みどりの一期一会

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「大阪都」否決 議論の重さ忘れるな/橋下政治が否定された/「橋下後」へ具体策を/

2015-05-18 21:06:21 | ほん/新聞/ニュース
昨日は、大阪市で実施された住民投票の結果が出るのを、
ドキドキしながら待っていました。



住民投票の結果は「反対多数」。
有権者は、「大阪市」を残すことを選択し、
「大阪都」を選ばなかった。
僅差とはいえ、懸命な選択。
まずは、ほっとしました。

住民投票の結果は、大阪都が否定されたというより。
橋下徹大阪市長のやり方が否定されたということだと思います。

以下、けさ届いた新聞4紙の社説です。

  社説:「大阪都」否決 議論の重さ忘れるな 
2015年5月18日 中日新聞

 民意は、議論を尽くさぬままの制度改革を認めなかった、ということだろう。大阪市の将来の姿を決める住民投票は、市を廃止して五つの特別区に再編する「大阪都構想」を反対多数で退けた。

 橋下徹大阪市長率いる大阪維新の会が掲げた大阪都構想は、市と大阪府が競い合って大規模開発や病院運営などを手掛ける二重行政の解消を狙ったものだった。維新の会は、広域行政を府に一元化することで大きな財政効果が期待できる、と主張してきた。

 府市両議会で野党の自民、民主、公明、共産は都構想反対で足並みをそろえ、「市を廃止しなくても二重行政は解消できる」「財政効果は小さく、サービスの水準も低下する」と主張してきた。

 さて、どちらの主張に理があるのか。市民は難しい選択を迫られたわけである。

 道府県内にありながら道府県並みの権限を持つ政令指定都市をめぐっては、古くから二重行政の問題が指摘されてきた。大阪以外にも、二重行政解消を掲げた構想が各地で浮上してきた。

 大村秀章愛知県知事と河村たかし名古屋市長は、愛知・名古屋の合体をうたう「中京都構想」を二〇一一年の知事・市長ダブル選で共同公約に掲げた。

 横浜市は、逆に、神奈川県から事実上、独立する「特別自治市」構想を唱える。

 新潟では、泉田裕彦知事と篠田昭市長が県・市合併を視野に入れた「新潟州構想」を提唱した。

 その先陣を切って、制度変更の可否を決める住民投票にまで構想を進めたのは、ひとえに橋下氏の豪腕による。

 商都と呼ばれた大阪の地盤沈下は指摘されて久しい。沈滞する大都市に、持続可能な将来像をいかに描くのか。その論点は地方自治の最重要課題であり、改革の具体的道筋を示した橋下氏の問題提起には大きな意味があろう。

 しかし、議会では、異論に耳を傾けぬ市長と野党四党との間で議論が深まることはなく、法定協議会では最終的に大阪維新の会だけで協定書を決定。住民投票実施が決まったのも、政党間の駆け引きの結果でしかない。

 議会を軽視して強引に住民投票に持ち込み、「納税者をナメた役所や議会をつぶす」「既得権益を全部壊す」などとあおって主張を押し通そうとした手法は、あまりにも危うい。

 議論尽くさぬ改革は認めず。それが、示された民意であろう。


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 社説:「大阪都構想」実現せず 橋下政治が否定された
毎日新聞 2015年05月18日 
 橋下徹市長にとって都構想は政治活動の原動力だった。その政策目標を住民に否定された責任は重い。橋下氏は否決を受けた記者会見で12月の任期満了をもって政界を引退する意向を示したが、最高顧問を務める維新の党のあり方も問い直される。

 ◇説得力を欠いた将来像
 東京一極集中が進み、本社を首都圏に移す企業が相次いだ大阪は経済の地盤沈下で閉塞(へいそく)感が強まった。その原因を府・市が連携せずにバラバラの都市戦略で無駄な開発行政を続けたことにあるとして、橋下氏が府知事時代の2010年に提唱したのが都構想だ。

 府が都市計画などの広域行政を担って大阪全体の成長戦略の司令塔となり国際競争力のある都市に再生する。大阪市を解体して府・市の二重行政を解消し、新設する特別区が教育・福祉など身近な行政を担当する。橋下氏は東京都型の仕組みを改革の起爆剤と位置づけた。

 大阪市は労使の癒着が明るみに出て市民の不信が募っており、橋下氏の主張に一定の支持があった。それなのに住民投票で構想が否定された要因は、橋下氏の説得力不足と強引な手法への批判に尽きよう。

