたになるまで働いて、手取りは6、7千円。結婚して子供も欲しいが、この収入では想像すらできない……。「明日の仕事もわからないのに、将来がわかるはずがない」
 「国民総中流」は遠い昔の話となり、いくらまじめに働いても普通の暮らしさえできない。これが、貧困率15.7%の風景である。
 相対的貧困率とは、国民一人ひとりの所得を並べ、その真ん中の額の半分に満たない人の割合を示す。経済協力開発機構(OECD)の04年の調査では日本の相対的貧困率は14.9%。加盟30カ国中、4番目に高いと指摘されていたが、自民党政権は公表を避け続けてきた。日本が“貧困大国”となった現実に目を背けてきたのだ。

■数値公表の持つ意味
 新政権が貧困率を発表したことには、現実を直視すること以上の大きな意味がある。英国などのように、具体的な数値目標を設定して貧困対策に取り組むことができるからだ。例えば、「5年以内に貧困率の半減を目指す」といった目標である。
 貧困の病根は何か。そして貧困は何をもたらそうとしているのか。
 経済のグローバル化により国際的な企業競争が激化し、先進各国で雇用の不安定化が進んだのは90年代半ばからだった。日本では労働力の非正社員化が進み、当時の自民党政権も政策で後押しした結果、3人に1人が非正規雇用という時代が到来した。
 日本企業は従来、従業員と家族の生活を丸ごと抱え、医療、年金、雇用保険をセットで支えていたため、非正規雇用の増加は、それらを一度に失う人を大量に生んだ。一方、生活保護は病気や高齢で生活手段を失った人の救済を想定していた。働き盛りの失職者らは、どの安全網にも引っかからずこぼれ落ちていった。
 貧困率の上昇は、安易に非正規労働に頼った企業と、時代にそぐわない福祉制度を放置した政府の「共犯関係」がもたらしたものだといえる。
 日本社会は、中流がやせ細り貧困層が膨らむ「ひょうたん形」に変わりつつある。中流層の減少は国家の活力をそぎ、市民社会の足元を掘り崩す。自殺、孤独死、児童虐待、少子化などの問題にも貧困が影を落としている。
 さらに深刻なのは、貧困が若年層を直撃していることだ。次世代への貧困の広がりは、本人の将来を奪うばかりではなく、税や社会保障制度の担い手層を細らせる。子育て適齢期の低収入は、まっとうな教育を受ける権利を子どもから奪い、将来活躍する人材の芽を摘んで、貧困を再生産する。
 これは、国家存立の根を脅かす病である。その意味で貧困対策は決して個人の救済にとどまらない。未来の成長を支える土台作りであり、国民全体のための投資だと考えるべきだ。

■人生前半の社会保障
 貧困率を押し下げるには、社会保障と雇用制度を根本から再設計することが必須である。それには「人生前半の社会保障」という視点が欠かせない。
 能力も意欲もあるのに働き口がない。いくら転職しても非正規雇用から抜け出せない。就労可能年齢で貧困の落とし穴にはまった人たちを再び人生の舞台に上げるには、ただ落下を食い止めるネット型ではなく、再び上昇を可能にするトランポリン型の制度でなければならない。就労支援のみではなく、生活援助のみでもない、両者の連携こそが力となる。
 働ける人への所得保障は福祉依存を助長するという考えも根強いが、仕事を見つけ、生活を軌道に乗せる間に必要な生活費を援助しなければ、貧困への再落下を防ぐことはできない。
 新たな貧困を生まない雇用のあり方を考えることも必要だ。企業が人間を使い捨てにする姿勢を改めなければ、国全体の労働力の劣化や需要の減退を招く。正規、非正規というまるで身分制のような仕組みをなくすためには、同一労働同一賃金やワークシェアリングの考え方を取り入れなければならない。正社員の側も、給与が下がる痛みを引き受ける覚悟がいる。

