鳥海ブルーラインの終点から、滝の小屋を経由して川原宿へ。日本海を背後に望みながら、大雪路までの山行である。例年であれば、雪がいっぱいの大雪渓だが、小雪の今年は雪渓が少なく、大きくスプーンカットされ、写真のような状態であった。ほとんど氷結されているため一歩間違えられれば、滑って転倒を余儀なくされる。今日の登山の目的は、暑い日常を避けて、鳥海山の雪渓を踏んで涼をとり、付近の高山の花に会うことである。
滝の小屋を過ぎてまもなく目にできるのが、白糸の滝である。小さな渓谷を縫うように落ちてくる一本の滝は、見るからに涼やかだ。青空で気温が上がりそうな天気ではあるが、山に吹く風と滝の景色が、なんとも心地よい。
滝の上なほ風薫る空のあり 宮原 双馨
今日の登山仲間は9名。うち6名が女性である。暑い夏の一日を、高い山で過ごせるのはやはり魅力である。
振り返れば、庄内平野の先に日本海が見える。海上に粟島も見えるが、飛島は位置的に視界には入ってこない。田が秋の実りを約束するように美しい緑が目にやさしい。そして海の色は、ブルーのグラデーションが実に見事である。
滝を横に見ながら、登山道は石畳から、大きな石やらの歩き憎い道になる。我慢しながら高度を稼ぐと河原宿の小屋につく。鳥海山の万年雪と呼ばれれる雪路である。小屋の前を、雪渓が融けた水で川ができている。月光川の源頭であろうか。この雪田が育む高山植物が、鳥海山のもう一つの魅力である。このお花畑には120種を超える花が咲くと言われている。イブキトラノオのピンクの色が鮮やかである。
発したる声の汚るるお花畑 黒坂紫陽子
ハクサンフウロも春さながらにみずみずしく咲き競う。
イワイチョウ。
このお花畑の主役はニッコウキスゲの群落だが、いつもの大群落はすでに姿を消し、咲き忘れたような小さな群落がようやく姿を見せた。ほかにアキノキリンソウ、ミヤマハハコグサ、イワカガミなどの可憐な花も見られた。