月山8合目駐車場に車を置き、弥陀ヶ原湿原を北東へ下り、東普陀落へ行って来た。湿原には可憐な高山の花に出会い、月山の東に広がる草原を満喫。今にも雨が降りそうな空であったが、標高1400mの自然が眩しかった。
月山頂上へ向かわず東普陀落へ行ったのは理由がある。月山の山懐に抱かれた広々とした山地には、開放的で静かな自然にあまり体力を使わずに触れることができる。その名が示すように、山岳信仰と観音信仰が結びついた現場を確認することもできる。そもそもチベットや敦煌にある石仏は観音菩薩像である。それらは深い山地の絶壁の石に彫られたものである。
この地を普陀落浄土と見立て、男根を象徴する自然石を尊像として信仰の対象にしたのは、観音教と日本古来の土俗信仰の融合と言ってもいいのであろう。
弥陀ヶ原の木道で目を引くのは咲き始めたニッコウキスゲである。低い背の草原にポツリポツリと黄色の大きな花が咲いている。その色の鮮やかさが高山の花であることの証明である。以前、月山の頂上から、肘折へ向かう下山ルートをとったことがある。その斜面に一面に広がるニッコウキスゲの群落は、生涯で見たもっとも大きなものであった。月山の花を代表するものと言ってもいいにではないか。
夕かはず日光黄菅野にともる 沢田 緑生
可憐なハクサンフウロを木道の縁に見つけた。この花も群落を作るのだが、今日は2、3株だけで、貴重な存在である。5弁のピンクが美しいが、ここで咲いているのは色鮮やかだ。この花の付近にサラサドウタンもあった。その花の色も濃くきれいだったが、残念ながら写真に収めることはできなかった。5人のグループでの山歩きはある意味理想的だが、ゆっくり写真をとることができない。
弥陀ヶ原には小さな池塘がたくさんある。そこにはミツガシワが群落する。今日は、花が咲き終わったものが多く、その群落は実へと変わっていた。東普陀落から弥陀ヶ原へ戻ると、中高年の一行が山頂の方からやってきた。聞けば関西方面からのツアーだという。月山、鳥海山、羽黒山などの出羽三山を巡っているとのこと。山頂へは行かないトレッキングだが、十分に山形の自然に触れられる。サクランボ狩りとのセットで人気のコースであるらしい。
東普陀落へ下る尾根筋には、所々で雪が残り雪渓になっている。これほど気温が上がってきても夜の冷気で雪が氷になって歩きづらいので、持参したアイゼンを着用する。これで
斜面もなんなく歩行できる。雪解けに咲くシラネアオイ、サンカヨウが咲いているのに感激する。
キヌガサソウは、群落すると、葉と花が踊りの花笠に見立ててこの名があるらしい。山形の花笠踊りを連想する。この夏は、山形市のメイン通りを、花笠踊りの笠の花が咲きながら通り抜ける。8月6日からの3日間である。
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