 地方分権を重視し、独自の発想で地域再生を目指すのが都構想の原点だったはずだ。だが、どんなまちをつくるのかという大阪の将来像を巡る議論は置き去りにされ、自治体の枠組みを巡る協議が先行した。

 再編効果額があいまいだったのも住民の戸惑いを深めた。府・市の試算では17年間に約2700億円とされたが、大阪市を残しても実現できる市営地下鉄民営化などが含まれ、反対派から「まやかしだ」と批判を浴びた。多額の経費を使い、政令市を解体してまで得られるメリットが市民に理解されたとは言い難い。

 そもそも住民投票に至る手続きに見過ごせない問題がある。橋下氏は労組や議会などを既得権益勢力と決めつけて攻撃する手法で改革をアピールした。だが、議会を軽視する態度が市議会野党との亀裂を深め、都構想の制度設計案は維新のみで独善的にまとめられた。

 さらに不可解だったのは、制度設計案が府・市議会でいったん否決されながら、公明党の方針転換によってほぼ同じ案が承認されたことだ。議会で十分な議論が尽くされないまま住民投票に持ち込んだことが、乱暴すぎるという批判を招いたのは間違いない。

大阪は高齢化が急速に進み、貧困、治安、教育など多くの課題に直面している。都構想が一定の注目を浴びたのも、住民が大阪の将来に対して抱く危機感が強いためだ。府・市議会の与野党は対立を強めたが、結果が出た今、歩み寄って現状を打開する知恵を出し合うべきだ。京都、神戸との広域連携や首都機能の移転など、視野を広げて関西全体の活性化策も多角的に探りたい。

 国政選挙や地方選挙の投票率が低下傾向にある中、投票率は65%を超えた。自分の住む自治体のあり方を考えることに住民の関心が高いことを示した。

 ◇集中是正の議論続けよ
 大都市制度を巡っては、道府県と政令市との二重行政、大規模な政令市でのきめ細かい住民行政の難しさ、政令市の権限拡大に伴う道府県の役割の空洞化など、多くの問題が積み残されている。東京集中の是正とともに地域の実情に応じた都市制度の議論を急がねばなるまい。

 橋下氏は首長の地位にありながら新党を率いて中央政界に進出し、野党第2党の維新の党最高顧問と地域政党・大阪維新の会代表を務める。橋下氏が政界引退を表明した以上、大阪維新の会は党の存在理由を再定義する必要があろう。

 維新の党は安倍政権との対決に基軸を置く江田憲司代表らと、改憲論議に積極的で安倍晋三首相や菅義偉官房長官と近い橋下氏らとの間に温度差がある。菅氏らが橋下氏にエールを送ったのは、安全保障法制や改憲問題での維新の党との連携を念頭に置いたためだろう。しかし橋下氏が政界を去れば、一部野党を巻き込む形で政権運営をより強化し、憲法改正につなげたい首相官邸の戦略にブレーキがかかる可能性がある。

 野党再編の動向にも影響する。維新の党の存在感が低下することで、来夏の参院選に向けた野党間の選挙協力は民主党主導が強まることが予想される。性急な再編論議と一線を画する意見が強まるとみられる。

 橋下氏の主張が少なからぬ国民の共感を呼んだのは、しがらみのない構造改革で既成政党と対決する期待感からだった。だが、石原慎太郎元東京都知事らとの合流などを経て、いわゆる「第三極」勢は迷走を続け存在感は埋没気味だ。

 野党がしっかりしなければ、自民党1強状態での国会は健全に機能しない。腰を据えて安倍内閣との対立軸を構築する努力を野党側に改めて求めたい。

 大阪市民による「橋下政治」の否定である。大阪市を廃止し五つの特別区に分割する「大阪都構想」は、賛否を問う大阪市民による住民投票で反対多数となり否決された。結果には法的拘束力があり、政令市として大阪市は存続する。



  社説:大阪都否決―「橋下後」へ具体策を
2015年5月18日(月)付 朝日新聞

 自治のあり方を問う前代未聞の住民投票で、市民は変革ではなく市の存続を選んだ。

 大阪市を5特別区に分割する協定書への反対が、賛成を上回った。橋下徹市長が提唱した大阪都構想は成就しなかった。

 橋下氏は昨夜、敗北を認め、任期満了で政界を引退する意思を表明した。結果は市を二分する大激戦だった。残る任期で橋下氏は、対立ではなく反対各派との融和に努めるべきだ。

