常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

2019年04月28日 | 万葉集

先日、義母の納骨にお寺を訪れたところ、墓所に敷きつめられた玉砂利の間から無数の菫が花を咲かせていた。おそらく寺で種を蒔いたののだろうが、小さな花の生命力の強さに驚かされた。外来種が優勢に種を増やしているなかで、菫は万葉時代から、日本の風土に生きて続けてきた、伝統の花である。芭蕉も、「野ざらし紀行」の旅で、「山路来て何やらゆかしすみれ草」と詠み、眼前に咲く菫を見て、自ずから口をついて出た句だ。万葉集の山部赤人の歌に、菫を詠んだ歌がある。

春の野にすみれ摘みにと来し我ぞ野をなつかしみ一夜寝にける

奈良朝の宮廷人たちは、春の野にでて若菜やすみれなどを摘み、その夕べには酒を酌み、歌を作って宴を楽しんだ。春というすばらしい季節への賛歌となっている。

周囲の山々は、木々が芽を吹き、新緑が目にやさしい季節となった。アケビ、ナンマイバ、サンショウ、コシアブラなど、春の山菜が萌えるころである。花を愛でる春から、若芽の味覚を賞味する春へ、と移っている。

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