常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

塚も動け

2014年07月13日 | 詩吟


塚も動け我が泣く声は秋の風 芭蕉

今年の吟道講座で濱岳優先生の講義に取り上げたられたのは、芭蕉のこの句である。芭蕉は「奥の細道」の旅で、蕉門の俳人、金沢に住む小杉一笑と会う約束をしていた。大津蕉門の俳人尚白が編んだ句集「孤松」(ひとつまつ)には、一笑の名の句が194句の多きを数える。芭蕉を慕うことかぎりなく、何度も芭蕉に手紙を書き、金沢への来遊を待ちわびていた。

みをつくし小鮎身をうつ夕日かな 一笑

一笑の句には、懐かしいふるさとの味をかもしだす句が多くある。芭蕉もそんな門人の句を愛し、金沢で会うことを楽しみにしていた。秋の名月を一緒に楽しむことも、この旅のひとつの目的でもあった。

芭蕉が長い旅の終わり近くに金沢へ着き、一笑へそれを知らせた。ところが、その前年に一笑は、若くして病没していたことを知る。あまりのことにその追善の席で詠んだ句が冒頭のものである。

そのときの芭蕉の心情を語る前書きをつけた人がいた。

折いたってその人のもとを訪ぬれば、
はや故人となりて塚の下にぞ眠る、
その痛憤と慟哭は折からの簫簫と吹き渡る
秋風のひびきこそ我が泣く声なり 霊あらば塚も動けよ

芭蕉からこれほどの絶唱を追善として贈られた一笑はしあわせ者であったと言わねばならない。この前文を、濱先生は韻誦という吟詠の手法で吟じることを教えてくれた。詩吟のさまざまな吟じ方を駆使して、芭蕉の悲しみを吟で表現する、それは難しいがやりがいのあることである。


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