百日紅
2016年08月04日 | 花
北海道から連絡船でこの地にやってきて、最初に感じたことは気温であった。夏休みに船で海峡を渡るとき、一気に気温が上がるのがわかる。昼間のむんむんする熱気に、これが本州だということを思い知らされた。人間は暑さにどれくらい耐えられるか、という関心もあった。秋風が立って急に朝夕が涼しくなると、もう夏が終わるのかという、ある種の寂しさのようなものが心中に広がった。百日紅の花を見たもの、山形で見たのが初めてであった。そんな経験のためか、映画「五番町夕霧楼」のお寺に咲く百日紅はとても印象深かった。
百日紅ごくごく水を飲むばかり 石田 波郷
波郷のこの句は、暑い夏とそのシンボルとしての百日紅をうまく詠みこんでいる。熱中症の予防のために飲む水も、傍らに咲く百日紅が心の潤いをもたらせてくれる。朝方聞こえていた蝉しぐれも、昼近くなって鳴き止んでしまった。公園のモミジの葉が色づいているように見える。短い夏は、今年も駆け足で去って行ってしまうのか。