タンポポは懐かしい花だ。この花を見ると誰しもが、幼少のころを思い出す。この花に、日本種古来の日本タンポポと外来種の西洋タンポポがあることは知っているが、今では優勢な西洋タンポポしか見かけなくなっているが、懐旧の思いは外来種とて同じようにかき立ててくれる。蕪村の「春風馬堤曲」という俳風の詩があるが、堤に咲くタンポポを詠んでいる。
春艸路三叉中に捷径あり我を迎ふ
たんぽぽ花咲けり三ゝ五ゝ五ゝ黄に
三ゝは白し記得す去年此路よりす
憐みとる蒲公茎短して乳をあませり
やぶ入りの風景である。難波の街に奉公していた少女が、田舎に帰り、その情景を思い出している詩だ。乳とはタンポポが出す白い液であるが、そこから慈母を思い出させる。