■新しいつながりを
 経済的な困窮は、人を社会の網の目から排除し孤立させる。家族、友人、地域、会社などから切り離され、生きる意欲すら失っていく。
 戦後の成長期に築かれた日本型共同体がやせ細る今、貧困を生み出さない社会を編み上げるには、人を受け入れ、能力を十全に発揮させる人間関係も必要だ。新たな人のつながりを手探りしていくしかない。その姿はまだおぼろげにしか見えないが、ボランティアやNPO、社会的企業などがひとつの手がかりとなるだろう。
 鳩山由紀夫首相は所信表明で、「人と人が支え合い、役に立ち合う『新しい公共』」を目指すと語った。この美しい言葉を、現実の形にしていく政治力を発揮できるだろうか。
 同時に貧困対策は、自民党などの野党にとっても共通の国家的課題だ。与野党が真剣に斬新な知恵を競い合って欲しい。危機は待ってくれない。
(2009年11月4日朝日新聞)



記者の目:貧困率を公表した鳩山政権=東海林智
毎日新聞 2009年11月5日

 「ヒンキー」というキャラクターがある。ワーキングプア(働く貧困層)や多重債務者、シングルマザー、障害を持つ人など多様な問題に取り組むグループや個人が集まり貧困問題に取り組む運動体「反貧困ネットワーク」(代表・宇都宮健児弁護士)が、貧困問題を訴えるシンボルマークにしているキャラクターの名前だ。「ヒンキー」は、貧困オバケという設定で、見えづらく、一度人に取り付くとなかなか離れない。貧困に関心を持つ人が増え、何とかしようとしない限り成仏できないという。貧困問題のやっかいさをうまく突いている。
 このほど、厚生労働省が15.7%という相対的貧困率を公表した。これまで貧困率は測定されず、いるのかいないのか、そしてどんな大きさなのかも分からない、まさにオバケのような存在だった。今回の数字で、日本の貧困の輪郭が初めて明らかになった。
 貧困をオバケに例えたが、これまで全く姿が見えていなかったわけではない。
 例えば、90年代から00年代前半にかけて、野宿者増加が大きな問題になった。これは、建設不況が深まる中で、大阪・釜ケ崎や東京・山谷など日雇い労働者の街に囲い込まれてきた問題が、それらの街では収まり切らなくなり表面化した。また、07年ごろから、日雇い派遣などで働く若年者や中高年の労働者が、マンガ喫茶やネットカフェでの生活を余儀なくされていることが、「ネットカフェ難民」や「ワーキングプア」という言葉と共に顕在化した。
 08年の年末から09年の年始にかけては、主に製造業派遣の労働者らが一斉に雇い止めに遭い、職も住居も失う形で放り出され、その過酷な状況は「年越し派遣村」という形で可視化された。その他にも、経済的に困難な状況に陥り学校に通うために就学援助を受給する家庭の割合の増加などに見られる「子供の貧困」や、安定した職につけず、二つ三つと仕事を掛け持ちせざるを得ないシングルマザーの問題など、深刻な貧困の実態が次々に浮かんできた。
 しかし、これらの問題に対する政府の対応は、言葉は悪いが場当たり的なものだった。例えば、野宿者問題では「ホームレス自立支援法」を作った。当時の野宿者の厳しい状況下で、支援法を作ったこと自体は批判しないが、「ホームレス問題」と特殊なカテゴリーのように囲い、その背後にある貧困問題に目を向けることはなかった。例に挙げたいずれもが、共通の根として貧困問題を抱えていたが、一つ一つ切り離されて特別な立法や対策、善処という形で解決が模索された。
 なぜ、政府は貧困問題から目を背けてきたのか。昨年秋、雇用問題に熱心だったある自民党の政治家は「困窮している人はいるかもしれないが、日本はまだ頑張れば何とかなる社会ですよ」と述べた。多くの国民もそう思っていたかもしれない。しかし、頑張っても何ともならない状況はここ数年、確実に広がっている。そうした貧困の実態が把握されれば、政治は当然対策を迫られる。貧困をなくすための財政出動も求められるだろう。小泉純一郎政権以降、小さな政府を志向した政権党にとっては、見たくない、表に出したくない数字だったのではないか。
 政権が代わり、貧困率が初めて測定、公表されたのは、国民生活の実態に目を向けるという意味でも象徴的だ。貧困問題に取り組むスタートラインに立ったといえる。しかし、新政権は数字を出したことで責任も負った。貧困対策に本格的に取り組むことだ。
 まずは、貧困率の削減の目標を明確にしなければならない。毎年数値を出して、自らの政策を点検する必要がある。例えば、小泉政権下で規制緩和が進められる中で、社会保障費も年間2200億円の削減が行われた。この間、政府によって貧困率が毎年算出されていたとしたら、政策によって貧困層が拡大する現状が分かったはずだ。貧困が拡大しないように政策をチェックし、その原因を大きな社会構造の問題としてとらえることも可能になる。
 10年ほど前、大阪市で、半身まひの障害を持ちながら社会福祉からも見放され、1年以上、公園などで野宿をしていた若い女性を取材したことがある。彼女は「私は確かにここ(公園)にいるのに、自分の困窮は社会からは全く見えない存在だった」と日々の暮らしを振り返った。そんな切ない言葉はもう聞きたくない。国民の7人に1人が陥っているという貧困状態。その闇に光をあててほしい。(東京社会部)
(毎日新聞 2009年11月5日)


