
芸工大の卒展を見に行った。この大学ができてもう20年近くなるのに、卒展を見たのは初めてである。今回はグラフィックとプロダクツの2会場のみであったが、作成した本人が直接声をかけてきて、制作意図を説明してくれるので、久しぶりに20代の若者と話すことできたうれしかった。
卒展の作品はどれも学生生活の集大成というか、力がこもって見る者を楽しませてくれる。グラフィックのなかには、南相馬市小高出身の学生さんの作品があった。福島第一原発の事故で警戒区域に入っている故郷を見つめ、写真集を作っている。いま、人の住んでいない田圃には、見渡す限りのセイタカアワダチソウの群落で占められている。パノラマにしたその田圃のパネルの前に、立ち止まらずにはいられない。

グラフィックのブースの奥の位置に、イラストのジャングルがあった。この展示は通路を利用している。壁も、天井もモノトーンのイラストで埋め尽くされ、見学者はイラストの群れを掻き分けるようにして見る。その展示方法とイラストの力強さに圧倒された。

プロダクツのブーツでは、廃品の再利用の提案が目についた。この写真は、畳屋さんから出る利用しない畳の端の部分を使った照明器具だ。他に、廃棄する車のシートベルトを利用した収納用品、自転車の古チューブを使った椅子など、どれも感心されらるものばかりである。

ヘチマはその繊維をタワシに利用するが、ここでは照明器具のカバーやカーテンに利用している。その自然の繊維の質感と色彩に感動する。どの作品も、身の回りにあってあまり
顧みることのないものにスポットをあて、生活に利用するものだが、ユニークな視点と感性で質を見事に高めている。
こんな勉強をした若い感性が、年々山形や都会に輩出されるのは、社会全体のレベルが向上するであろうことを実感した。