常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

階段と独居老人

2014年07月23日 | 日記


大暑、夏の節気の最後である。文字通り暑い、今日の予想気温は32℃となっている。暑いけれども、夏の体力増強に階段登りを復活させている。10階の階段を10往復するのだが、5往復を過ぎたころから汗が頭皮のあたりからふき出して足元へ飛んでいく。この運動が終わってから、温泉で汗を流すのは最高の気分である。気持ちだけで身体がリフレッシュしたようで、動くのが軽く感じられる。

きのう階段でここの一階に住むsさんを見かけた。sさんは若いころ、車に野菜を積んで団地を巡回し、売り歩いて生計を立てていた。市場で安い野菜を仕入れて、主婦のために求めやすい野菜を売るのが特徴であった。病で娘を失ってからは、夫婦の二人暮らしであった。8年ほど前から奥さんも病に倒れ寝たきりの状態であった。sさんの顔から笑顔が消えたのはこの頃からであった。sさん宅の状態を見たことはないが、男手だけでの介護は大変であったと想像する。



その奥さんも亡くなり、一人暮らしになってから一年が経つ。このマンションで、今年だけで独居老人が二人も亡くなっている。sさんは足代わりに使っていた車を捨て、移動は自転車である。冬の時期は足が弱り、歩くのも不自由な状態であった。そんなsさんが階段の踊り場で、外の景色をじっと眺めている。傍らを通り抜けて、戻ってくるとsさんはさらに上の階の踊り場でやはり外の景色を眺めている。「階段を登っているの?」と声をかけて見た。sさんは一言「運動」と答えた。「ええっ、階段登りは運動に最高だよ」と言うと、sさんの目が輝き、無精ひげの顔に満面の笑顔が広がった。

ここに住んで三十数年、sさんには度々行き会っているが、正直こんな笑顔を見たのは初めてだ。美しい笑顔だと思った。人間は年老いてなおこんな美しい笑顔を持っていることに感動した。この笑顔を見て、きのう一日気持ちのいい日を過ごさせてもらった。

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