6~7人に1人が「貧困」
(2009年11月3日 読売新聞)
「相対的貧困率」初の発表

 国民の中で、所得(しょとく)の低(ひく)い人がどのくらいの割合(わりあい)でいるかを示(しめ)す「相対的貧困率(そうたいてきひんこんりつ)」が20日、初(はじ)めて厚生労働省(こうせいろうどうしょう)によって発表(はっぴょう)されました。2007年の調査(ちょうさ)では15・7%。国民の6~7人に1人が貧困層(ひんこんそう)に入る結果で、この割合はほかの先進国(せんしんこく)に比(くら)べて大きいことが分(わ)かりました。
 日本では近年(きんねん)、世帯(せたい)ごとの所得の差が大きくなって、貧(まず)しい家庭(かてい)が増(ふ)えているのではないかと指摘(してき)されています。しかし、政府はこれまで、実態(じったい)をしっかり調べていませんでした。
 9月に就任(しゅうにん)した長妻(ながつま)厚労相(こうろうしょう)は、貧困問題(もんだい)への対策(たいさく)を進めるためには、まず「貧困」の実態を数字で知る必要(ひつよう)があると判断(はんだん)し、今回、「相対的貧困率」を政府で調査することを決めたのです。
 相対的貧困率は、先進国を中心につくる国際機関(こくさいきかん)「経済協力開発機構(けいざいきょうりょくかいはつきこう)(OECD)」が定(さだ)めた貧困の目安(めやす)の一つです。
 調査では、国民一人一人の所得(収入(しゅうにゅう))を順番(じゅんばん)に並(なら)べた場合、真(ま)ん中にくる人の金額(きんがく)(中央値(ちゅうおうち))を求めます。そして、所得が中央値の半分に達(たっ)しない人々を「相対的貧困層」とみなします。そうした貧困層が国民の中でどれだけの割合を占(し)めるかを示したものが、「相対的貧困率」となります。
 2007年のデータから計算された日本の相対的貧困率は15・7%で、04年(14・9%)より悪化(あっか)しました。OECDに加盟(かめい)している30か国で比(くら)べても、メキシコ(18・4%)、トルコ(17・5%)、アメリカ(17・1%)に次(つ)いで4番目に悪い数字でした。
 相対的貧困率が高くなっている理由(りゆう)には、働(はたら)くことができない人や、働いても収入が少ない「ワーキングプア」と呼(よ)ばれる人たちが増(ふ)えていることがあります。正社員(せいしゃいん)と比べて収入や待遇(たいぐう)が低い派遣(はけん)社員なども増えています。派遣社員などは不安定(ふあんてい)な立場(たちば)にあるので、景気(けいき)が悪化すると失業(しつぎょう)する恐(おそ)れが高くなります。
 親の収入が少なくなれば、子どもにも影響(えいきょう)します。
 親がリストラにあったり、病気になったりして収入が激減(げきげん)し、高校に通えなくなってしまったり、進学をあきらめたりする問題が起きています。学校に通えたとしても、教材費(きょうざいひ)が払(はら)えない、修学旅行(しゅうがくりょこう)に参加(さんか)できない、といった例(れい)もあります。小中学校では、1日分の栄養(えいよう)を給食でまかなっている子や、体の具合(ぐあい)が悪くてもがまんしている例も報告(ほうこく)されています。
 こうした状況(じょうきょう)を改善(かいぜん)するために、鳩山政権(はとやませいけん)では選挙(せんきょ)で約束(やくそく)したマニフェストに基(もと)づき、生活保護を受けている一人親(ひとりおや)家庭に追加して支払(しはら)われる「母子加算(ぼしかさん)」を復活(ふっかつ)させるほか、来年度からは公立高校の授業料(じゅぎょうりょう)の負担(ふたん)分をなくす、中学卒業まで月額(げつがく)2万6000円(最初(さいしょ)の年度は半額)の「子ども手当(てあて)」を支給(しきゅう)する、などの政策(せいさく)を行う方針(ほうしん)です。ただ、これだけではまだ不十分(ふじゅうぶん)だという指摘(してき)もあります。
 貧困(ひんこん)の実態(じったい)調査(ちょうさ)はまだ始まったばかりですが、社会全体の問題として、急いで取り組んでいく必要があります。
(2009年11月3日 読売新聞)

