常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

坂巻川の桜

2019年04月12日 | 

春の雪もはかなく融けて、桜の花がひときわ瑞々しい。この桜を目にするたびに、ここに桜を植えた生前の佐藤小太郎さんの姿を思い出す。佐藤小太郎さんは平成18年、自らの生涯を振り返る自伝を上梓された。私は、その構成に多少ではあったが、お手伝いをさせていただいた。自伝の文章を読みながら、直に小太郎さんのお話を聞き、文を整えるという作業であった。この本は、本棚に並べてあるが、その一文、一文に小太郎さんの人柄がにじみ出ている。

坂巻川は一級河川であるため、何人もこの敷地に植樹をすることは法律で禁じられていた。小太郎さんは地区の美化を説き、巻紙に毛筆で請願書を認め、建設省支庁へ提出した。この請願には、県議をはじめ多くの人々への根気強い根回しがあった。山形大学医学部ができ、近辺の商店を医学部周辺商店会として組織し、小太郎さんはその会長として、桜の植樹を進めた。昭和62年のことである。いまでは、その樹々は大きく成長し、堤にある道路を覆うばかりになっている。花が咲くと、近隣の人達が、この花を愛でて三々五々集ってくる。

散る桜残る桜も散る桜 良寛

この句は良寛の辞世の句であるが、今は亡き佐藤小太郎さんの心境でもあろう。小太郎さんが遺してくれた桜は、春になるたびに咲いて散り、また新しい春に咲き続ける。


 

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