 大阪低迷の最大の原因は府と市の二重行政にあるのだから、役所を一からつくり直し、大阪が抱える問題を根本的に解決しよう。橋下氏のこの問題意識は理解できる。だが、その先にどんな具体的なメリットがあるかが、説得力をもって受け止められなかったのではないか。

 都構想実現後の成長戦略として橋下氏が挙げたのは高速道路や鉄道の整備、大型カジノの誘致だった。一方、反対派は市民の税金が府にとられ、行政サービスが低下すると指摘した。

 反対派の主張の根拠にもあいまいな点はあった。それでも、今の暮らしに影響するのは困るという漠然とした不安感が、期待にまさったように思う。

 「橋下流」の強引なやり方が、投票行動に影響を与えたことも否定できない。

 都構想の骨格となる協定書は、大阪維新の会がほとんど単独でまとめた。府・市議会は昨秋、いったん否決した。しかし維新は水面下で公明党の協力を得て住民投票に持ち込んだ。昨年の衆院選で公明候補が立つ選挙区に、維新が対立候補を擁立しなかったことが背景にある。

 こうした経緯は「裏取引」との批判を招き、正当性への疑問を広げた。

 橋下氏が政治家としてけじめをつける姿勢は理解できる。一方、急速な少子高齢化や全国一多い生活保護受給者、11兆円を超す府と市の借金など、大阪が待ったなしの課題を抱える現状は変わらない。

 むしろ都構想の否決で、処方箋(せん)は白紙に戻ったともいえる。

 これからは反対派が具体策を問われる。自民、民主、公明、共産の各党が説得力ある対案を示していたとはいいがたい。維新を含め、党派を超えて知恵を結集すべきだ。長年の対立のエネルギーを、大阪再生へ向けた熱意に転換してほしい。

 人口減少時代を迎え、基礎自治体の規模はどれくらいがいいか。都道府県との役割分担はどうあるべきか。大阪の論戦で浮かんだ数々の課題は全国の多くの都市に共通する。各地で答えを探る営みが広がればいい。 


 「大阪都」反対 住民投票で破綻した橋下戦略
2015年05月18日 読売新聞

大胆な改革に対する市民の将来不安を払拭できなかった。橋下徹大阪市長の政治生命に直結する結果となった。

 地域政党・大阪維新の会代表の橋下氏が推進してきた「大阪都」構想の賛否を問う住民投票は、反対が僅差で賛成を上回った。投票率は66・83%に上り、市民の関心の高さを示した。

 これに伴い、政令指定都市の大阪市を廃止して5特別区に分割し、広域行政を大阪府に移管する制度案は廃案となり、大阪市が存続することが決まった。

 橋下氏は記者会見で、「都構想を説明し切れなかった私自身の力不足」と敗戦の弁を語った。

 橋下氏らは、「府と市の二重行政の無駄を省き、生み出した金で豊かな大阪を作る」と強調した。行政改革分を含め、財政効果は年155億円に上るとも訴えた。

 都構想に反対する自民、公明両党などは、財政効果は年1億円にすぎないと反論した。「大阪市を分割すると、住民サービスが低下する」とも主張した。

 読売新聞の世論調査では、2011年以降、賛成が多数だったが、先月27日の告示前には賛否が拮抗きっこうし、告示後は反対の方が多くなった。財政効果が不透明な中、身近な行政サービス低下への懸念を感じる人が増えたためだろう。

 橋下氏は、維新だけで制度案を作成し、市議会の十分な議論がないまま住民投票に持ち込んだ。この強引な手法も批判を招いた。

 大阪市は、企業の本社機能の流出が続き、「商都」としての地盤沈下が指摘されて久しい。生活保護受給者の割合も格段に高い。

 今後も、大阪市の活性化に向けた議論は継続する必要がある。

 道府県と政令市の二重行政は、大阪だけの問題ではない。

 昨年の地方自治法改正で、16年度から知事と政令市長の「調整会議」の設置が義務づけられる。人口減時代に道府県と政令市がどう連携するか、議論を深めたい。

 維新の党にとって、都構想の頓挫は大きな打撃である。最高顧問の橋下氏は、12月の市長任期満了後の政界引退を改めて表明した。江田代表も辞任する意向を明らかにした。党全体の影響力の低下は免れまい。

 安倍政権との関係にも変化が生じよう。橋下氏は、安全保障政策や憲法改正で首相と考えが近く、政権との協力を重視してきた。

 維新の党が今後、どんな路線を取るにせよ、「責任野党」として建設的な政策論争を政権に仕掛ける姿勢を忘れるべきではない。 


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