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大学行きたい、修学旅行行けない…貧困率15%
(2009年10月21日 読売新聞)

 長妻厚生労働相が20日公表した「相対的貧困率」では、国民の15・7%が、国内の平均的な所得水準を大きく下回る“貧困層”であることが明らかになった。
 日本の相対的貧困率は諸外国と比較しても高率となっており、背景には、非正社員の増加などによる格差拡大があるとみられる。生活に困窮する人々から悲鳴が聞こえてくる。
 「何とかして大学に行きたい。でも、家庭の状況を考えると悩んでしまう」
 今月16日、東京・有楽町駅前。あしなが育英会の募金会場で、静岡県の高校3年生吹越勇太さん(18)が打ち明けた。旅館を経営していた父を中学2年の時になくし、病気をおして働いていた母も高校2年の時以来、入院生活が続いている。現在は奨学金を借り、下宿生活をしながら高校生活を送っているが、母方の実家の援助と奨学金がないと、生活すら厳しい状況だ。
 将来の夢は高校教師という吹越さん。「私みたいな状況でも、希望を失わずに進学できるような社会にしてほしい」と訴える。
 文部科学省が概算要求に盛り込んだ高校授業料の実質無償化。来年4月からの実施を目指しているが、高校教師からは「不十分」といった声も聞かれる。
 長野県南部の全日制高校。国語科を担当する教師は、昨年担当した一人の女子生徒を覚えていた。
 女子生徒は、再婚した母親とうまくいかず、祖父母と生活していた。母からは生活費の援助もなく、頼りは祖父母の年金だけ。低所得世帯を対象に授業料を減免する措置は受けていたが、修学旅行の費用約10万円が払えず、参加できなかった。この女子生徒は、今年3月末に高校を辞めてしまったという。
 教師はこう指摘する。「高校生は授業料以外に、教材費や修学旅行費、PTA会費など数十万円がかかる。ここを支払えない生徒が多いのが実情。低所得世帯のほとんどは、すでに授業料の減免措置を受けており、授業料が無償化されても恩恵を受けられない生徒は多いのではないか」

「生活苦」相談3倍
 反貧困ネットワークの湯浅誠事務局長によると、日本の貧困率の高さは、非正規雇用の増加のほか、高齢者や単身世帯の多さも原因になっている。昨年秋からの景気悪化もあって、生活苦の相談は昨年同時期に比べ、約3倍に上っており、一般の家庭にも生活苦が広がっているという。
 湯浅氏は「国が貧困率の削減目標をたて、雇用、住宅、教育などの面で総合的に支援していかなければ、問題は解決しない。所得税や社会保険料など税制全体を見直すことで貧困層の生活を底上げし、中間層を増やしていくことが必要だ」と話している。
 母子家庭の支援に取り組むNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」にも、仕事を失って精神的に追いつめられた母親からの相談が殺到している。理事の赤石千衣子さんは「貧困に陥っている母子家庭の割合は15%どころではない」と語る。
 大阪市では今年8月、生活保護受給世帯が初めて10万世帯を超えた。この1年で1万世帯以上の増加で、生活保護申請件数も今年4月以降、毎月3000件以上に上っている。同市の生活保護担当者は「生活保護の申請はまったく減りそうにない。特に若い人の申請が目立っており、雇用状況もまったく改善されておらず、現状のままだと貧困率はさらに上昇するのでは」と話した。
(2009年10月21日 読売新聞)


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